146 怒涛のマスカレーダー 20

チナツさん…かな?
(コンコン)
再びノックする音。
俺は電脳通信でチナツさんへ接続する。
『チナツさん?』
『ん?』
『今、ホテルに居る?』
『いや』
『誰かが部屋を訪ねに来たんだけれど…』
『待て。調べる。ドアに近づくな』
突然緊張が走る。
「チナツさんじゃない…」
俺は言う。
「誰かなぁ?」
エルナがドアに行こうとするのを俺と坂本が止めた。
「「出ちゃダメだって!」」
コイツゥ…酔ってるのかよ。
『いま、監視カメラの映像を送る。これは貴様の友達か?』
俺の電脳に映像が届く。
足まで覆うぐらいの黒いコートに身を包んだ長身の渋いおっさんが懐に手を突っ込んだままの状態でエレベーターから降りて、俺達3名がいる部屋の前に向かい、懐に手を突っ込んだままの状態で空いてる手でドアをノックしている映像だ。今にも懐から何か出しそうだ。
『懐から財布でも出すつもりなのかな』
『先ほどこの男が車から降りる時、懐にハンドガンを忍ばせていたようだが、貴様の友達か?』
『懐にハンドガンを忍ばせる友達は居ないよォォォ!!』
やばい。
やばいぞ。
殺し屋なのか?
っていうかもうバレた?
チナツさんがホテルの予約したのに?
『殺し屋か?』
『そうだと思う…なんでバレたの?』
『監視カメラの映像は警察にリアルタイムで送信されているからな』
『あ〜…はいはい、そういうことね』
『返り討ちにしろ』
『了解』
俺はエルナと坂本弁護士に「伏せて」と静かに言った。
「誰が来た?」
そう聞く坂本に、
「殺し屋」
と小声で言う。
エルナが叫び声をあげそうになる、のを、俺が手で塞ぐ。
「しぃーっ!(人差し指を唇に当てて)」
「(無言で頷くエルナ)」
部屋の入口の3メートル手前まで歩き、今度はスリッパを脱いで、グラビティコントロールでスリッパだけを入り口まで『歩かせる』もちろん、ちゃんと俺の体重を意識して重力を加えて。
(かちゃん)
ドアに掛かっていた鍵をグラビティコントロールで外す。
その時だ。
(ポスン・ポスン)
と音が響き、ドアに穴が空いたのだ。
これはサイレンサー付きの銃だ…。ドアの前に誰が立っていようと関係ない、とりあえず殺しておくって手口だ。だから…おそらくコイツは部屋の中の人間を全員殺してから死に顔を確認するまで帰らないだろう。
撃ってドアは貫通したはずなのにターゲットに当っていない、というのに気づいた殺し屋野郎は今にもドアを押して中へとゆっくり入りそうだ。少しだけハンドガンの先端が見えてるからな。マヌケめ。
キミカ部屋からプラズマライフルを取り出す。そしてスコープを透視モードに切り替えて間抜けにも突っ立っている殺し屋野郎のキンタマに狙いを定めて、
(パスン)
この距離でのライフルは強烈な一撃となって奴の股間を吹き飛ばした。綺麗には吹き飛ばさず、股間や股の間の筋肉やら脂肪やらを丸ごと吹き飛ばしたのだ。いわば大きな穴を股間に開けられた状態。
(!!!)
ドアを開けて痛みで叫ぼうとしていた殺し屋の口をグラビティコントロールで塞ぎ、そのままドアの中へと引きずり込んだ。意外と身長がある男だ。こんな人が殺し屋なの?って思えるぐらいに普通のおっさんだ。
「ちょっと通りますよォ」
そう俺は言いながら、グラビティコントロールでおっさんを持ち上げたまま、窓を開け、そのままビルの外へ放り投げる。と、そこで空中でストップ。あまりの出来事にエルナは大声で叫ぼうとするが、坂本がそれを手で塞いだ。
ライフルで吹き飛ばした殺し屋の股間は穴が空いており、腸が垂れ下がっている。つまり肛門まで全部吹き飛ばいているのだ。
「誰に頼まれたの?」
おっさんに聞く俺。
少しグラビティコントロールを弱めて口を自由にさせる。
「し、しらん」
(バスン)
近距離で再びプラズマライフルが火を吹いた。
俺がグラビティコントロールでライフルを遠隔操作し撃ったのだ。
おっさんの右腕が吹き飛んで、ビルの下へと落下する。神戸の美しい夜景の中へとグロ注意の肉片が落下していく。
俺は3本ほど指を立て、
「あと3回チャンスがある。誰に頼まれたの?」
3本の指はまだ残っている左腕、右足、左足だ。
「お、俺のような仕事をしている人間が依頼者をバラすと思うのか」
(バスン)
左腕が吹き飛ぶ。
俺はピースサインをする。
『チナツさん、こいつの顔の映像から割り出せる?』
『あぁ。今分析が終わったよ。陸山会の雇われキラーだな』
『早い…』
陸山会の送った殺し屋だってね」
おっさんは俺を見てニタァと笑ってから、
「化け物が!!…殺せ」
そう言った。
「あんたを殺した証拠を送り返さなきゃ」
(バスン)
ライフルはおっさんの首と胴体の接合部分を吹き飛ばした。
自分の身体がビルの谷間へと落ちていくのを見ているおっさん。その頭をキミカ部屋へと吸い込んだ。
陸山会と警察との繋がりを調べよう」
唖然としている2人をよそに俺はそう言った。