145 誕生日プレゼント : 宇宙船 2

夕食が出来た。
ケイスケは「いただきます」を言う俺達よりも先にガツガツと食い始める。
俺はケイスケに質問があったんだよ。
そう、先ほどの…『疾風』についての。
「ケイスケェ」
「なんですかぉ?誕生日のプレゼントならないですにぃ」
「おい」
ないのかよ!!
その話じゃなかったけど、なんかムカつくな!ないのかよ!!用意しとけよォ!!もう誕生日から1週間ぐらい過ぎ去ろうとしてたけどさ!
「その話は置いといて…」
「キミカちゃんにプレゼントしたのはあの白い液体だけですにぃ!」
「「「食事中に止めて」」」
俺とマコトとナツコが一斉にケイスケにツッコミを入れる。
「だからその話じゃなくて」
「誕生日プレゼントの話じゃなかったらなんですかぉ?」
「例のキミカ部屋ってあるじゃん?」
「あれが『ある』のはこの宇宙上ではないわけだから、この宇宙上においてアレの存在有無を語るのなら、正確には『ない』ってことになr」
「いいから!!そこ本題と違うから!!言い方なんてどうでもいいから!」
「…ではこの宇宙上にあると仮定して…」
「…」
「それで、なんですかぉ?キミカちゃんに用意した4次元ポケットがどうかしたんですかにぃ?」
「前にあの空間に試しに生き物を吸い込んでみたんだけど、」
「なんてことをしてるんですかにぃ!!!」
「えと、その、ごめんなさい…」
「死ぬに決まってるにぃ!」
そう。
死んだのだ。
ちなみに吸い込んだのは『蚊』
なぜ吸い込んだだけで死んだのか。
ちなみにドロイドバスターは吸い込んでも死なないよって言われてたからキリカを吸い込んだことはある。もちろん、変身後の状態で。
「あれって何なの?宇宙空間?」
「宇宙空間という定義がこの宇宙における宇宙空間だとするのなら、似て非なるものですにゃん。ま、簡単に言うのなら『本当に何もない宇宙空間』ですにぃ。太陽などからのエネルギーやダークマターもないし、重力干渉も、もちろん空気も水も大地もないですにぃ。『この』宇宙空間はビッグバンと同時に時間や空間・エネルギー・物質などなどが一斉に現れた…という『普通のプロセス』をもって創られているのにたいして、キミカちゃんの持ってる異次元空間は時間と空間のみしか存在しませんですにぃ」
「ふむふむ…じゃぁ、例えば、あたしの持ってる異次元空間の中では『宇宙船の中』だったら普通に生物は生存できるのかな?」
「もちろんできますにぃ。っていうか、宇宙線やら重力干渉がないぶん、この宇宙空間よりも宇宙船の中は安定すると思われますにぃ。ま、物理はよくわかんないからよくわかんないところではありますけれども」
「なるほどなるほど」
「キミカちゃん、まさかタチコマの中に生物を保管しようとか考えてるんじゃないですかぉ?多脚戦車の内部は完全密封じゃないし気圧の管理も出来てないから入れると色々と不都合が起きますぉ?」
「いやいや、そうじゃないよ。そうじゃない。こっちの話」
「な、…どっちの話ですかぉ?」
「えっと、だから、その、こっちのこのへんの話」
と俺は床のあたりを指差してから言う。
首を傾げるケイスケ。
とにかくだ。
宇宙船がもし仮に俺の異次元空間(キミカ部屋)内に存在しえるのなら、俺の夢がヒロガリングなわけである。今まで食べ物は完全密閉じゃないと格納出来なかったし、なんか俺がMBAを出し入れする時も冷蔵庫に入っていたかのように冷たくなっているから機械にも悪いんじゃないかって思ってたんだよ。
グラビティ・ブレードやらショックカノンやらの武器は乱暴に突っ込んでも全然兵器だけどさぁ、物置として使用するにはもうちょっと地球の環境と一致させとかないといけないよね。
で、宇宙船なら内部は程よい環境に調整してくれるじゃないか!って思い立ったわけ!たまたまさっきのニュース見てたら思いついたんだけどね。
そう思い立ったら根っからのクリエイター肌が災いしてか血が騒ぎ始めて、このままじゃ眠れないと思い始めたわけだよ。で、その日のうちにキサラに頼んで「ねぇねぇ、あれほしいー!あれつくってぇ!」と歳に沿わないモノイイをするガキがこれまた歳に沿わなく『パパ』なんて呼ばれてる人に駄々こねるみたいにキサラに宇宙船を作ってもらおうとか考えたりするわけだよ!
「ちょっとご飯食べてから出かけてk」
「ダメですにぃ!」
「なんでだよ!!」
「美少女の夜間外出は禁止ですにゃん」
「大丈夫大丈夫。あたしが襲われるようなタイプに見える?」
「そういう意味じゃないですにぃ。もしキミカちゃんが夜の街でちょっと酔っ払って変な男に付いて行ってラブホテルで処女損失とかになったら…ボクちんはお父様にどう言って許しを請えばいいのか…うぅ…」
「…」
マコトもナツコも「うわぁ…」って顔でケイスケを見ている。
マコトが言う。
「じゃあ、ボクがキミカちゃんを監視するよ!それなら大丈夫?」
「ダメですにぃ!」
なんでだよ。おい。
「なんでだよ!」
と、マコトが叫ぶ。
ケイスケは答える。
「美少女であるマコトちゃんも、調子に乗って酔っ払って変な男に付いて行ってラブホテルで処女損失とかになったら…ボクちんはお父様にどう言って許しを請えばいいのか…うぅ…」
俺達はどんだけ調子に乗って男についていきまくってるんだよ。処女損失フラグが立ち過ぎだろうが。童貞の妄想乙だなもう…。
今度はナツコが周囲の空気を読んで、
「それでは、わたくしがキミカさんを夜の街へ、」
「1人で勝手にいけばいいんじゃないですかぉ?」
「「おい」」
俺とマコトは同時にケイスケにツッコミ&平手チョップを食らわした。少しは妹が危険な目に合うかもしれないから行くなとか言えよもう。
「あーもう、わかったよ。わかった。それじゃケイスケ同伴ならOKでしょ?ケイスケにも知っておいて貰いたいし意見を聞きたいからねー」
と俺は言う。
ケイスケは焦りながら、
「し、知っておいてもらいたいって、なん、なん、ななな、なんなんですかぉ?!まさか彼氏を紹介しますとかいいだすんj」
「おい」
それにはマコトも焦る。
「キミカちゃぁ…ん」
「おい」
だから彼氏とか居るわけ無いだろうが。少なくともケイスケは俺が男であること知ってんだから動揺するなよ。
俺がホモっ気あるとか言いたいのか?!そうなのか?!