144 キミカのお誕生日会 5

いよいよ俺の誕生日会、開催当日となった。
会場はケイスケの家。
リビングにはマコトが準備した飾りや料理、ケーキなどがある。
俺は少し緊張した面持ちでリビングへと向かう。会場にはまだ誰も来ていないのでそれはそれで安心した。一体どんな顔して誕生日会の主役を勤めればいいのだろうかと心配してたんだよ。
「あ、待っててね、キミカちゃん。料理が今出来上がるから」
マコトは基本的に和食がメインなのに、今日は頑張って洋食に挑戦してくれている。誕生日会っていうとどうしても洋食のイメージがあるのだろう。日本では誕生日会を祝うっていうものが古来存在しなかったからかもしれない。
「ナツコとケイスケは?」
俺が聞いてみると、
「ん?ナツコはなんだか新作のスプラッタームービーが今日映画館であるらしくて、朝から並んでいるよ。集客悪くて並ばなくても見えると思うけどね…。先生はなんか新作アニメのデータディスクの購入特典貰うために色々なアニメショップを回ってるらしいよ。特権貰うために同じ内容のアニメデータディスクを何枚も買うなんて馬鹿げてるよねぇ…」
ぬぅぅ…。
二人とも薄情だなぁ。
…。
…。
…。
それから待つこと1時間ぐらい。
もう誕生日会開始まで15分ってところでチャイムが鳴った。
「あ!みんな揃って来たのかな?」
マコトがトタトタと廊下へと向かう。
主役の俺はどうするべきか迷っていると、玄関の方から声が聞こえる。
「闇よりいでし邪悪なる暗黒の眷属『ドロイドバスター・キミカ』の生誕祭が行われると聞いて、その厄災を祝いにきた」
この声は、キリカか。
来てくれたのか…彼女だしな。
なんだかホッとして涙が出そうになったよ。
「他の人は?」
リビングに現れたキリカはキョロキョロと周囲を見渡して言う。
「ん〜まだみたい。公共機関が遅れてるのかなぁ?雪とか降ってたしね」
などとマコトがまるで誤魔化すかのように言うのだ。ちょっとその不自然な誤魔化し方が気になってきたんだけどォ…。
と、その時だった。
突然鳴り響く電話。
マコトが受話器を取ると…。
「あ、うん。うん。え?う、うん…まぁ、気にしないで」
受話器を置く。
俺はマコトをじっと見つめる。
マコトは突然身体をピクンとさせて、それから、
「えっと…水泳部のキャプテン、これなくなったって」
「そ、そっか…」
と、その時だった。
突然鳴り響く電話。
マコトが受話器を取ると…。
「あ、うん。うん。え?う、うん…そっかぁ…わかった」
受話器を置く。
俺はマコトをじっと見つめる。
マコトは突然身体をピクン…とさせて、それから、
「えっと…女子水泳部のキャプテン、これなくなったって」
「ふ、ふぅ〜ん…」
と、その時だった。
突然鳴り響く電話。
マコトが受話器を取ると…。
「あ、うん。うん。え?!う、うん…そっかぁ…」
受話器を置く。
俺はマコトをじっと見つめる。
マコトは突然身体をピク…ン…とさせて、それから、
「えっと…女子水泳部の後輩のマドカちゃんとミコちゃん来れなくなったって…」
「え、ちょっ、今の二人からだったの?」
「うん。二人一緒にどっかに行く予定になったみたい」
「そ、そっかぁ…まぁ、距離はあるからねぇ…」
「う、うん」
と、その時だった。
突然鳴り響く電話。
マコトが受話器を取ると…。
「あ、うん。うん。え?!う、うん…わかったよ」
受話器を置く。
俺はマコトをじっと見つめる。
マコトは突然身体をビクッ…とさせて、それから、
「えっと…ナノカとユウカ来れなくなったって」
「ふ、ふぅ〜ん…そっかぁ…」
「二人一緒でどっかに行ってるっぽい」
「ま、まぁ、用事があるなら、しょうがないかな…」
「…」
と、その時だった。
突然鳴り響く電話。
マコトが受話器を取ると…。
「あ、うん。うん。え?!う、うん…わかったよ」
受話器を置く。
俺はマコトをじっと見つめる。
マコトは突然身体をビクッ…とさせて、それから、
「えっと…先生が『家の鍵掛けるの忘れてたから気をつけて』って」
「そ、そう…」
「…」
開始の時間は過ぎて、既に2時間は経過していた。
「…」
俺はじっとケーキを見つめて固まっていた。
「あ!て、テレビでも観よっか!」
マコトが慌ててテレビの電源を入れる。
いつものようにマスコミが街頭インタビューをしており、通り過ぎる人達の適当なのを捕まえて、「お誕生日会とかってしたことありますか?」と聞いている。聞かれた男性はヘラヘラと笑いながら「ああ、ありますよ、ダチと一緒にお酒飲んで終わり」と言っている。それに対してインタビュアーも、一緒にいた彼女らしき奴も「それって普段とおんなじじゃーん!」とツッコんでいる。
すぐさまマコトはチャンネルを変えた。
俺の隣では普段から仏頂面のキリカが、あのキリカですら、今のこの息苦しい状況に不安な顔をして俺のほうを見ているのだ。
やめろ…。
やめてくれ。
そんな目で俺を見るな!!!!!
「…き、きみ…か、ちゃん?」
マコトが言う。
「…」
「キミカ?」
キリカが心配そうな声。
「…」
「な、泣かないでキミカちゃん…」
マコトが動揺を隠せす言う。
「…ング…えグッ…」
「わ、私だって誕生日会無い…」
フォローになってないフォローをするキリカ。
「ン…エグッ、ヒクッ…ウゥゥ…」
「た、たまたまみんなの予定が重なっただけだよ!大丈夫さ!延期すればいいじゃんか!ボク、また料理作るよ!!」
延期…というキーワードを聞いて、俺の中に何かがキレた。
「う、うわぁぁああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!!」
俺は、キレて、叫んだ。