4 新生活応援フェア(リメイク) 2

平日の開店前モールは人はそれほどいない。
休日なら待ち行列がわずかにあるし、イベントでも行われようものならモール前には大行列が出来る。
到着してから数分で開店時刻となった。
出迎えるのはアンドロイドの店員。
もう少し、例えばMappleストアみたいに人間味のある店員ならいいのにな。まぁ、それはそれでコストが掛かるからとどこの店でもやっていないけれど。
などと考えながらもモール内を少し進んで、最初の目的である下着売り場の専門店街に来てからケイスケは言う。
「さてと、最初はどんな下着を買いますかにぃ…」
「下着は買ったことも無いしもちろん選んだ事もないからわかんないや」
俺は言う。
そう、一見するとおっさん間近なデブと女子高生風の女の子が下着売り場の前に呆然と立っている構図だが実は中は二人とも男。男が二人で下着売り場で下着を何するか考えているわけだ。
と、その時。
下着売り場の奥の方にいたおばさんっぽい店員がツカツカと俺達のほうへと歩いてきてから突然話しかけてくるのだ。
「お客様ァ…どういったご要件で?」
明らかにケイスケのほうを見てから言ってる。
「どういったもこういったも、親戚の女の子の下着を買いに来たにゃん」と、ケイスケは俺の両肩をガシッと両手で掴んで、ズイッと店員に向けて、まるで水戸黄門でカクさんスケさんが出すアレみたいに見せて言う。
「それはわたくしと一緒に決めましょうか、申し訳ございませんが男性の方の立ち入りはちょっとご遠慮願いたいと…」
と言うのだ。俺も男性なのでこれには引いた。
「ボクチンがお金を出すんだから選ぶ権利はボクチンにもありますにぃ!!勝手に高いものを勧められて買われちゃ困るんですぉぉぉ!!!そうなったら消費者保護センターに通報してオタクを逮捕してもらうにぃぃ…(睨」
と鼻息を荒くし目を血走らせて叫ぶケイスケ。
店員ドン引き。
「わ、わかりました…」
とりあえず店内には入ることは出来た。
しかし、ケイスケは店員どころか客にもジロジロ睨まれる。そりゃ下着売り場に怪しげなデブが微笑みながら入ってくると誰でも警察に通報したくなる。俺でも通報する。
とりあえずケイスケが下着をジロジロ見て回ってる間は俺はケイスケから距離を置いて、俺は関係ありませんをアピールした。
すると…。
「どういったものがお好みですか?」
と店員のおばはんは俺に聞いてくる。
「どういったものって言われても…セクシーな奴が好きかなぁ…」
俺が興奮する下着はそんなタイプ。
「セクシー…系…ですかぁ…」
いくつかのブラをひょいひょいと持ってくる店員。
「こんな感じのがありますね、ヒョウ柄とかも」
なるほどなるほど。
お、これ、おっぱいが丸見えになるブラじゃん、これつけてほしいな、って誰に向かって言ってんねん、つけるのは俺やちゅぅてんねん。
それを手にとってから、
「これを試着してみようかな、まるで紐のようなブラだけど」
と俺は言う。
「あ、はい、紐ですねぇ、まぁ男性には好印象を持たれるブラですね。ただ乳首が思いっきり露出するので、普通はその下着の上にネグリジェだとかキャミソールを着ますね。擦れてしまうので」
なるほどなるほど。
確かにシャツだとかブラウスに乳首が当たるとちょっとアレなんだよね。
試着室に入る。
まてよ?
俺ってブラの付け方知らなかったんだっけ。
というのをブラウスを脱いでから始めて気づく。
試着室から顔だけ出すと、待っていた店員に向かって、
「すいませぇ〜ん…ブラの外し方と付け方を教えて下さい」
と言うのだ。
「えぇ?!」
「?」
「これ、ご自分でつけられたんですよね?」
と店員は俺のブラを指差して言う。
「えっと、これはケイスケにつけてもらっt」
「えぇ?!」
「…」
俺がチラリと店内をうろつくケイスケのほうを見てしまったから…店員は凄まじい形相でケイスケを睨んでいる。警察に通報しそうな勢いである。
「あの人は彼氏?」
「いえ…」
「何か酷い事されてない?」
「いえ…まだ…」
「すぐに相談しなさいよ?何か起きてからじゃダメよ?」
「はい…」
なんだよ、人生相談かよ!下着買いに来ただけなのに!
そう言いつつも店員は俺にブラの装着方法を伝授してくれた。まぁ、ケイスケも言っていた事だけれど裏にホックみたいなのが埋め込まれてるから、そこに金具を引っ掛けるわけであって、それを背中で指からの感触だけで見極めて装着する。これは慣れてからじゃないと出来ないから最初のうちはまずホックを止めてから頭からブラを被って装着するのがいい、と教えてもらった。
その通りに装着してみる。
フィット感がある。
店員いわく、おっぱいが大きい人用のブラらしい。それで俺にフィット感があるって事は、この体は結構おっぱいが大きいらしい。
「Dカップぐらいねぇ…ほんと、美乳だわねぇ…羨ましいわ」
と店員が言ってるからそうなのだろう。
ブラは乳房の外格を紐で固定するタイプのもので、それだけで垂れたりしないようになる。ただ男の俺が見る限り、これは勝負下着の分類に入るだろう…外格だけ紐で固定するから乳首も乳房も丸見えなのだ。
案の定、ブラウスを上から羽織ると乳首に当たる。
「まぁいっか」
と俺は言ってから、それからは普通のブラもひと通り買った。1週間ループで回す感じだ。洗濯機が壊れても1週間ずっと雨が振り続けて洗濯物がかわかない状態でもとりあえずは大丈夫なように。
「ケイスケェ〜、これ買ってェ〜」
と試着室から身体を出してからケイスケを呼ぶ。
おさいふケータイならぬ、おさいふケースケである。
「美少女キミカちゃんに相応しい下着は選択できましたかにゃん?」
などと言いながら俺の近くへ来るケイスケに、
「じゃーん」
と俺はさっきの乳首丸見えブラを見せる。
「なんですかォォォ!!!!このビッチが着るようなブラはァァァ!!!」
すかさず店員が合計金額をケイスケに提示。
「全部込みで25万3千800円です」
「しかもクソ高いですぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
叫ぶケイスケに俺は、
「女の子の下着は高いんだよ仕方ないじゃん」
と言ってあげる。
「こんなビッチ下着を買うからですォォォ!!!!」
ケイスケは俺のおっぱいを両手の指でみゅぬと摘むと中央に寄せてたり、上にあげたりする。デブで巨漢なケイスケの大きな掌からでは俺のおっぱいはたとえDカップだろうが小さく見えてしまう。
俺は顔を高揚させて、その手を払いのけ、
「お巡りさぁぁ〜ん、コイツd」
「はいはい!買います買いますゥ!!キミカちゃんに似あってますにぃ!」
すかさず店員が言う。
「こちらのネグリジェやキャミソールもいかがですか?下着に合うものを選んできました。合わせて買えば10%お得ですよ!」
「クッソ高いのにまだ買わせる気ですかォォ!!」
「お巡りs」
俺が叫ぼうとしたのをケイスケは巨大な腕で抱き寄せて口を手で塞いで、
「はい!買います!買わせて頂きますにぃ!!!」
とニコニコしながら言った。