146 怒涛のマスカレーダー 13

「にぃぃぃぃぃぃぃッ!」
(ヅドン…)
この音はケイスケのストレートパンチが液晶パネルを突き破ってテレビをぶち壊す音である。ちなみにこれで2枚目である。
「ケイスケ!落ち着きなよ!もう2枚目だよ!」
俺が制止しようとする。
「これが落ち着いていられるかァァァァァ!!!…次ィ…!」
そう、3枚目の液晶パネルが既に準備されており、それを設置すると再びあの『ドロイド遠隔操作事件犯人逮捕の緊急特番』へとチャンネルが合わせられる。そんなにパネルぶっ壊して大丈夫かっていうと、
「どうせサムチョンの安物液晶パネルで暴落しすぎて一枚10円なんだから全然平気ですォ!!それよりもこの怒りの矛先が無くなってしまうことが、精神衛生上まずいことになりますにゃん!!っていうか、さっきからゆーすけ君がアニオタだからアニオタが悪いとかそういう論調ばっかりです…こんなクソ番組が今まで存続できていることが不思議でならないですにぃぃぃぃ…」
そうなのだ。
さっきからゆーすけ容疑者が江ノ島に通っていたから『江ノ島になんて通うとか犯罪者だ』という話から、『猫カフェなんて通うとか犯罪者』、『駅のトイレを使うとか犯罪者』、『犯罪者に多い名前はゆーすけだ』などなど、無理やりこじつけたであろうクソ論調がこの番組内で横行している。
液晶パネル設置。
チャンネルをウジテレビに合わせる。
『はい、リポーターの吉永です!ここはゆーすけ君が毎日仕事場までの間を通っていたと呼ばれる神戸市内の「アキハバラ」と呼ばれる場所です。全国にアキバは点在していますが、見てください、この怪しげな雰囲気…容疑者のゆーすけ君は毎日、仕事場への5キロ432メートル42センチ11ミリの距離を歩いているなかでこのような「アニメ」の影響を受けて、そして今回のような悪質な犯行を思いついたのかもしれません…あ!みてください!これは…ドロイドバスター・キミカのフィギュアです!!もしかしたら、ゆーすけ容疑者もこのフィギュアを持っているのかもしれません…恐ろしいですね!フィギュアなんて持ってるとか、もう犯罪者だと思ってもしかたないと思いますよ!!見てください、もう、周囲、アニオタだらけ!犯罪者だらけ!アニオタは世界の恥さr』
「にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!」
(ドゴォォォ!!)
再びケイスケのストレートパンチが液晶パネルを貫通し、パンチ痕を壁に残した。凄まじい…既にケイスケの手の甲からは血が滴っているのに、痛みを感じていないのだろう、壁にパンチ痕まで残すまでの攻撃力を保っている。
「つぅぅぅぎぃィィィ!!!」
吠えるケイスケ。
ナツコが慌てて液晶パネルを設置する。
そんな中、マコトは俺に話しかける。
「本当に日本のバラエティ番組って面白くないねぇ…アニメしか視聴率取れないんだから、アニメを放送すればいいのにね」
「ずっとアニメばっかり放送していると一部のアホ団体に怒られるんだよ。それに変にプライドがあるのか知らないけど東京テレビ以外はアニメを深夜以外は放送しようとしないし。で、テレビ離れがどんどん進んでゴールデンは今では東京テレビしか視聴率取れてない。見てよあのひな壇芸人。もう誰が誰やらわからないじゃん。望遠カメラで捉えないと顔の判別がつかないし、マイクがあっても声がめっちゃ小さくて何を言ってるのかわからないし、それにさ、ほら、ああやって芸人同士がローカルな話をしてゲラゲラ笑ってるんだよ。もう芸人じゃないよ、ただの『笑ってる人』だよ。給料低すぎてわざわざ自分からお金払ってテレビに出てるらしいじゃん…ほんと、このひな壇、思いっきりグラビティブレードで土台を切り刻んでひっくり返してやろうかな…それで何人か死んだらきっと笑いもとれると思うよ」
マコトはそれを聞いて手を叩いて笑ったあと、
「新聞だってニュース番組だってネットのほうは証拠もある上で放送するけれど、テレビのほうはネットのニュース番組の放送から1日後に同じ内容のニュースをさも今起きたかのように捏造して放送してるしね」
と言う。
良い事言うね!
「そう、そうだよ。捏造だよ捏造。マコト良い事言ったね!」
「え?何が?」
「警察は事件を捏造してるんだよ!そして証拠も捏造して、適当な国民を一人逮捕して、それでマスコミに捏造した事件を報道して、マスコミがそれに輪をかけて捏造する…捏造エンターテイメント!!」
「それが本当なら品がないなぁ…朝鮮のテレビ番組みたいじゃん」
「堕ちた人が朝鮮人ではない…人が堕ちると朝鮮人となるのだ…(白目)…まぁ、2chネラーの話だとテレビ番組とかの仕事についてる人ってDNAを調べたら純粋に日本人って居ないって事になってるしね」
と俺がマコトと話をしてると、
「キミカさん!Mappleがでていますわよ!」
と突然ナツコが俺に話をふるのだ。
「え?Mapple?どこどこォ?」
俺はわずかに期待してテレビを見る…が、その期待は10秒ぐらいで裏切られる事になる。まずはMappleの企業の紹介や商品の紹介が続いて…。
『はい、これがゆーすけ容疑者が使っていたと思われるMapBookAirですね。みてください、この邪悪な林檎のマーク…。日本のPC業界を衰弱させた悪魔のネットブック、それをゆーすけ容疑者は使ってドロイドへのハッキングを試みていたようなのです!!怖いですよね、でもUindowsなら大丈夫!ウイルス除去ソフト「ウイルスデストロイヤー」が標準でインストールされ、CPUの使用率が80%まで上昇しますけれど、完全に邪悪なソフトウェアが駆逐されます。たまにOSに標準で搭載されているソフトウェアも削除されますが、そこはご愛嬌ということで…それにしても、MBA、一部の人の話だと「Mapple教」という宗教団体までいるという話じゃないですか!これほど危険なものは…いえ、Mappleの製品を使う人間は不純異性交遊と国家反逆罪と破壊活動防止法の3つの罪でその場で公開処k』
(ブン…)
俺のグラビティブレードによる斬撃により、サムチョンの10円の液晶パネルはバラバラに分解された。
「つぅぅぅぅぅぅぅうぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
俺は吠える。
「ヒッ!」
ナツコがビクッと驚いたあと、再びサムチョンの10円液晶パネルがセッティングされる。テレビの電源が入る。
『はーい!一旦CMでーす!今までずーっとCMなしでやってきたから、色々なところから怒られまくっちゃうのでこれから2時間ほどCMでーす!ビデオに録画してる人は居ないと思うけどもし居たら2時間飛ばしてねー!』
おいおいおい!
それをお前が言うのかよ!!