144 キミカのお誕生日会 3

お昼休み。
俺は学食でいつものように肉やら野菜やらをお皿に盛り付けて箸でモグモグと食べていた。正面にはスープ皿にパンを付けてそれを囓るキリカがいる。
キリカはジト目で俺を睨んだ後、
「2月24日…」
とボソリと言ったのだ!
「げぇほォ!!ゴホッ!ゴォォホォォ!!」
死ぬかと思った。
突然俺にしかわからないようなキーワードを言いやがるから食べてたものが「食道は俺が通る道じゃない、俺の道はこっちだ」などと言って気管のほうへと入って行ったぞ。
俺はテーブルをグイグイ押してキリカの胃を圧迫させる。
キリカはキリカで俺をジト目で睨んだまま、
「うッ…うぅ〜…」
と唸る。
それから、
「き、キミカぁ…ゲロ吐きそう」
とか言い出す。
「何やってんのよアンタは」
隣でユウカはそう言って俺の頭をペシンと叩いた。
それに続けてユウカは、
「2月24日って確かキミカの誕生日だったわよね」
「だからぁ!!それは口外禁止だってば!」
「あぁ、ごめんごめん」
それから俺はグイグイテーブルを押してキリカの胃を圧迫しながら、
「キリカも言ったらダメだかんね!」
と言う。
「わかった」
ブイサインを眼帯の前ですると、キリカはそう答えた。
…ったく。
(私はキミカのお誕生日会、出席する)
「ひぃッ!」
こいつ…俺の脳の中の直接!!
ま、まぁ、キリカとは付き合ってる関係だから出席してもらっても全然いいけど。いや、むしろ来てほしいという気持ちはあるけれども。
情報は漏らさないでほしい。
などと俺が思っていたところ、馬鹿2名(コーネリアとメイリン)がやってくる。コーネリアのほうなんてなんかHappyBirthdayの歌を歌いながらだ。
「ちょっ、」
「HappyBirthday to you、HappyBirthday to you、HappyBirthday… for me…he he he…」
「フォー・ミー?」
コーネリアは俺の今しがた食べようとしていた昼食の盛りつけられた皿を指でツンとさわった。その瞬間、皿の上にあった俺の昼食がケーキへと変化して、最後はメッセージが記述された。
『HappyBirthday to Cornelia』
「はっぴーばーすでい、とぅ、こーねりあ?」
「奇遇デスネ、キミカ、私モ2月ガ誕生日ナノデス」
ナノカやユウカはコーネリアが一瞬で俺の昼食をケーキに変えたマジック(実際はドロイドバスターの物質変換能力なのだが)を見て驚いている。
「ふぅーん、そうなんだ」
「デース!!he he he…誕生日Presentノ受付ハ始マッテイマスゥ…」
俺は目の前にあるケーキをコーネリアに差し出して、
「はい、プレゼント」
と言った。
「ンノォォォォゥゥゥウ!」
「あたしがあげれるものなんてないよ〜」
軽く交わす俺。
「心ノ篭ッタモノナラナンデモイイノデスッ!コレハ私ガ今作ッタモノジャナイデスカァァァァ!!」
まぁ、そうだけど、ドロイドバスターの能力を一般人の前で堂々と見せるのはどういうものかと。まぁマジックだと思ってくれてるうちはいいけど。
「それじゃぁ、」
俺はブレードを抜いて(0.00025)ケーキの上に乗っているチョコレートを『心』という漢字に刻んで(0.00056)ブレードを納めた(0.00025)
「どうぞ」
「Oh!Ko Ko Ro!」
気に入ったみたいだ。
ふとナノカは思い出したかのように人差し指を下唇に当てて、「あ!そうだ!」と言って、それから「キミカっち、水泳部のキャプテンとか後輩達も参加してもいいよね?!」と聞いてくる。
「う、うん…くれぐれも口外禁止でね」
「まかせて!」
その後、コーネリア、メイリンに聞く。
「コーネリアちゃんとメイリンちゃんはキミカっちのお誕生日会には出席でOKだよね?」
「YES!!」「いいぞ」
二人は心地よくOKを出してくれた。
なんだか出席者が増えると緊張してくるなぁ。
お誕生日会なんて久しぶりだ。
ん?
ケイスケが俺達のテーブルの上を見てるぞぉおい!!
やばい。
俺は目の前のケーキをキミカ部屋へと引きずり込もうと睨む。それに気づいたコーネリアは「Hey!」と俺の肩を叩いて吸い込みの軌道をずらした。
って、何してんねん!
ほら、ケイスケがこっちに気づいてやってきただろうが!
ドスンドスンと地を鳴らす凄まじい音を立てて俺達のテーブルへとやってきたケイスケはケーキをじっと睨んでから、
「キミカちゃんの誕生日なのですかォ?!」
と興奮気味に言う。
一瞬、テーブル席に座っているほぼ全員へと緊張が走る。もちろん、こんな中で緊張しないのはコーネリアとメイリンのバカ2名だけだ。話の流れから俺の誕生日は口外してはならないとなっているのに、
「Ye…」
コーネリアのバカがYesと言おうとしたその時、
俺はコーネリアの口を人差し指と親指で掴んだ。
タコのような口になったコーネリアはなぜその状況になったのか、話の流れを掴んだようで、「HeHe…He…」と苦笑いをしてから、
「私ノ誕生日ナノデース」
と言った。
ケーキを睨むケイスケ。
もちろん、そこには『HappyBirthday to Cornelia』の文字。
つまんなさそうな顔をしてケイスケは言う。
「そうなんですかぉ、てっきりキミカちゃんの誕生日かと思ってしまったですにぃ…。ところでキミカちゃんの誕生日はいつですかにゃん?」
この野郎…やっぱり聞いてきやがったか。
「そ、そんなの知ってどうするんだよ?」
俺は落ち着いたふりをしてケイスケに聞く。
「もちろん決まってるじゃないですかにぃ…誕生日1ヶ月前からオナ禁して誕生日の朝にキミカちゃんの上履きに真っ白のアレをたっぷり掛けてあげるんですぉ…フヒヒ…ボクちんの愛の篭ったプレゼントd」
俺はブレードを引っ張りだしてケイスケの股の間に突っ込んで、あと5センチ上に上げればグラビティブレードの創りだしたブラックホール内へとケイスケの金玉及びチンコが吸い込まれるところで寸止めした。
「な、何をす、するんですかにゃん…」
「元を断つ!」
「やめてくださいですぉ!!!冗談に決まってるじゃないですかにぃ…フヒヒ…キミカちゃんは冗談が通じないんだからァンもぅ〜」
とケイスケはガタガタ震えた手で俺の肩をぐいと叩いた。