131 スカーレット星人 2

黒い玉のメッセージの後、俺達の目の前でさっきまでマンションだかアパートの一室だった部屋の壁が燃えて消え去っていく。
なんという特殊効果だ。
ゲームにしたら滅茶苦茶カッコいいだろうな、なんて思っていると壁の向こうの景色が…静まり返った街が現れたのだ。
「ドウナッテルンデスカ?」
人は居なくなっており、車も放りだした状態。信号機だけは無人の街で赤と黄色と青に切り替わっている。
その時、中国語で叫ぶ声が聞こえたのだ。
「撃ってくるぞ!」
メイリンはその意味がわかっているのだろう、矛を地面に突き立てて結界を張るようにエナジーフィールドを展開した。目の前で銃弾がフィールドに食い止められる。
「Bomb!!」
コーネリアがそう叫ぶと銃を撃ってきた中国人達の隣の自動車が爆発し、数名を吹き飛ばし数名を肉塊にした。
その時だ。
その吹き飛ばされた中国人のテロリストっぽい連中の頭の上に数字が出ているのだ。これは電脳へ直接送られてくるようだ。
点数か?
これ点数が入ってるのか?
「Yeah!5Point獲得デス!」
「そ、そうか、これだよキミカちゃん」
「ん?」
「100点取った時のメニューだよ!テロリストを倒せば倒すほど特典が入って100点を満たせばあの黒い玉の100点メニューのどれかが手に入るんだよきっと!」
ふむふむ。だと思ったよ。
「Yeah!!!もう10PointGetデスネ!」
「おいやめろ!私が先、100点取る!」
コーネリアとメイリンは我先にとテロリストがいるであろう銀行へと向かって行く。メイリンは残念ながら徒歩で、コーネリアはグラビティコントロールで空を飛びながら。
俺もマコトもヤル気を出していざテロリストどもがいる銀行を狙って突撃しようとした矢先だった。
「アホ臭いニダ」
そう言ったのはソンヒだ。
「まぁソンヒは財布持ってないからなぁ」
「新しい武器貰えても全然嬉しくないニダ!賞金が欲しいニダァ」
あぁ、そうですか。
「じゃあどうするの?見とくの?」
「ウリは家に帰らせてもらうニダ。今日はウジテレビで5時間ぶっ続け芸人お笑い選手権をやってるニダ」
ったくヤル気がないなぁ。
ま、どうせ戦力にはならないだろうから別にいっか。
ソンヒはそのままテロリストがいたと思われる地点とは真逆のほうへ向かって歩き出した。公共機関も全部止まっているらしく、徒歩で帰るしかないらしいな。
よし、気を取り直して…。
と俺はソンヒから目を逸らしていざ出陣、しようとしたその瞬間、ソンヒのメイド服が下着ごと全部吹き飛んだのだ。
「ニ、ニダァァァアアァァァッ!!」
「う、うわぁぁぁあぁぁぁあ!!!」
全裸で転げるソンヒ。
「ど、どうなってるにだァ!!(号泣」
「き、キミカちゃん、これって…?!」
「そ、そうか…途中で任務を放り出すからバチが当たったんだ。つまり…戦闘区域から離れたら服が全部裂けてしまう仕様っぽい」
「そんな糞仕様考えた奴は誰ニカ!謝罪と賠償を請求するニダ!」
手でちっさなおっぱいを隠し、もう片方の手では股間を隠して顔を真っ赤にして叫ぶソンヒ。
「と、とにかく。任務を終わらせるしかないよ。全裸になりたくなければね…」
「(ゴクリ…)」
「マコトは向こう側から攻めて。あたしは正面から」
「ちょっ、ちょっとまってよキミカちゃん。正面のほうが敵が多いよ!絶対キミカちゃん高得点を狙ってるでしょ!」
「え…」
「ボクが正面に行くよ!女の子にこんな危険な任務を任せちゃダメだとずっと前からボクは真面目に思ってたんだ」
「わかったわかった。いってら」
全裸のソンヒをおいて、俺とマコトは戦闘区域の中心部へと向かっていった。
銀行の正面からはマコト、俺は裏側の商店街のほうを抜けてから裏から侵入することにした。実は正面よりもこっちのほうが敵と遭遇する確率が高いのだ。もし、連中が脱出口として裏口を計画していたのなら、おそらくは地下道へと繋がる場所に…。
いたいた。
スカーレット一味は毎回同じ手段を取るんだよな。
金は地下道を経由して運ばれるのだ。ああやって、マンホールに向かってレールが敷いてあってスーツケースがスースースーと運搬、その先の地下には連中が運搬に使っているドロイドがいるわけだ。
お。出てきたぞ。
そのチャイニーズの野郎の頭に狙いを定めて、
(パスン)
プラズマライフルの音が響く。
チャイニーズの頭が炸裂。3点。
連中め、慌てて荷物を運び出すルートを変えようとしているようだ。マンホールの蓋が閉まった。
俺は急いでマンホールへと飛ぶ。
グラビティコントロールでマンホールの蓋を開ける、その時だ。
何か黒い塊のようなものが俺の顔に直撃した。
正確には顔の前でバリアが発生して防御したものの、その一撃でバリアが80%も消失するという惨事。
「シャーァァァァァンナロォォォ!!!」
こ、これはスカーレット!!
言うが早く俺の頬にバリアを貫通したスカーレットのアルティメットハンマーパンチが炸裂した。
さっきの黒いのが銀行から盗んだ金が入っているスーツケースだというのは、俺の目の前で粉砕されたソレから舞い上がる札束の雨を見て解ったのだ。
「毎度毎度、ウザいのよアンタは!!」
ゴギゴギと手を鳴らしながらスカーレットが俺に歩み寄ってくる。
例の黒い玉がスカーレットの上に特殊なマークを表示させてくる。そこには『スカーレット星人』と表示されており、下にはなんだかHPのパラメータグラフがズラズラと並んでいるのだ。
これって、残りライフかよ?!
「100点貰ったァ!!」
グラビティブレードを引っ張りだすが早く俺の剣捌きがスカーレットのバリアをどんどん減らしていく。HPのパラメータグラフもどんどん減っていく。
「何が100点よ!そんなに100点取りたきゃ小学生からやり直せ!」
と、スカーレットの直前で俺のブレードをが止まる。
「おぉぅ?!」
バリアか?!
バリアで俺の腕を掴んでるぞ!!
「ォラァ!!」
スカーレットが叫んでその大根のような大根足が俺の胴に直撃した。バリアが貫通され、衝撃で俺の身体は台風で舞い上がる樹の枝のように空高くへ跳ね上がった。
そして、車のフロントに着弾した。