132 孤高のヒーロー 5

昼過ぎにコーネリアが学校へと戻ってきた。
戻ってくるなり俺のもとへと近寄ってきて、俺は何が起きるのか察知して机から立ち上がって逃げる。そしてそれを追うコーネリア。
授業中の教室で2人鬼ごっこが始まる。
コーネリアが「Fuuuuuccccckkk!!!」と叫ぶ。
「HeHeHeHe…」と俺は息を切らして言う。
先生(数学)は呆れ顔で、
「コーネリア。席につきなさい…何を興奮しているんだね」
と言う。
落ち着きのないオランウータンのように教室をウロウロしていたコーネリアだったが、「Damn!」と発した後、渋々、自らの席に座る。
俺も安心して席に座る。
次の瞬間、立ち上がったコーネリアは俺の席に向かってダッシュ、しそうになるのを止める。俺はビビって椅子から転げ落ちる。
「コーネリア!」
また数学の先生が怒る…。
というやり取りを俺とコーネリアが数学の授業の間繰り返した…。
先生の質問に答える最中にも襲ってきたし、プリントを配っている最中にも、メールでも「Heeeeyy…」というSubjectで送ってきたし。
授業が終わってから、
「キミカノセイデロクデモナイ事ニナリマシタァ!」
と俺に向かって叫んだ。
「しょうがないじゃん、米軍が協力することになったんだから!っていうかコーネリアが調子に乗って街を壊すから上官に怒られるんでしょォ?」
「壊サズニイラレナイィ…」
目を血走らせて指をワサワサ動かすコーネリア…。
「…ということは、次はキミカが出撃するのか」
キリカが言う。
「ん〜そうなるね!」
「私も一緒に行こうか?」
「え、マジで?」
キリカもドロイドバスターではあるけど…戦闘向きかと言われるとどうなんだろう…なんかバレーすらまともにできなかったから運動神経は悪そうだし。
「大丈夫…この蛇王心眼があれば、」
神羅眼じゃなかったっけ…」
神羅眼は覚醒第一段階。蛇王心眼が第二段階」
「第三段階には万華鏡写輪眼、第四段階で輪廻眼が出てきそうだね…」
「なぜわかった…やはり、闇の者…そのフェイトを司…」
「あーはいはい、君はお留守番ね」
「なんで!」
「バレーもまともに出来ないんだから戦闘中に野垂れ死にそう」
「うー!!」
地団駄を踏みそうになるのを堪えるキリカ。
その時だった。
「んん!!」
俺のケータイ…aiPhoneから『スター・ウォーズの帝国のテーマ』が流れる。これは軍から電話がかかってきた時に流すように設定してある着信音だ。
おっぱいの間からaiPhoneを取り出して耳に当てて応答する。
こ、この声は…
誰?
軍の関係者っぽい。回線は軍の回線だし…。
「キミカちゃん?もしかして…」
「ぎゃー!」
「電話かかってきた?」
「マコトにはかかってきてないのになんで…」
今まで呼び出しはマコトと俺に『電脳通信』で行われてたのに、今回はケータイから着信だ。しかもマダオミサトさんからじゃない、軍のオペレーターの人からだ。どうなってんだよォ…(白目)
「キミカト私ガ正式ニ南軍ノサポートニ回ル事ニナリ、外国人ノマコトハ正式ニ外サナイトダメダトカ、言ッテマシタネェ…」
「マジで?!」
えっと、つまり、上(政府)から正式に米軍のサポートをしてもらうよう要求することになると、今まではっきりしてなかったマコト(外国人)のサポートは正式にしないようにしておかないと、後々、色々と問題になるって判断なのか?
あと司令官やそのサポートがお友達みたいに馴れ馴れしく俺の直接電話をかけてきて「今から出撃してー」って言うのもダメってことなのかよ!
律儀すぎるだろうがぁぁぁぁ!!
いいじゃん別にぃぃ!!!
「キミカちゃん…ボク、家でご飯作って待ってるから…」
「ヌゥゥ…」
「イッテラッシャイマセー!!」
くそぉ…。
しかも一日に2度ってパターンは無かったぞ、今まで…。
「くっそぉ…」
チャイムが鳴り授業が始まる。
と、そこでケイスケが教室に入ってきて、
「キミカちゃん、まだ教室に居るんですかぉ?」
「ま、まだって…!!」
この野郎、知ってるのか、俺が呼び出し食らってるってこと!
「い、今から行くところだよ!今から行こうと思ってたの!」
「ちゃちゃっと終わらせて授業に戻ってくるべきですにぃ…学生の本分は勉強!!」
「こォンのヤろぅ…」
不思議そうな顔をする『事情を知らないクラスメート』達をよそに俺は廊下へ駆け出して、窓から空へとダイブした。
決して投身自殺するわけじゃない。
そのままドロイドバスターへと変身して、空へと飛び上がった。