2 キミカ出動(リメイク) 5

『だ、大丈夫ですかぉ?』
『大丈夫なわけねーだろ!』
開口一番に俺が言ったセリフはこれ。
クソッタレが!勝てるわけねぇだろうが!
『一応、ある程度の攻撃ならバリアが展開されて防げますにぃ。ただし再びバリアが展開されるようになるにはインターバルがあるのでご注意を…』
外から銃声がする。
トラックの外壁が銃声と同時に吹き飛んでいく。
「ひぃぃぃぃ!!」
俺は思わず情けない叫び声を挙げた。だって今バリアが展開されていない期間なんだろう。撃たれたらおしまいじゃないか…。
再び塹壕の中に転げ落ちる俺。
もう情けなさ過ぎる。
ヒーローってのはもっと堂々としてるものなのに、なんだこれは、戦場の兵士かよ俺は。しかも圧倒的不利になってもエスケープ&トライで何度も向かっていくとか馬鹿としか思えないぞ。FPSなら俺みたいな馬鹿は点数稼ぎに利用されるのがオチなんだよ。クッソォ…俺を監視カメラで捉えている奴がいたら今頃、腹かかえて大笑いしてるだろうよ!!!
『効かねぇよ!!戦車に全ッ然効かねぇよ!!あの武器クソ過ぎ!』
『クソとか汚い言葉使っちゃダァーンメ!!』
『ウンコ過ぎ!!』
『ウンコもダメですぉ!もちろんウンチもダメェ!』
『言葉遣いはいいからさ!何か使えるのないの?!』
『あの多脚戦車は背後にバッテリー車が居るにぃ…バリアが切れたらすぐさまバッテリー車で補給してるからなっかなか壊れないし、しかもそもそも装甲が分厚いからバリアが切れた時でもショックカノンでの遠距離攻撃は赤子にペロペロ舐められるぐらいの攻撃力しかないんですぉ』
『赤子にペロペロって、それ攻撃じゃなくてご奉仕じゃんか』
…さっきのバズーカ砲みたいな片手持ちの武器は『ショック・カノン』っていうのか。なかなかかっこいい武器だな。しかも超高速で弾が飛んでいくからバズーカとかよりも遥かに凄い。軽量なドロイドなら木っ端微塵に出来そうだ。
ケイスケは続ける。
『効く武器ならちゃんと用意していますにぃ。バリアーおも切り裂く武器が』
ん?
…。
今一瞬『切り裂く』ってキーワードが出てきた。
嫌な予感がするぞ…。
『まさかと思うけど…』
俺が持っている武器で切り裂くタイプの武器って1つしかないじゃん。あの真っ黒な刀だけだ。まさか…まさか…あれで戦車に近寄って斬れって…。
『フヒヒ…聞いて驚け見て驚け…』
『いやいやいや、やめてくれぇ…』
『全てを切り裂く刀「グラビティ・ブレード!」』
『やっぱりそれかよォ…(枯れ声』
『その力が抜けるような可愛い声は止めて欲しいですにぃ』
『今の見てたの?見てただろォ?』
『見てましたにゃん』
『戦車にまともに近づくことすら出来ないのに、そのグラビティなんとかっていう刀で斬るとか無理に決まってんだろぉぉがぁ!ばーか!!』
『諦めたら試合終了ですにゃん』
『試合じゃねぇぇし!!』
まぁとりあえずグラビティなんとかっていう中二病臭いものを出してみるか…。と、その前に、
『この武器ってどうやって元の場所に戻すの?』
『手に持ったまま吸い込むイメージをすればいいにぃ』
『へぇ〜』
俺はさっそくやってみた。
ショックカノンを手に持ったまま、吸い込むイメーj
「おぉぉぉおぉ!!!」
吸い込んでる吸い込んでる!!
一瞬で異空間に吸い込まれるみたいに、ショックカノンが消えた。これは凄い!これは面白いぞ!!!再びショックカノンを出してみる。出てきた。にゅっという感じで出てきた。吸い込む。にゅっという感じで吸い込んだ。
にゅっ(出し)
にゅっ(入れ)
ひょぉぉぉおぉぉぉ!!!
っていうことは…この刀も同じ要領でぇ…。
にゅっ(出し)
「おぉぉ…」
なんだ、これ。
この刀…この色は真っ黒だ。これほど真っ黒になっているのは見たことがないぞ。まるで光をも吸い込んでいるように真っ黒だ。黒い光沢っていうレベルじゃない。漆黒なのだ。そう、まるでブラックホールのように。
「何かを斬ってみましょう」
俺は3分間クッキングのBGMを口から出しながら塹壕の中にある硬そうなものを探していた。あっという間に見つける。さっき戦車が弾き飛ばした車の部品らしきもの。これは鉄製だからそれなりの硬さがあるぞ。
「えい」
刀の刃を鉄製の塊に押し付けた。
斬れるって言ってたから躊躇なく。もしこれで傷ひとつ入らなかったらあのデブを殺してやろうかと思ったら…。
(スパンッ)
俺は目を疑った。
斬れるっていうより、吸い込んだのだ。
鉄の塊を吸い込んだのだ。
鉄の塊をも吸い込めるようなもの…吸い込んだものがどこに行ってるのかは別として、このブラックホールのような無条件吸い込みはある意味凄まじい切り口を成せると思う。確かに凄い刀だ…これを作ったケイスケはドヤってもいい。
『フヒヒ…その刀は主の思いによって吸い込んだり弾き飛ばしたりできるにぃ…半物質変換炉から生み出されるエネルギーでキミカちゃんの周辺の重力を操る事が出来る…その刀の表面にあるのは目に見える形になっているマイクロブラックホールの姿…という設定でお願いしますにゃん』
『設定とかいいから!!』
これならあの戦車に勝てそうだ。
しかし、どうやって近づく?
あいつはある意味、弾幕の盾っていうフィールドを持っているんだぞ。加えて本来のバリアーもある。その2重の盾で攻撃を防いでいるんだ。
奴に近づけるのか?
俺は目の前にある塹壕の塊を見ながらふと、思った。
あぁ。
そうか。
そうだよな、これだけの土を盛り上げる事ができるのならぁ…。
俺は閃いたわけだよ。