1 ドロイドバスター・キミカ誕生(リメイク) 3

俺は鏡を前にして発狂寸前になっていた。
というか、発狂していた。
「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあ!!!」
可愛らしい俺の声がこの部屋に響く。
可愛らしい声…。
そう、女の子の声だ。
俺の声だ…。
「ふひひッ!君の姿ですにゃん!鏡に映った♪君の姿♪」
「まてまてまてまてーッ!!!」
「何を発狂してるんですかぉ?」
「何?これなんなの?何がどうなってるの?何なの…?!」
俺はデブ男の両肩をガシッと手で掴むと、ゆさゆさゆさゆさと揺らしながら発狂してように、いや、発狂して叫んだ。
「何って…女の子ですにゃん。女の子だぉ〜!」
「いやいやいやいや、ありえないって!ありえねぇよッ!!!」
「女の子ッ♪女の子ッ♪」
男はニマニマしながら俺の周囲で小踊りした。
「おいやめろ!!踊るのをやめろ!」
「うひひひひ!」
俺は再びデブ男の両肩を掴むと器用に下唇をプルプルと震わせながら、
「俺を助けたんじゃないの?何これ?どうなってんの?」
と震え声で言った。
本当に無意識に震え声が出ていた。
「うんうん、助けましたにゃん」
「うん、それでそれで?」
助かってないだろうがァ!!!
「君の脳みそを助けましたにゃん」
俺はベッドの上でズッコけた。
全裸の女の子(おれ)が全裸のまま、ベッドの上でズッコけた。
「人の命は脳に入っていますぉ。その脳を女の子に移植…という風に思って貰えればいいにゃん?一般人的な知識レベルにまで落として説明すると、そんな感じですにぃ…ふひッ!」
「『ふひッ!』じゃねーよ!戻せ!」
再び起き上がってデブ男の両肩を掴んで揺さぶりながら俺は言う。
まるで変な事を言い出した奴を見るような目でデブ男は俺を見る。
驚いた目が飛び出そうな表情である。
「俺の身体を戻せェッ!」
そんなの無視して俺は続ける。
「もう身体は無くなったんですぉォ!!!無いものはだせにゃーいぃん」とデブ男は不良にカツアゲされた時にするリアクションみたいに、財布を出すと中身が入っていませんというアピールをし始める。いや、金とかじゃないから!
「てんめぇ…じゃあこの身体はなんなんだよォ…?」
「その身体は、女の子の身体だぉぉ〜♪」
と言って男は俺の胸のあたりをツンッと指でつついた。見ればおっぱいに指をふにぃっと埋まってて可愛らしい小ぶりでも大きな形の良いおっぱいが変形している。俺の身体に電気が走ったかのような感覚がある。
こいつ、乳首及び乳房を指でつんとしやがった。
しかも続けて小躍りを始める。
「さわるな!」
「ふひひッ!」
「何が目的なんだよ?なんでこんな事するんだよォ?」
「え?最初に言ったじゃないですかぉ…。悪と戦う…」
「悪と戦うだぁぁ?…よし、いいだろう…じゃあまずは俺の前にいる小汚いデブを抹殺するか。男の俺を女の子の身体にしたという罪で…」
「ふひーっ!!お、落ち着いて!!落ち着くんですォォ!」
「元に戻してくれたら落ち着いてやるよ!」
俺は白衣のデブに飛びかかって、押し倒して、マウント姿勢をとったまま首を締めた。でもデブの首は贅肉が分厚すぎて全然効果がない。ライオンのオスが喧嘩をする時に首の周りを保護するためにたてがみがあるというけども、まさにアレの状態だった。デブの贅肉にこんな効果があったとは驚きだ。
「き、君はボクチンと契約をしたはずですにぃ?」
「そんなクソ契約は破棄だァ!」
「契約を破棄するって事は君は死ぬって事ですぉ?それでもいいんですかぉ?君は簡単に自分の命を破棄できるつもりでボクチンと契約したんですかぉ?」
クッ…。
人間を簡単に蘇生出来る力を持ってる奴だ。俺を殺すのも造作もないのかもしれない。とにかく、俺はそれを聞いてから奴の首の肉から手を引っこ抜いた。
「ふぅふぅ…」
「俺に何をさせようって言うんだよ!!」
「最初に言ったじゃないですか…正義の味方ですにゃん!」
「正義の味方って…はぁ…。アニメの見過ぎッ!」
「見てますよォォ!!深夜1時から深夜4時までぶっ続けでアニメタイムですにぃ!それから土アサと日アサもフルタイムで見てますォォ!!!」
クッ…やっぱりアニオタだったか、俺の精神攻撃が通用しない。
っていうか…。
「威張るところじゃない!」
「ふふ…かくいうその身体も実はアニメに出てくる美少女の、」
俺は再び奴の首を締めた。
「う、うぐっ、ギブッギブッ」
奴は俺の太もも辺りを手でタップした。
「アニメに出てくる美少女って、お前、この身体って誰かの身体じゃないのか?その子はどうなったんだ?脳死したのか?脳死した女の子の身体に俺の脳を移植したのか?既に犯罪レベルじゃねーかよォ!!!」
「ふ、ふひ…いや、それじゃ悪と戦えないですにぃ。その身体は人間のように見えるけど人間じゃない。機械…のようなモノですにゃん。まぁ、既存の概念、一般人の概念では説明できないほど高度な技術が施されている機械ですにぃ」
「き、機械ィ?」
俺は自分の身体を見てみる。
コレが…機械ィ?!
そこには中学生か高校生かの中間ぐらいの年齢の女の子の身体がある。
手のひらを皮膚の沿わせると手のひらの感触が伝わってくる。
どう見ても人間の身体だ。おっぱいを掴んでみると身体に電気が走るような感覚がある。これはエロイぞ…。
「ふひひ…一応、設定上18歳の年齢だから大丈夫だぉ」
「なんだよその児ポ法を意識したような設定は!!」
「細かい事は気にしにゃーい。うひひ…ボクチンにもおっぱいを揉ませてくださいにゃん。ついでにペロペロもしたいにゃーん」
とデブは大きな手のひらで俺のおっぱいを包みこむ。
暖かい手のひらの感触が胸から伝わってくる。
「どうみてもこの身体って人間に見えるんだけど?」
「そりゃそうですにゃん。人間に似せて作らないと意味が無いぉ」
おっぱいを揉みながらデブが言う。
「意味が無いって…?」
「正義のヒーローは普段は普通の人間の姿で、悪が現れたときスーパーヒーローに変身するんだぉ。ふひひひィ…」
「仮○ライダーみたいなもんか」
「ひぃぃぃ!や、やめろォォォ!!そんな汗臭いヒーローじゃないォ!」
「じゃあ、なんなんだよ?」
「しゅご○ャラだとかプリk」
俺は再びデブの首を締めた。
素っ裸の女の子が白衣のデブの首を締めるという光景がそこにあった。