2 キミカ出動(リメイク) 4

えっと、電脳通信はどうやってやるんだっけ?
電脳化してから1時間ぐらいしか経過してないのに説明書とか無しに電脳通信しろってのが無理な話なんだよォォォ!!クソォ!
『キミカちゃーん、元気ですかぉ?』
ケイスケの通信が入った。
『ンダヨォ!!!勝てるわけないじゃん!!武器がねぇよ!!』
『武器なら「武器リスト」から出せますにゃん』
『武器リストォ?!どこだよそれはァ!?』
俺は着ている戦闘服のポケットをまさぐろうとする。ポケットがないぞ。どこにリストが入ってんねん!!この服で何かを挟めるのっておっぱいの谷間ぐらいしかないじゃねーかよ!!おっぱいの谷間にあるのか?ない!ないぞ!おっぱいはあるし谷間も出来てるけど谷間には何もない!!
『武器リストは電脳からアクセスできるにゃん』
『それどうやるんだよォ!!電話もかけれないのに武器リスト出せとか難易度高すぎなんだよォォォ!!!』
『頭の中で武器リストを出すようにイメージすれば…』
『おぉぉ!!』
これが電脳化って奴なのか!目の前に半透明でリストが表示されて、そこには武器が並んでる。まるでFPSで武器を選ぶ時みたいな感じだ!いいね!っていうか俺がFPSやってたことを感謝しろよォォァ!
さて、何を使って奴を倒すか…。
英語で書かれててよくわかんないから形状から察するしかない。
まずはFPSでお馴染みの…ものがない。
おい。
どれも見たことがない近未来の武器かよ!!
まずはバルカン砲みたいなもの。小柄の女の子の身体で持つにはちょっと大きそうな…いや、これ、航空機に搭載されてる奴じゃんか。やべぇ…勝てるかもしれない気がしてきたぞ。
それから…これはなんだ?『コ』の時になっててどこから弾が出てくるのか分からない、ちょっと青い形状の長い武器。長さからするとライフルっぽいな。
そして、これもまた女の子の、いや、日本人が扱うには大きすぎるような、バズーカっぽい形状だけれど両手持ちではなく、片手で持つタイプの武器。バズーカ砲のように経口は大きい。
後は…ふむ。
持てない。持てる大きさには見えない。しかもご丁寧にその大きな武器の隣にタバコの画像があってそれと比較することでどれだけ大きいか…って『釣果展示』かよ!釣った魚がどれだけ大きいか見せようとしてんのかよ!!
俺の身体ぐらいの大きさがあるぞ、これ!!
これだけは俺でも読める。BFGだ。どういう意味かは知らない。
後は…ふむ。
刀だ。
おい。
戦車に刀でどうしようってんだよ!!!!
戦闘機に竹槍ぐらいの力の差だよォォ!!!!
ミサイルだよ!
ミ・サ・イ・ル!!
『ミサイルとかないの?!』
『ないですぉ〜』
『どうやってミサイル無しに勝つんだよ!!』
『キミカちゃんならできる!!』
『出来ないよ!どれだけ俺の事知ってんだよ!!ミサイル無しに戦車を壊すとか軍の人でも無理だよ!!!』
しかたない、この中で一番強そうな感じの…バズーカ砲みたいな武器を選ぶか。いや、待てよ?選んだとしてどうやって出てくるんだ?選んだら誰かが届けてくれるのか?ドミノピザみたいに。
とりあえず選んだ。
ん?
掌に何か感触が…。え?
ええ?!
どっから出てきたの?
掌から出てきた?!しかも持つ部分だけ。残りは何か光が歪んだ空間にある。その歪んだ空間は黒い点があるのだが、その点からにゅっという感じでバズーカ砲が出てきている。これをこのまま引っ張り出せば…。
「おおおぉ!!」
黒い点みたいなところからバズーカが出てきた!!バズーカが出てきた後はその黒い点みたいなのは消え去ったのだ。
しかも、このバズーカ砲、めっちゃ軽いじゃん!!女の子のこの身体でもひょいひょい掴めるぞ!うっひょぉ!!!と、調子に乗って俺はくるくるとバズーカ砲を片手で回転させてた時、手を滑らせてしまった。
「ありゃ、やっちまった。てへぺr…」
(ズゥン…)
茶店内のテーブルの上にバズーカ砲が落ちた瞬間、テーブルが真っ二つに割れてしまった。って、おいおいおい!これめっちゃ重いじゃん!!
いや、ちょっと待てよ…。
まさか…。
俺は別のテーブルの前に立った。
そしてテーブルに向かって軽くパンチしてみた。
(パンッ)
…。
何が起きたのかわからなかった。
目の前で爆発が起きたのかと思った。
テーブルが俺の軽いジャブで木っ端微塵になった。
「ちょっ、めっちゃ強いじゃん!」
おいおいおいおいおいおいおい!!!!
これ勝てるかもしれねぇぞォ!!!
よし。
まずは障害物だ。
障害物があって始めて攻撃ができる。戦車を前にしてまっすぐに向かっていけば機銃掃射で肉塊に変わるのは目に見えている。
茶店入り口に立つ。
窓から街路を眺めてみる。
俺の目の前の道路は先程の戦車の攻撃で木々は倒され、車も鉄くずへ変っていた。こういう時に何が障害物になるべきなのか?もし俺が軍隊なら、ここに土のうを積む。それか塹壕を掘る。
しかし土のうはないし、塹壕なんてすぐさま掘れるわけがない、だって戦車に攻撃されるわけだから。
しかし。
俺はケイスケという名のマッド・サイエンティストが肉体改造を施したわけだからそれが可能なのだ…そう、手を触れずに物体を動かせるこの力で…。
俺は地面にそっと手を触れる。
そして目の前の道路を思いっきり上に引っ張り上げる、というイメージをする。すると地震で断層が出来るかのように道路にヒビが入って盛りあがる。そのまま盛り上げたアスファルトの塊を土のうとして盛る。
「よしッ!」
道路に飛び出た。
アスファルトを盛り上げて作った土のう、そして塹壕から戦車に向かってバズーカ砲のようなものを構える。
弾を放つ。
(バンッ)
俺がイメージしていたのと全然違う。
撃ったタイミングで周囲の空気が吹き飛び、俺の髪が靡く。
土埃も吹き飛ばす。
しかもめっちゃ着弾が速い。トリガーを引いた瞬間、多脚戦車にヘックス状の青白いフィールドが展開されたのだ。バリアーがあるのは既に知っているが、トリガーを引いた瞬間っていうのが凄い。そう…ありえないのだ。
こんな速さで弾が飛ぶなんて。
撃つ。
ひたすら撃ちこむ。
衝撃で土のうとして盛っていたアスファルトが吹き飛ぶ。
展開される多脚戦車前のフィールド。
っていうか、バリアーが解けない。
「おいおいおいおいおいおいおい!!!!嘘だろォ?!」
撃ちまくりながら俺が言う。
「おぉ!!」
一瞬だけだ。
一瞬だけ、戦車のバリアーが切れた。
あの鉄の塊が少しだけ凹む。
命中した。俺の撃った弾が。
って…また元に戻ったァ…(白目)
バリアーが硬すぎじゃんかよ!!!
どうすr…
(バンッ)
一瞬だけスローモーションのように見えた。
俺の周囲の土のうが衝撃波で吹き飛んだ。
俺の目の前に青白いヘックス状のフィールドが展開された。
…。
呼吸が出来ない。
撃たれたのか?
何も聞こえない。何も見えない。
気がつくと俺はトラックの荷台に寝っ転がっている。今、自分が作り出した土のうの近くに居たはずなのに…吹き飛ばされたのか?
次第に光が戻ってきた。
次第に音が戻ってきた。
「ケホッ…ケホッ…」
撃たれた?
撃たれたぞ今…。
駄目だ。勝てるわけない。
でも、俺はまだ生きてる。