147 オカ研へのいざない 1

「オカケン?!」
俺は昨日は深夜…と言っても早朝まで面白くてたまらなかったjavaプログラミング言語で遊んでいたので眠気まなこで白目を剥きながらそう言った。
話しかけてきたのは俺の眼の前にいる眼帯美少女『キリカ』
「そう、オカケン…岡本太郎研究会」
「はぁぁぁぁぁぁ〜〜ぃいいぃ?!」
「それは嘘」
「岡田健治の事かと思った」
「それは部長の名前」
「そうなのか…で、実際のところはなんなんだよ?」
「オカルト研究会、通称『オカケン』」
「まぁそんなことだろうと思ったよ。オカ研の部長がしつこくキリカをお誘いしようとしてきたからね、きっとオカルトっぽい印象が漂ってきたんだと思う」
「うん…『君のクラスでは君は「いないもの」にされてて惨劇が始まらないようにしていないかい?』と聞かれた…それからしつこくオカ研に誘ってくる」
眼帯美少女で中二病な発言してて霊がどうとかアカーシャクロニクルがどうとか語りだしてるキリカがいないものに扱われるのは無理があるような…ウンコと筆箱を机の上に置いてどちらを『存在しないもの』にするかでウンコを選ぶぐらいに難易度が高いぞそれは。
「キリカが可愛いから誘ってるだけじゃないの」
「ウンコで悪かったね」
「うわぁぁぁああぁぁぁぁぁぁ!!あたしの心を読むなァァァァ!!」
ちなみに目の前にいるキリカもドロイドバスターでアカーシャクロニクルの能力を扱える。人の思考を読むとかは普通に出来るのだ。そして、俺の彼女でもある…ったく、厄介な彼女だなぁ…。
「厄介で悪かったね…」
「すいませんでした」
「その部長、キミカもオカ研へ誘って欲しいと言ってきてる」
「やっぱ美少女目当てじゃん、そのうちコーネリアやマコトやメイリンも誘い始めるよ。下心丸出し。どうせ高校三年生の思い出に〜とか言って誘ってきてるんだよ。ハーレムエンドって奴。生徒会の一存じゃないんだから…」
「コーネリアも誘って欲しい…と言っていた。マコトとメイリンは誘いたくないとも」
「なにそれ?」
「この3人に共通する点、わかる?」
「ん〜…。ん?」
ドロイドバスターは共通するとして…その中でも同じ能力系統を所持してるってこと…か?つまり…アカーシャクロニクルにアクセスしているかどうか?
「…そう、彼はドロイドバスターのアカーシャクロニクルの能力を持っているかどうか、人間ながら、それが判別出来ている…」
などと言いながらも眼帯の前に手をおいてポーズをキメる俺の彼女。
「本当に人間なの?」
「アカーシャクロニクルに問い合わせたけれど、彼は人間…だけれど、いわゆる『霊感』を持っていると思われる」
「霊感がアカーシャクロニクルと関係してるのか…そういえばコーネリアがライブラリの能力を覚醒した時も霊感が関係してたかな」
「…そう、霊はそもそもアカーシャクロニクルが宇宙空間の物質と接続した名残のようなもの。物質が形をなくし接続が切れても暫くの間残っている状態」
「パソコンを売った時にLANケーブルを一緒に処分するのを忘れるような感じかな。でも最近はRedtoothだとかBluetoothだとかWiFi通信が屋内では一般的だから霊でも最近の奴等は接続切れてもなんとかなってるんじゃないのかな。ただ屋内でも地下だとかは電波が届かなかったりンフトバンクみたいに通信強度では通信可能域なのに誤魔化してて実は電波届かないとかそういう詐欺みたいなのをしている可能性もあるから霊も地下とかには入れないしビルの影の部分には近づかないとか田舎でも辺鄙な森の中みたいなところには入れないし、契約しているアカーシャクロニクルによっては詐欺られるからアウとかンテテ・アカーシャクロニクルに契約したりして端末のSIMロック解除したりして…」
ジッと俺を見つめるキリカ。
「な、なんだよォ…」
俺は白目でそう答える。
「ツッコミ待ちのキミカをずっと放置してたらどこまでネタを続けられるか、試してみようかと思った」
「やめろォォォォォ!!!!ツッコんでよォォォォォォ!!!ネタ続かないよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
「で…キミカは入りたい?私が入ると言ったら入る?」
「…霊感っていうのは確かにあるとは思うけれど、それがアカーシャクロニクルと繋がっているのかぁ。それは興味深い…興味深いけれど、あたしは帰宅部の試合が控えてるし全国大会も控えてるから余計な事に時間をさける状況じゃないんだよねぇ、残念だぁ、実に残念だぁ…」
「実はキミカと入りたい目的はもうひとつある。そっちが主」
「へぇ〜…何n…」
ん?
鈍感男でツンボな主人公男なら「え?なんだって?」などと返すところだろうが、俺はそういうラノベの主人公とは違ってカンが鋭く、女が考えている事は『獣っぽいクソみたいな事』以外なら理解可能なので、一瞬でキリカが考えている事がわかってしまった。そして俺は顔が熱くなるのを感じた。
そう…コイツ…俺を求めてやがる…!!
俺は犬が舌を垂らしながらエサを目の前にしてはぁはぁと『待て』の状態をしているかのようなイメージで目の前のキリカを見ていた。キリカは待てと言われた側の犬である…そう、据え膳食わぬは男の恥という状況…キリカは俺と二人きりでオカ研とやらの部室でセックスをしたいと申しておるのだ。
「えっと…それは、その…あたしは水泳部でもあるから、オカ研に行く前にはシャワーでも浴びて大事なところは綺麗にしたほうがいいの…かな?かな?そして歯磨きもして口臭とかも気をつけて、避妊具とかも準備しちゃってもいいのかな?…かな?かな?かな?」などと鼻息を荒くしながら俺は言った。
目の前のキリカ(犬)も鼻息を荒くしながら、
「そそそそ、そそ、そ、そこまでは私も言ってない!!た、ただ、恋人と二人きりになれる空間が…その、学校の中でもあればいいかな…とか…」
「さっきから何ふたりとも鼻息荒くして顔近づけて見つめ合ってるのよ?」
突然ユウカが話しかけてきた。
というか、既に俺達の話を先ほどから聞いていたようなのだ。
「ン…だよォ!!!ノンケには用はないんだよォ!!」
「ちょっ、ノンケってなんなのよ!!ホモ用語使わないでよ!!」
「今重要な話してるんだからあっち行ってよ!シッ!シッ!」
犬でも追っ払うかのように俺は手を振る。
「そうはいかないわよ!あんた前もそんな事いってナノカとかキリカとかマコトとかコーネリアとかメイリンとかとキスしてたでしょうが!教室の中で!!いくら女同士だからって教室の中で破廉恥な行為に及ぶなんてクラス委員長としてほうっておくことはできません!」
「いいじゃんか!外人ではキスなんて挨拶なんだよ!あ・い・さ・つ!」
「挨拶で唇と唇合わせるキスするなんて見たことないわよ!…まぁいいわ、それならコーネリアとなら許可します。アメリカの礼儀だものね」
「えぇぇぇ?!そう来るかァ?!」
などと俺とユウカが言い合っていると、
「キミカ、これでわかったと思う…安全にキスできる場所がココにはない…」
「(ゴクリ…)」
女の尻を追いかけるのはしょうにはあわないが…キリカが誘うのだからよしとしよう…彼女(ガールフレンド)の誘いだからな。
俺はオカ研に入ることにした。
え?オカ研にも他に部員はいるだろう?って?
いないんだなぁ…それが。
だから『研究会』なんだよね。
人数が足りなくて部活として成り立たない、たった一人で作られてる部活なんだから。