132 孤高のヒーロー 2

一旦は会議は解散。
司令室に残ったのは主要メンバーであるマダオ、ケイスケ、ミサトさん、ハリー、そして俺の5人。それらがホログラムディスプレイに表示されている2chのスレッドを見ているという違和感を覚える光景。
「とりあえずスレッドを立てますにぃ」
もうすぐにでも作戦を実行したそうにしてるケイスケ。
「準備しなくてもいいの?」
と俺は聞いてみる。
スレッドを立てたからといって、そこに書き込むなり写真をアップロードするなりにも時間をとらされるから、あちゅうまに時間が経過して「お流れ」になる可能性もある。
「らぁぁぁぃいじょうぶ、らぁぁぁぁぁぁぃいじょうぶ」
「ほんとかなぁ…」
ケイスケは素早い手つきでスレッド名を入力する。
タイトルは…
『おいwwwww修羅の国ヨハネスブルグみたいになってるwwwワロタンゴwwwwwwwww』
おいおいおい…。まぁ確かに、人に見てもらうにはインパクトのあるタイトルが必要だけど…ねぇ。
そしてその最初のメッセージは、
『ンゴンゴww<福岡銀行前で多脚戦車が暴れている写真>』
いいのかよ…こんなノリで…。
「ちょっと不謹慎すぎやしないか?」
それを見たマダオが言う。
「これぐらいのノリじゃなきゃ誰もこんなクソスレ見ないにぃ!」
いや、クソスレでも事実なんだけど…俺は命の危険を犯しながら戦ってるんだけどォ?
淡々とメッセージ書き込みや写真のアップロードをしているケイスケ。ご丁寧にも軍の回線ではなくてプリペイド式のルーターからの送信だ。送信元が軍だと困るからだろうけども…別に犯罪してるわけじゃないんだからそんなに慎重にならなくても。
しばらくはなんら書き込みはないから、ケイスケだけの書き込みが並んでいた。それらは福岡銀行前で強盗団が金を運び出している状況から始まってスカーレットがそれを指示している写真やら警察のドロイドを木っ端微塵に破壊している写真、逃げ惑う警察、立入禁止テープ前でケータイで写真を撮ってる民衆、軍のドロイドが強盗団どもを肉塊に変えている写真、逃げ惑う強盗団、軍のドロイドを破壊するスカーレット、そしてそこで登場するドロイドバスター・キミカ(俺)、罵り合う二人、スカーレットに攻撃を仕掛ける俺、トラックの荷台を貫通してブティックに突っ込むスカーレット。
「ちょっと様子を見てみますにぃ」
しばらく「すげぇwっ」「修羅の国ワロタwww」「おいおいおい…前からそうだったけど、今こんな事になってるのかw」「思った以上にヨハネスブルグでワロタンゴwww」「警察はもう飾りみたいなもんだなこれは」「お隣の国は酷い状況のようで…」「↑大阪民国の奴がなんかっ言ってる」「↑大阪でもこんなに酷くはない」…などなど、予想していた反応が返ってくる。
でもいまいちインパクトを感じてないっぽい。
総じて言うのなら『いつもの修羅の国だね』と、まるで何度も何度も見ている吉本新喜劇の1シーンを見ているかのような反応だ。
楽しいか楽しくないかと問われれば『楽しい』けど正直に言うのなら、少し『飽きた』という感じ。
「やはり一般市民が犠牲になっていないからか『他人ごと』のように受け止められている感があるな」と渋い顔で言うハリー。
「それなら一般市民を犠牲にしてやればいいですにぃ」
「ん?」
ケイスケは自らのネットワーク共用フォルダを開く。
そこには『グロ中尉』というタイトルが書かれてあり、中身には遠目には赤のような黒のような写真が並んでいる…嫌な予感がするぞ。嫌な予感しかしてこないぞォォ!!
「うわッ…なにこれ…」
口を塞いでその写真を見ているミサトさん
「ケイスケにこのような趣味があったとは…幻滅したぞ」
呆れて物も言えなさそうなマダオ。言ったけど。
「これはボクチンのフォルダじゃないですにぃ!」
「え、じゃぁ誰のふぉ…」
俺がそう聞きそうになったとき、一人の人物の顔が浮かんだ。
ナツコだ…。
ナツコのフォルダだコレェェェッ!!!
ちなみにグロ中尉なので詳細をモノローグにすら出したくないのだが、どんな写真をアップするのかイメージが沸かないと思われるので仕方なくモノローグにすると…。
「市民の中に爆弾が放り込まれて民衆が肉塊と化している最中の写真」「戦車に轢き殺される中国国旗を持った人の写真」「ガソリンスタンドの上から吊るされているマフィアっぽい人達の写真」「レイプされた後に草むらで殺されて転がっている人の写真」「首を切断されて切断されたチンコが口に突っ込まれている写真」「何らかの病気で産まれてくる子供が奇形であるのが明らかにわかる写真」「頭が3つある鹿の写真」「UFOの写真」などなど。
もう最後の辺りは修羅の国とか全然関係ない写真になってる。
それらを淡々とスレッドに貼り付けていくケイスケ。
放置して再び反応を見てみる。
「おいおい…」「グロ中尉」「なんだこれwwwww」「笑えないww」「おいおいおいおい!!」「なにこれ、怖いから見てないけど、何が写ってるの?」「↑頭が3つあるケルベロス状態の鹿」「キメェwwwワロタンゴwwww」「もう修羅とか関係ないな…」「ちょっ、これ全然関係ない写真じゃん…」
バレてんじゃん!
「適当な写真を並べているだけではダメだと思うのだが…少なくとも日本人じゃないとダメだろう」
「やっぱりですかぉ(テヘペロ)」
ったく、テヘペロじゃないよ、本当。