132 孤高のヒーロー 8

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そう叫び声をあげたのはマコトだった。
マコトはテレビを見ながらモニターをガシっと掴むと今にも壊しそうな勢いでガタガタ震わせていたのだ。
「マコトォ、見えないよ…」
「キミカちゃんはコイツの顔は見なくていいよォ…(白目」
「何が映っていますの?」
マコトに質問するナツコ。
ある日の朝だった。
ニュースを見てて突然マコトが発狂したかのようにテレビにしがみついたのだ。いや、発狂してたね、ありゃぁキチガイの顔だわ。
そのすき間から見えたのは数日前、俺が小倉で戦った際に遭遇した『前なんとか』という議員だった。インタビューに答えている姿が映っている。
「何のニュースなのかな?」
と俺が言う「何の」の時点でマコトが白目のまま、
「前なんとかによく似たドロイドバスターがキミカちゃんに馴れ馴れしく話してるから、全国のキミカファンクラブが前なんとかの事務所に押しかけて放火した騒ぎが起きたんだよ!!当然の報いさ!」
キレ気味で、いや、キレながらマコトが言った。
「っていうか、前なんとかと前なんとかに似てるドロイドバスターって同一人物じゃないかもしれないのに、放火騒ぎだなんて」
「同一人物かどうかなんてどうでもいいんだよォォ!!全国のドロイドバスター・キミカファンを怒らせるには十分過ぎる材料なんだよォォ!!そして、ボクも今、魂を震わせてるよォォ…(オーラ)」
どうしちゃったんだよ、ほんとに。
「なれなれしく話しただけで放火だなんて。今までもスカーレットとか馴れ馴れしくあたしに話し掛けてきたけどなぁ。スカーレットに似てる蓮宝議員の自宅とかは放火されることはなかったよね」
「キミカちゃんンンン…それはスカーレットが女だからだよ…」
「ふぅーん…」
「そ、それに!!」
「?」
「これだよぉ!これェ!!」
マコトは録画していた何かの番組をテレビから呼び出して俺に映像を見せようとしてるっぽい。映像開始位置を手こずりながら…どうも先日の小倉での戦闘中、カメラが捉えた映像についてのようだ。
そしてそこには、当然ながら前なんとかと俺がちょっと近づきすぎじゃないのかって位置まで近づいて話している映像があるのだ。見れば前なんとかは俺の斜め後ろから耳元に向かって話し掛けるような感じ。あの時はそうは感じなかったのは前なんとかが話した破廉恥な内容のストーリーが俺の頭の中で妄想としてグルグル渦巻いていたからか、気にもしなかった。
しかし、前なんとかが興奮した真っ赤な顔で俺に話しかけていると、もちろん、その会話の内容まではカメラには収められることはないのだが、みるみるキミカこと俺の顔が真っ赤になってモジモジ腰をくねらせているのがわかるのだ。
「こ、こレが、どゥしタの…(震え声)」
「キミカちゃんが前なんとかの話を聞いて興奮してるシーンだよォォ!」
「えェ?そンなコとないョ?(震え声)」
「こうやってキミカちゃんが腰をモジモジさせるときは感じてる時なんだ!」
「「…」」
マコトとナツコが顔を赤くして俺のほうを睨んでいる。
「な、なんだよォ…」
「何を言われたんだよォォ!」
「いや、だからその、アレだよ。男性のアレを女性のアレが包み込む時は、ちょっと中身が膨らんで、優しく包み込むとか、そんな話を、」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ヒィッ!」
ナツコは顔を真っ赤にしてうずくまり、マコトは興奮で顔を真っ赤にして言う。
「なんで戦闘中にそんな話になるんだよォ!」
「いや、だからその、前なんとかって人があたしのことを前から好きだったとか?前だけに。前から好きだったとか言い出して、それで男性のアレが女性のアレに包み込まれる時は、なんだか潤滑油みたいなのがでてきて」
「うわぁぁぁぁ!!キミカちゃんが好きなのと、その潤滑油がどうのこうのって話の飛躍が凄すぎるよォォ!!!なんでそこにジャンプするのかなぁ?!」
「そして女性のアレが男性のアレを咥え込んだら最後、子宮口がちゅちゅちゅちゅと先っぽの方を…(ゲス顔」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「別にあたしはアイツに興味なんてないからね」
「そんな事言ってもボクは知ってるんだ…」
「え?」
「あの日、キミカちゃんが戦闘から戻ってきてから狂ったようにオナニーしてたこと…」
「べ、別に狂ったようにオナニーしてるのはいつもの事じゃんか…」
とソレまでうずくまって話を聞いていたナツコは「いつもの事なんですの…」とツッコミを入れた。
「うぅ…きっと、キミカちゃんはあの日、前なんとかに色々卑猥な話をされて、家に帰って真っ先にその卑猥な話を想像しながら自分のあそこが男性を迎え入れるのに最適な状態にさせながら、迎え入れるのを想像してオナニーしていたんだ、そうだ、きっとそうに違いないよォォ(黒目)」
「ないないない!ないってば!どっちかっていうと自分が迎え入れられたい?みたいな?とにかくあたしが迎え入れるような事とかないから!受け身じゃないから!どっちかっていうと責め派だから!」
「とにかく!ボクは次の戦闘はついていくからね!」
「え?あ、そう…別にいいけど」
「前なんとかがまた現れたら…その時は、コロス…」
いつになく興奮状態のマコト。
と、そんな時に、なんかバッドなタイミングで緊急呼び出しが俺のケータイに。例の『スター・ウォーズの帝国のテーマ』とともにやってくるのだ。もう軍からの電話ってのは確定だった。
「もしm」
俺がaiPhoneに出ようとした瞬間、凄まじい速さで俺からaiPhoneを奪って代わりにでるマコト。
「もしもし!はい!出撃しますから!はい!」
「えっと…」
「キミカちゃん!出撃だよ!一緒に今度こそ倒そう!」
「う、うん」
「前なんとかを!」
おいぃ…ターゲット変わってるよォ…。