149 簀巻きラバー 6

海浜公園は遊園地と海水浴場が合わさっているような造りになっている。あと、動物園もある。そもそもは別に市には『動物園』として存在してるが、出張所として海浜公園の一角にもあるのだ。
ゲートを潜ってからまず最初に二人が向かったところはジェットコースターだ。一番人気に行くのはセオリー通りだな。なんて思っていたが今の今までスピーカーから溢れた声、つまりユウカ妹と彼くんの会話なし。
「なんか拷問に近くね?」
などとナノカが揶揄するのも無理はない…。寡黙な人ならいざしらずナノカからしてみると並んで歩いてるのに会話無しは拷問のレベルなのだ。ひょっとしたらナノカがそんな事されたらショック死する可能性すらある。
「うちだったらショック死してるよ」
などと言ってるからこれはガチだろう。
「私の妹…寡黙だから…彼氏が寡黙だったらもうマイナス極にマイナス極だわ。これは冷めたデートになりそう…コート着てくればよかったわ。身体が心底冷えそう。こういう時にはキミカ、恋愛上手なアンタならどうするのよ?」
いつから俺が恋愛上手になったんだよ。俺だって女の子の身体になってからそういう方向へと傾いただけでそれまでは本当にクラスの中じゃオタク達の部類で3次元にはなんら希望も夢も見いだせてなかったんだぞ?
「まぁ、エロゲの中ではプレーヤー…主役が寡黙でも、ヒロインがペラペラ話してくれてるからね。これが現実だと思うよ」
「え、なにそれ、彼くんはエロゲばっかりやってるの?」
「スイカブックスとかにいそうじゃん?同人誌とか買い漁ってそうじゃん?」
「そういえばそうね…」
認められちゃったよ、彼くん、オタク認定食らっちゃったよ。
「うちらもジェットコースター行ってみない?監視役なら一緒に乗ったほうがいいじゃん?」などと変な定義を振りまいているナノカ。単純に自分が乗りたいだけという説もある。
しぶしぶナノカの欲求を満たしてあげようと俺達3人は気付かれないようにと少し離れて列へと並ぶ。同じ便には乗れそうである。
と、その時だ。
ナノカが叫び声をあげたのだ。
思わず俺とユウカが慌てて口を塞ぐ事態となるほどに。
「どうしたのよ?!」
「見て!見てよアレ!!」
ん?
おぉぉおぉぉぉぉッ!!!
俺は驚きと震えを隠しきれなかった。
どれほど今日、男の身体でここに来たくなったことか。そう、ジェットコースター、『縦に』2人乗りで、座席が一つなのである。今までこんなタイプのものは無かった…時代は変わったというのか?!
どおりで周囲にカップルが多いと思ったら…クソッ!!
「彼くん、めっちゃ慌ててるわね。知らなかったのかしら?」
「顔真っ赤じゃん」
一方でユウカ妹の方はぽかんとしてる。
しかし今更、列を出てしまうのもアレだ。雰囲気ぶち壊しの減点30点だ。男なら一度並んだんだから恥ずかしいだとかそういうのは無しにして恋人と一緒にこれに搭乗するべきである。
「ちょっ、キミカっち、ユウカっち、うちらが3人だって事を今更気付いたよァヘァ…どうしよう?3人で1席?」
「それはダメって書いてあるじゃない?…えっと、じゃあ、あたしが抜けるわ」
「わーい!じゃ、キミカっちが前?でも、キミカっちが前だとおっぱいの感触とか楽しめないなぁ…後ろがいいよ!後ろ!ほら、安定してるし!」
今おっぱいの感触がどうとか言ってなかったかおい。
「わかったよかわった、あたしが後ろでいいよ」
「わーい!」
ユウカは外のベンチで待つ。そして俺とナノカはジェットコースターへ。ちょっとDQNっぽい一団が同席してるのは気になるところではありますけれども…。
運がいいのか悪いのか知らないが、ユウカ妹と彼くんは前の席で、俺とナノカがその後ろになるという快挙を成し遂げた。そして後ろをおじいさんと女の子、その後ろがDQN一団。まぁよく男同士でこれに乗れるななんて思いつつも、乗車。
ナノカは思いっきり俺のほうへと体重を掛けてくる。
まるでおっぱいの感触を楽しもうとしてるかのように…ただ、この席が後ろに斜めに傾いてて、太ももにも邪魔され、そうとう背中を俺のほうへと倒さない限りはおっぱいには到達しないのだ。
「うへぁ…失敗したよォ…キミカっちのおっぱいに到達しないィ」
おっぱいを諦めたナノカは俺のスカートを捲り上げ、ニーソとパンツの間の太ももを手で触りまくる。っておいおいおい。
「やめてよナノカ!パンツが見えてるじゃんかよ!」
「うへへェ…」
「よーし!おしおきだ!」
などと言いながらペチャパイナノカのおっぱいを後ろから鷲掴み。ヌゥゥ…ブラの感触しかしない。うなじをペロペロ、耳たぶをはむはむ…。
「んはぁ…あッ…ちょっ、マジで…あーん」
などと喘ぎ声がユウカ妹と彼くんのほうへと聞こえてくるぞおい、やめとこう。変に二人の間を欲望で刺激したら…。
チラっと前を見てみる。
うわぁ…。
おもいっきし彼くんはユウカ妹にくっつかないようにしてるな。しかしそりゃ無理ってもんだよ。シートベルト?の固定がついたらぴったし身体をくっつける事になるんだからさ。ほら、
「うわ…みっちゃくゥ!」
ナノカが嬉しい悲鳴をあげる。
そう、シートベルト?というかあの身体を座席に固定させるアームのようなものが降りたのだ。もう前の人の身体を抱きしめるっていう表現が正しい。俺とナノカはともかくとして、前の座席に座っている彼くんの前にはぴったりと身体をくっつけるユウカ妹の姿が。
係員の人が全員がちゃんと座席について『正しい姿勢』でいるか確認に来た。そう、『正しい姿勢』というのは冗談抜きにして前に座る人のお腹の辺りに手を回して抱きしめるように乗るのだ。
「え、これ、あれ?え?」
とかいう小さな声が前の座席から聞こえてくる。
ユウカ妹の慌てる声だ。
「うわ、ご、ごめん、手を延ばすよ」
係員に姿勢を指摘されて彼くんはユウカ妹の前の方、抱きしめるように手を延ばす。気になるぞ、気になる。俺はちょっと背を伸ばして前の席をみようとするも、ナノカがいるから何が起きてるのか見えない。
しかし、ナノカはナノカで興奮気味だ。
「(小声で)…キミカっち、なんか妹さんが手を取ってリードしてる!」
「(小声で)マジで?!」
急に静まり返る俺とナノカ。
全神経を前の座席に座るユウカ妹と彼くんの会話に傾ける。
うわぁ…。
…きっとここにユウカが居たら鬼の形相で彼くんを殺してたと思う、っていうぐらいにヤバイ声が聞こえてくるのだ…。
「もうちょっと、うえのほう」
「え?!」
「おっぱいにうでまわして」
「えええぇぇ?!」
「んはぁ…」
やばい。
立ってきた。
俺、女の子の身体だけど、立ってきた。
俺はナノカの服の中に手をツッコんでブラの中に手をツッコんでダイレクトにぺちゃぱいをモミモミしながら首筋にちゅちゅちゅちゅとキスをする。
「はぁはぁぁ…やばいィ。こっちも興奮してくるよォ」
「はぁはぁ、あぁーナノカもっとお尻をくっつけて」
俺とナノカも前の座席に負けずとエッチな事をしようとしてる…。
「あぁぁぁぁぁ!!もう我慢出来ないよ!!」
ナノカ叫んでアームを上にあげる。
そして振り向いて俺に向かって鼻息を荒くしてキス。俺のブラウスをひっぺがして胸の谷間に顔を埋めようとした時、
(ピピーッ!!)
凄まじい笛の音と共に係員が駆けつけてきた。
「そこ、ちゃんと席に座ってください!!」
「ご、ごめんなさい…。あ、キミカっち、席かわって…」
係員の睨みが効く中で俺とナノカは位置を代わった…。