2 キミカ出動(リメイク) 6

「泣いても許してやんねぇぞぉぉこらぁぁぁぁぁ!!!」
俺は叫んだ。
フルパワーで俺の超能力をアスファルトに流し込む。
さっき土のうと塹壕を作ったレベルとか非ではないぐらいの力を叩きこむ。
すると、メキメキ・ミシミシと音を立ててアスファルトが変形し瞬く間に盛り上がってくる。盛り上がってそれは宙を浮く。どんどん浮いていく。
多脚戦車はその俺の動きに気づいたようで動いている物体は俺だろうが土のうだろうが撃ちまくってくる。が、さてさて、弾が尽きるからそろそろ辞めたほうがいいんじゃないのかなぁ?
「おぉらぁぁぁ…ぁよッ!!」
俺は砲丸を投げるようなフォームでその超能力でアスファルトと地面を盛り上げて作った塊(直径4メートルぐらい)を空に向かって投げた。
プレゼント・フォー・ユー!!
放り投げた4メートルぐらいのコンクリートの塊を必死に攻撃する多脚戦車。そりゃそうだ。それを攻撃しなければ自分自身に直撃するからなー。
だが。
まだまだ止めないぞ。俺は悪いけどアニメや漫画の中のヒーローとは違う。敵とギリギリの戦いをするわけじゃない、もし圧倒的に俺が勝てる要素があるのなら、『圧倒的』に勝つまで。手加減という言葉は素人ヒーローさんの俺の辞書にはないのだ。
コンクリートの塊がまだ着弾しないうちに次のコンクリートの塊を投げる。その0.1秒後にまた投げる。投げる。投げる。
銃弾?
砲弾?
関係ないね!!
そんな人間のチンケな文明の遺産なんてものは、今の俺のこの超能力を前にしては屁でもない。直径4メートルの岩の塊が空から降ってくるんだ。いや、『降り続ける』んだ。どんなに優れたバリアでも尽きる。
いよいよ俺の周囲にはアスファルトがなくなった。
アスファルトがなくなればビルを投げればいいじゃない?」とかの有名なマリー・アントワネットが言ったという。
そう、次はビルを投げてあげましょう。
ちらっと多脚戦車のほうを見る。
もうそこには見るも無残な戦車の姿があった。
奴め、ふんぞり返っていたけれどもたまらずに位置をずらして俺の攻撃を交わしていたか。でも、そのせいで近くの配置してあったバッテリー車が俺の投げたコンクリートによって大破させられてて、俺は思わずプギャーしたくなった。
「これでトドメだ!くそったれが!!」
俺はフルパワーで小さなビルの根本から『力』を使って持ち上げる。10メートルぐらいの小さな雑居ビルが持ち上がって、いちおう中に人がいないかどうかをビルを傾けたりして確認した後、そのビルと共に空へと飛び上がる。
なるべく奴の攻撃が始まる前にこれを奴のドタマの上に落下させてやる。
戦車は反対車線側から攻撃してくる軍か警察の連中と交戦していた。
AIがパニックを起こすというのは無いとは思う。
けども俺にはその戦車が地上からも上空からも挟み撃ちになっているという状況で、パニック状態になっているのが解った。
奴は自分に近いほうを攻撃する。
ミサイルに貫通弾、機関砲を出来る攻撃をビルに向かって撃ちまくっている。どんどん削れていくビル。俺はそのビルの落下に合わせて背後にぴったりとくっつい飛んだ。目の前でコンクリートが砕け散って戦車が見える。
戦車は砲撃を止めた。
いや、この距離で撃てば自身に被害が出るからか?
ここで俺は刀を武器リストで選んで引っ張りだすと、縦に一直線に斬りこみを入れる。もう戦車はそれを交わせない。
「秘技!一文字斬り!!!」
俺はいましがた名付けた必殺技名を叫んで刀を一気に振り下ろした。
刀の長さでは考えられないほどの長い切断面が戦車と道路に残る。
無様な巨大な鉄の塊は俺の目の前で道路と共に真っ二つになった。
「ふっ…またつまらぬものを切ってしまった」
俺は武器リストの中へグラビティ・ブレードを格納した。
「んんッ?!」
格好をつけてる場合じゃなかった。
警察の連中、敵の戦車と俺との区別がついてない!!
一斉に道路両サイドから俺に向かって銃を撃ってくる。
待ってくれ!俺は味方なんだァァァ!!
「チッ…」
舌打ちしながら俺は地面に手をついた。
一気に『力』を出してアスファルトを盛り上げ、塹壕を俺の周囲に築いた。そしてその攻撃を全て塹壕で防いだ際に砂埃が巻き上がるのタイミングを狙って、空高くへと飛び上がった。
まるでロケットのように空たかくへ飛び上がり、不思議そうに空をみあげている機動隊達の顔を見ながら軽く投げキッスをしてあげる。中には俺を指差して驚いている奴もいる。ヤバイ、テレビにも映ったかも知れないな…。
まぁ、いっか。
とにかく。
ビルがどんどん足元へと移動していく。
俺はどんどん上昇する。
空だ。
日本で4番目の首都になった俺の街が足元に広がっている。
俺は飛んでいた。
遅れて登場した軍の対地攻撃機がミサイルを戦車の『残骸』に発射しながら、ビルの谷間を通り過ぎていく。
俺はさらに上昇した。
凄い。
この力…凄いぞ…。
「ひゃっはー!!」
叫びながら空を飛ぶ。
街がどんどん下へと流れていく。もう飛行機が飛んでいる高さだ。
軍の戦闘機が遠くに見えたからそろそろ着地しよう。俺に向かって撃ってこられたら障害物が周囲にないし、死ぬ。
『キミカちゃん、どこですかぉ?』
『今、空を飛んでるぜ〜!』
正確には落下してる。
一番高いビルの屋上へと俺は着弾した。
凹むコンクリート、衝撃波で吹き飛ぶビル屋上の備品達。
「ふっふっふ…やってるやってるゥ、警察がさも自分の手柄のように…」
遠くで煙がもくもくと立ち上って、警察がドロイドを戦闘にしながら進んでいる。その前には俺が残骸にしてあげた戦車だ。
『そろそろ戻るよ』
『そのまま飛んで青空公園で待ち合わせするにゃん』
『あいよッ!』
俺はビルを飛び立った。
再び衝撃波が起きてビルの一部が吹き飛んだ。