130 新しい朝が来た。希望の朝が 3

北九州の小倉。
駅上空。
ターミナルの2キロぐらい手前のトンネル付近で電車はストップ。そこから先はテロが発生しているため(法律上)進めない。
夜の綺羅びやかな繁華街にチカチカと花火が咲いたがそれがドロイドのプラズマディフレクターが作動していると考えると不気味だ。
軍と警察、それから中華系テロ組織が戦闘を行なっている。
軍が介入出来るのは住民の撤退が完全に終わってからだが、それがうまくいっていないようで、十分な火力を持っているはずの戦車が待ちぼうけさせられている。そもそもここいら近辺は普段から治安が悪くて、俺が知る限りではスカーレットの関連企業やらヤクザやらの巣窟になってるはずだ。それなのにスカーレット傘下のテロ集団が街を襲っているというのはこれいかに。内部分裂かぁ?
とにかく、そんなヤーさんやら浮浪者達がウロウロとしている繁華街だ、そう簡単に住民の避難が終わるはずもない。いつもそういう痛いところを突いてくるのだ。
『各部隊に通達。エヴァンゲリオン初号機が到着した』
マダオのクソ電脳通信だ。やめぃっちゅぅの、その呼び方。ほら、クスッって笑われてるじゃないか部隊の連中に!!
マダオ、あたしはエヴァンゲリオン初号機じゃないよ』
『2号機がいいのか?』
『そういう問題じゃなくてエヴァンゲリオンが嫌なの』
『ではなんと呼べばいいのだ…』
『いつも「キミカ君」って呼んでるじゃん!!それでいいよ!!』
『しかたない。「キミカ君」到着が遅いぞ』
ったく、開口一番にそれかよ。
『こちとらぶっ飛ばして来たんだからね。あんまり飛ばしすぎてスピード違反の切符を切られそうになったよ』
『そもそも無免許で運転してはならないというツッコミと、空を飛んできたのに違反切符を切られるという矛盾に対するツッコミの2段重ねか。ふむ、なかなかよく考えたものだ。20点だな』
『それで、敵はどこにいるの?』
『駅の構内に20名とドロイド多数、それから風俗街に10名…こちらは戦車タイプのドロイドが陣取っている』
『あーくっそぉ、また2個に分かれてきたかぁ!』
『そういうわけだ。またマコト君とキミカ君で別れて戦ってくれないか?』
『ふっふっふ…それが今回は助っ人がいるんだよね』
『?』
どうやら本部からは俺が助っ人を呼んだことは把握出来てないらしい。まぁいいだろう、今日はいつもとは違うからな。
戦力差が。
「え〜…というわけで、今日はこれよりテロリスト退治ごっこを行います。街にはびこるテロリスト集団を退治しましょう」
マコトは既に何をするのか知ってるからOKだ。メイリンも事前に話をつけてるから俺がそう話してもなんら反論するわけでもなく素直に従った。問題は…。
「な、な、何をするニカ?テロリスト退治ごっこ?」
「えっと、つまり、この小倉の街をテロリストどもが荒らしているわけだよ。金銀財宝を求めてね。そいつらを片っ端から倒していくの」
「それをやって何が楽しいニカ?」
「何が楽しいって…そりゃ、正義の味方気分を味わえるじゃん」
「き、気分だけニカ…」
「う、うん…」
何か言いたそうではあったけれども、メイリンがマコトと一緒にさっさと駅のほうへと行ったのを見てソンヒもヤル気を出したようだ。
「んじゃ、あたしとソンヒが風俗街ね」
「中国人を皆殺しにすればいいニカ?」
「いや…そうじゃなくて、銃を持った奴を皆殺しにして」
「任せろニダ!」
言うが早くソンヒは地面に手をつけてそこから物質変換を行う。バイクのようなものが地面から生えてきた。そして目の前にはタイヤ部分が反重力コイルになった軍用のバイクが作り出される。しかもコーネリアと違って目が赤いのでおそらくは物質変換の能力のほうが強いんだろう。構造さえ理解してれば結構な速さで作れるらしい。
そのバイクに乗ったままソンヒは風俗街へと突入していった。
このまま任せてもいいなんてちょっとだけ思ったけど、やっぱりダメだ。あいつが滅茶苦茶しないように見はっておかないと。
グラビティコントロールで飛び上がってビルの上の破廉恥な風俗看板の辺りから落下。投身自殺者も真っ青の速度でアスファルトに着弾して、周囲に居たテロリストどもに破片を飛ばす。もうこれだけで結構バリアを弾けるんだよね。バリアをしてない奴はこの一撃で砕けたアスファルトの破片で身体が穴だらけになって死亡だ。
中国語で何か叫んでいるが『キミカ』というキーワードが聞こえたから連中は俺がくることも予測していたのだろう。対処まではしてないみたいでただ逃げまわる。
破片を受けてもまだ動いているドロイドを蹴り飛ばして逃げ惑う中国人テロリストどもにぶつける。間髪入れずにレールガン掃射。
反対車線の道路にあるトラックの荷台から次から次へと銃を持った連中が現れる。そこにもレールガン掃射。トラックの荷台がアルミホイルのようにクシャクシャに変化していく。荷台から出てきた連中は路肩の車の裏から俺に向けて銃を放つが、それを俺はブレードで弾き飛ばす。
弾き飛ばしながら俺が見たものはクシャクシャになったトラックの荷台からドロイドを手動で運び出すテロリストどもの姿だ。
って、手動ゥゥ?!
なんか電源をどうやって入れたらいいのか議論しているようだ。
と、そこへソンヒのバイクがあらわれてその連中の頭を見事に撃ち抜く。死体が転がる。
「ウェェーッハッハッハ!!キミカが殺られそうだから助けてあげたニダ!感謝するニダァ〜!」
「今のはドロイドの電源すら入ってなかったじゃん!」
「ぷぷぷぷ」
ヌゥゥ…。
と、その時だった。
いつものアレが飛んできた。
いつものアレ。
スカーレットのエナジーフィールドを帯びたラリアットだ。