146 怒涛のマスカレーダー 27

港だった。
ついに俺は決戦の場所にいるのか…武者震いがする。
まだ生きているといいが…警察の奴等も人質が居なくなったら自分達がどんな風に『残酷に』殺されるか想像は難しくないはずだ。そう簡単には殺さない…と願いたい。
俺や処刑人が港の一角にある倉庫の前に降り立つ時、既にその周辺にはネット民が流した情報によって集まってきている野次馬が居た。
ヘリは上空からバラバラと処刑人アンドロイド部隊を展開させていく。あるものが屋根の上に乗り上げ、あるものは近くにあるコンテナの上に乗り上げる。
<突入するんか>
<待てってww>
<おせーんだよww>
<やっときたのかよwwww俺は昨日から列に並んでんのにっww>
<人質がいるから簡単には出来ないぞ>
<また県警ビル前と同じで睨み合いか>
<県警前からドロイド撤退させてんの?>
<wwwww>
<キミカちゃんを映せよおい>
<狙撃できそう?>
狙撃か。
俺は光学スキャンで倉庫の中を見てみる。
この倉庫、ハマゾンか何かの倉庫だな…内部に荷物運搬用のドロイドやらレールやらクレーンが並んでいるぞ。それらが複雑に入り組んでて外からの狙撃を不可能にしている。って…さすが警察だ。そういうのも想定してたってことか。
<おいおいおい!!警察来たぞこれ!>
ん?
どういう事だ?
<今までどこ行ってたん?>
<やべぇってw>
<俺はとりあえず離れる>
<(野次馬として現場に参加している連中がケータイで撮った写真、パトカーやら機動隊のドロイドが集まってきている)>
ちょっ、来てんじゃん…。
<補導されるぞwwww>
<なんで?ここにいるだけで補導されるん?>
<クッソwww>
クマンバチと呼ばれる地対空ドロイドは一斉にパトカーにマシンガンで攻撃を開始する、と同時に、処刑人も数名が援護にまわる。だが数で負けている。
最初っからこうなることが狙いだったのだろうか。
県警ビル前には火力の強いドロイドが居たのにな。
倉庫屋根の上に着地。ここだと下から狙い撃ちにされるから、屋根伝いに壁を降りて、途中、壁をブレードで切り刻んで中へと侵入した。
それに気づいた処刑人ドロイド(女)が俺の背後からついてくる。
<くっそwww火力つぇぇwww>
<殺られてるぞおい!>
<雑魚スケがwwwww遠隔操作の勉強あと30年しとけww>
<ジガバチ退避させろよwwww狙われるってwww>
<こっちはキミカたんについていくぉ>
背後から爆音が聞こえる。
さっきまで空を飛んでいたクマンバチタイプのドロイドのうち1体が青白い炎を上げて別の倉庫に屋根に墜落していく。
<誰だよジガバチコントロールしてる奴は!!>
<よえぇー!!>
<貴重なジガバチは撤退させてください>
<※※撤退せよ※※>
<※※撤退せよ※※>
<貴重なジガバチは撤退させてください>
<貴重なジガバチは撤退させてください>
<なにしてんwww>
<貴重なジガバチは撤退させてください>
<※※撤退せよ※※>
<ジガバチ撤退させたら処刑人だけでどうやってここ維持するんだよ?無理なこと言うな>
<↑>
<どうすんねんこれェ>
<はようせい!>
<ゆーちゃん見つけてさっさと逃げないとヤバイ>
兵庫県警マジで殺すぞコラ>
<ってかなんでこんなに暴れてるのに軍は出てこないん?>
<↑だから警察が出動要請してないんだってば>
<アホか>
どうやらクマンバチって呼ばれてるドロイドはネトウヨの間ではジガバチって呼ばれてるのか。ってそういうのはどうでもいい、外ががら空きになったら警察突入してくるのも時間の問題だ。
早くゆーすけと坂本さん見つけないと。
…。
さっそく俺に攻撃仕掛けてきたか。
クレーンの影からドロイドが俺に射撃をしてくる。
ブレードで弾き飛ばす。
戦車砲に切り替える音がする。
と、同時に、俺の背後から処刑人がバズーカを放つ。ドロイドの正面にヘックス状の青白い光の壁が現れる。バリアー展開を確認して立て続けに俺はショックカノンで木っ端微塵に分解させてあげた。
<うっひょおおおおwwww>
<キミカたんつよいぺろぺろ^^>
<かっこぇぇぇwwww軍の最新兵器か?>
もう少し処刑人が来てくれるといいんだけれど、外の機動隊との応戦に忙しいようで、結局1体しか俺についてきてない。
再び銃撃。
俺の方はブレードで全部の弾を弾き飛ばしたが、俺の背後にいた処刑人アンドロイドはあっちゅうまに肉塊になってしまわれた。
<クッソwwww>
<キミカたんつぇぇ…マジ感動>
<なんちゅう速さで弾を弾き飛ばすんだよ、五右衛門かよww>
<wwwww>
<これが見れたから今日はもう寝よ>
はえぇぇ…>
<っていうか跳弾が飛んできたんだけど…>
<ワロタwww>
今度はドロイドと刑事どもが一斉に俺に向かって撃ってきてる。
だがしかし…コンテナをグラビティコントロールで操って、連中をぺちゃんこに押しつぶした。ドロイドはメキメキ音を立てて、そして警官どもはトマトを押しつぶしたように真っ赤な汁を飛ばして圧死。
馬鹿め…この倉庫が仇になったな。
さらに俺はほぼ真っ暗な(足元にしか光源のない)倉庫の中を進んでいった。背後には銃撃でバラバラになった処刑人が横たわっている。
<お気をつけて>
<健闘を祈る!>
<(敬礼のAA)>
<最後まで一緒に戦えないのが残念だ>
<(敬礼のAA)>
<誰か回収してよww>
まだカメラは生きているようだ。
…いや、もう限界か。
俺の背中を映していた処刑人のカメラ(視界)はバッテリーが切れて映像が真っ暗になって終わった。