130 新しい朝がきた。希望の朝が 6

「というわけなんだよ〜」
と俺は今までの経緯をキサラに話していた。まるでドラえもんのび太が話すかのように。
これまでの経緯として…
疲れて授業を途中で抜け出して部室でグーグーと寝ていたのだ。
するといつの間にかキサラとソラがやってきて、俺は、
「授業中でしょ?何やってんだよ…」
と言ったのだ。
もちろん反論される。
「あんたこそ授業中なのに何やってんのよ!」
「寝てるんだよ見ればわかるでしょ!!」
「寝るな!!」
「だいたいあたしは授業サボってるだけだけど、キサラ『センセイ』も授業サボってるの?ソラと一緒にここに何しにきてるの?」
と俺はソラとキサラを交互に見つめると、ソラは顔を赤くして俺から目を逸らして空のほうを見ている。ソラだけに空を見てる。一方でキサラのほうはニンマリと笑いながら、
「知りたいぃ?」
と言っている。
「はッ…ま、まさか」
おいおいおいおいおいおい!!!
う…s…だろ…?
うそ…だろぉ?!
嘘だろ?!
嘘だと言ってくれよママン!!
「ニッシッシッシ…」
「はゎゎゎゎ…」
今気がついたけど、ソファで俺、寝てたんだよ。疲れてたから…いや、まさか…でも、なんていうかその…この部屋で…その、『する』ことが出来る場所って…ソファぐらいしか…ないじゃん?しかもなんかこのソファーって結構いい匂いがするんだよね、女の子の香水のにおいのような洗いたての服のような臭いとか…。
精液の臭いも…。
「え、ちょっ、まさか…学校で…嘘…でしょ…」
「クックックック…」
「うわぁぁぁぁあ!!!!」
俺は慌ててソファから飛び退いてその勢いのまま叫んで部屋から出ようとすると、その両肩をがっしりとソラが掴んで言うのだ。
「(しぃー!!)」
「ふ、ふけつゥ!!」
「お、おい、あんまり大きな声を出すなよ!」
「いやぁぁあぁあぁぁぁ!触らないでぇ!」
こいつら…。
学・校・で・セ・ッ・ク・ス・し・て・や・が・る!
ソラはキサラに向かって言う。
「おい!バラすことないだろうが、わざわざ…」
「いいじゃないのよ、面白そうだし」
「ほらほら、泣いてるじゃないか」
俺は泣いていた。
この…。
この……。
リア充爆発しろォ!!」
「なになに?非リアのキミカちゃん、あんたも交じるゥ?」
「うるさい!…ちょっとまって、このソファのどのあたり?どのあたりに精液落としたの?やばいよ、あたしの腰がそのあたりにあったら妊娠しちゃうかもしれない!やばい!」
「おいおい!それはありえないだろ!」
ソラが怒鳴る。
「いやぁぁあぁあぁぁぁ!ソファ新調してよォ…」
「ちょっとソラの精液を汚いものみたいに言わないでよ」
キサラが少し笑いながら俺に言うのだ。
「くんくん…くんくん…このあたりから精液の臭いがするから、このあたりにキサラのおしりがあって…そしてここで正常位で中出し…したということか…くんくん…キサラのあそこの臭いもここから…」
「ちょっ、やめてよ!!」
「ぺろぺろ」
「忘れてたわ!こいつレズなのよ!ちょっ、何股間弄ってるのよ?!やめなさいよ学校でオナニーとか!こらー!」
さて。
落ち着いたところで。
そこでキサラに何故寝るような事になったのか事情を話したわけだ。
最近スカーレットというドロイドバスターの盗賊野郎が銀行を襲ってそのたびに軍に呼び出しを食らうので殆ど寝れないっていうこと。メイリンとソンヒという特定アジア組に手伝ってもらったけど途中で報酬の話になって戦闘に集中してなかったこと。
キサラはうんうんと頷いてから、
「まぁメイリンもコーネリアも外国人なんだから律儀にルールに従ってくれと言っても従わないわね。お金も出さないで手伝ってくれと言ってもそんなのに素直に従うのは日本人ぐらいなものでしょ。外国人はGive and Takeでしか話は通用しないものなのよ。っていうか、それが国際標準。ある意味シビアなのよ」
と説教するように言った。いや、実際、説教以外の何物でもなかった。クッソガァ…言わせておけば。
「はいはい、すいませんでしたぁ…」
「そこで契約よ!」
「契約なんて通じるのはコーネリアだけじゃん。メイリンもソンヒも契約の概念が存在しない国出身だよ?」
「いい?人ってのはシチュエーションに縛られる動物なのよ?」
「はぁ?」
「契約は契約したっていうシチュエーションが大切なのであって、契約書はそのシチュエーションを思い出す材料に過ぎないのよ。つまり、自分は戦わなきゃいけない、そして戦えばそれに見合う報酬が与えられて、実力をあげたらもっと報酬が増える、っていうシチュエーションを提供してあげればいいのよ」
「ふむふむ…それはどうやってやるの?」
「その前に…あんた軍からお金は貰ってるの?」
「あぁ、うん、報酬を貰ってるよ」
「あんた、手伝って貰っておきながらその報酬を分け与えてないんじゃないでしょうね?」
「え〜…いいじゃん別にあげなくても。あたしも無償で働いてるって事にしときゃいいじゃん(ゲス顔」
「…ゲスィ…こいつゲスくせえッー!ゲス以下のにおいがプンプンするぜッーーーッ!!」
「ぬぅ…」
「ちゃんとそれも分け与えなさいよ!それでシチュエーションを与えれば人はやる気になるものなのよ!」
「ふぅ〜ん…シチュエーションってどうやって与えるの?」
「ん〜…まぁ、そこは私に任せておいて」
キサラはぽんと俺の肩を叩いた。
「ちょっ、やめてよねー(キサラの手が触れた部分を払う)ソラの精液がついた手で触らないでよ」
「まだ今日はエッチしてないからついてないわよ?」
そんな二人のやり取りを見ていたソラは情けない表情で、
「おい…俺の精液は病原菌か何かかよ…」
と言った。