4 新生活応援フェア(リメイク) 6

ったく、警察は何してんだよォ?
俺は空高くに飛び上がったまま、強盗団の姿を探していた。
見つけた。
警察を…。
パトカーが渋滞にハマってる。
違法駐車している車が沢山いて渋滞が発生しているのだ。パトは進めないからとドロイドを展開してその蜘蛛型のドロイドが違法駐車の車の上をバリバリと足で穴を開けながら進んでいるのだ。…っていうか、犯人はそこまで計算してやってる雰囲気もある。警察が来る反対の方向へと強引に運転をして(周囲の車にぶつけながら)いる車がいるので、それが犯人達の乗っている車だと悟った。
一瞬、頭のなかで宝石店を襲った泥棒どもと、警察と、一体どっちが市に対して損害を出しているのか…なんて過ぎった。けれども今はそんな事を考えている場合じゃない。犯人の車を追わなければ。
空を飛びながら犯人が乗っているであろうワゴンを追跡する。
さぁて、どの武器で攻撃しようかなァ?
ただの車に対しては戦車の装甲をも凹ませる『ショックカノン』って呼ばれる武器は使えないなぁ、使ってもいいけど、周囲の無関係な車が巻き込まれたりしそうだ。で、俺はCall of なんとかっていう海外のFPSで使われているのと形状が似ているチェインガンっぽい武器を取り出した。
地対空攻撃機に搭載されているミニガンみたいなものか。電脳空間から展開された武器リストの画像ではそうなってるけれども、大きさは結構小さい。いや、小さいと言ってもこの美少女の身長140センチあるかないかという小柄な身体からすると結構な大きさだけれども。
それを構えて乱暴に道路を走り抜ける車に狙いを定める。タイヤでも狙おうと思ったけれど他の車もいるから仕方ない、運転席を狙おう。
トリガーを引く。
軽快なあの銃声がバリバリバリバリと鳴り響き、FPSアサルトライフルよろしく弾が発射される、が、めっちゃ速い。発射と発射の間隔が短いのだ。モノローグでバリバリバリバリなんて語っちゃったけれど、実はバリの『リ』のところが聞こえないぐらいだ。『バババババババ』とか極端な話、『バーー』でもいい。そんな風に弾が凄まじい間隔で発射、着弾する。
見事に運転席に着弾し上から粉塵が吹き上がった。そしてガラス片が周囲に撒き散らされ、若干の血も周囲に飛び散った。
よし、他の連中が車からぞろぞろ出てくる前に、俺が近づいて…。
急降下する俺。
と、その時だ。
俺の正面にヘリが現れたのだ。
とっさに俺は強盗団の仲間のヘリでも来たのかと思って狙いを定めたのだが、そこには口山(ぐちやま)放送って書いてあってマスコミのヘリだとわかる。強盗団を空から撮影でもしてたんだろう、そこで俺みたいな空飛ぶ人間に出くわしたのだからマスコミのほうも驚いて、ベレー帽みたいなのを被ったレポーターの女が口をぽかんとあけ、マイクを持ったまま俺を見ているのがわかる。
カメラを持った奴も慌てて犯人から俺の方へとカメラを向け直す。
クッソ…邪魔だ。
俺はヘリに向かって手を向ける。
物体を浮かせるのと同じ感じでヘリを空から地面へ着陸させるようなイメージをし、例の『力』を使って下へと移動させた。
レポーターもカメラマンも驚いた顔をして降下するヘリの中から俺の姿を一生懸命カメラに収めようとしていた。
車は運転席が大破してるから走行不能となってそのまま信号機(まちのなかまたち)の柱へと突入して、もう運転席以外も色々大破していた。
強盗団の連中はそこから次から次へと這い出してくる。
空から近づきながら、我先にと逃げ出そうとした強盗団の男の足の辺りをめがけてミニガンのような武器で攻撃…すると、街道のタイルが銃弾による衝撃で粉砕され、見事に男の足も吹き飛ばした。
転がる男、そしてその手からは銃が投げ出される。男はそれを手にとろうとするが、周囲の通行人がその手から銃を奪う。
その間にも俺は着陸。
車から這い出る他の強盗団の奴等に銃を向ける。
「動くな!!」
銃を向けて叫んだんだ。これなら言葉が通じない国の人でも何を俺がしたいのかわかるはずだ。案の定、何やら中国語のような言葉で捨て台詞を吐きながら、強盗団の1人は持っていた銃を投げ捨てる。
他の奴等は…?
強盗団の乗ってきていたワゴン車を例の力を使って持ち上げる。
宙に浮かぶ車。
通行人も泥棒どももその奇妙な俺の力に驚いている。
そのまま宙に浮かんだ車を力をもってしてクルッと回転させ、中にまだ残っていた強盗団の仲間2名を地面に放り投げ、そして放り投げられた2名、そして先ほど俺が足をふっ飛ばした1名を例の力をもって引っ張り寄せて道路の真ん中、信号機の下へ移動させる。
「さてさて、一件落着っと」
例の力でミニガンのような武器を宙に浮かせ、強盗団の連中に向けたまま、手をパンパンと叩いて埃を落とす俺。
ん?
なんか、すっごい包囲されてる感がするんだけど…。
うわぁ…。
「またかよぉ…」
と俺は枯れた声を出してしまった。
さっき違法駐車の車に穴を開けながら進んでいた警察のドロイドどもが俺と強盗団を取り囲もうとしてるではないか。そして俺に向かって発砲してきやがる。
俺は大破した連中の車を『力』で起こして盾として俺の前に浮かせる。それだけでは盾にならないので周囲にある、おそらくは違法駐車をしてるであろう車やらバイクを引っ張り寄せて浮かせ、壁を周囲に作ったのち、そのまま空へと飛び上がった。
俺がそこから離れると『力』が解除され宙に浮いていた車やら砂埃やらが一気に地球の重力に従順になり地面に着陸した。
ビルの谷間を飛び上がる俺。
まるで待ち受けていたかのように、そんな俺の姿をマスコミのヘリの中にいるカメラマンは追っている。レポーターのベレー帽を被った女も俺の方を唖然とした顔で見ながらもポソポソと何かを口に出していた。
ケイスケがいる場所に移動しようとしたが、マスコミのヘリが俺を追跡しようとしてきたので再び例の『力』発動。今度はビルを持ち上げたあの時レベルの力だ。発動したと同時に黒い波動が弧を描いて周囲に広がって空気を振動させ、ビルの窓ガラスを振動させ、地面から軽いものが一瞬宙に浮かぶ。
ヘリはそのわけのわからない俺の凄まじい超能力によって操舵不能と陥り、ヘリのパイロットがお手上げしているのが見えた。ヘリの中のレポーターとカメラマンは大慌てで俺を撮っている場合じゃなくなりシートベルトにしがみつく。そしてヘリ自体はそのままゆっくりとビルの屋上へと着陸した。
ついでにプロペラ部分も俺の『力』をもってしてフニャフニャに曲げて差し上げて二度と飛び立てないようにした。
『終わったよ、ケイスケ!帰る!』
電脳通信でケイスケに連絡。
『さっきの場所で待ってるにぃぃぁん』
『オーケー牧場!』
『…』
しっかし…マズイな…マスコミに姿を晒してしまったような気がする。
ヒーローはそんなに目立ってはダメなのに。
嫌な予感がしながらも俺はケイスケとの待ち合わせポイントへ飛び立った。
再び周囲には黒い波動が発生し、空気や窓ガラスを揺らした。