130 新しい朝が来た。希望の朝が 1

「どうしたのよ?最近、元気がないじゃないの?」
そう俺に聞いてきたのはユウカだった。
そう、最近、元気が無い。
俺もマコトも疲れているのだ。
しかし何故疲れているのかを思い出すとまた怒りで疲れてくるのであまり思い出したくはない。
「ん?…んん〜…」
と返答を濁らせる。
「マコトちゃんも疲れてるのね?二人共家で何してるの?」
首を傾げてそう聞くユウカにナノカは、
「二人共夜の営みを頑張ってるんだよ!」
などと言う。
「え、ちょっ、なにそれ…またレズ系の話?やめてよね、いちいち反応するのが面倒くさいのよ。私を辱めようとしてやってるんだと思うけどねぇ、なんか飽きてきたのよね。レズネタ。たまにはホモネタとかかましてくれてもいいのに」
かまさねーよ。
それはクラスに数名はいるであろう腐女子に任せてくれよ。
「ボクとキミカちゃんは…日々、正義の為に頑張っているんだ…」
疲れ果てたマコトが疲れた声で言う。
「正義の為ェ?」
と『あははー』とでも言いそうな表情で言うユウカ。確かに俺は正義がどうとかそんなのはどうでもよくて、ただ街を荒らすようなカスにはカス相応の結末を与えてあげようと思っているだけだ。それを正義だと言うのなら子供には有害なので放送禁止になるであろう。
俺とマコトは連日、軍からの呼び出しで疲れ果てていた。
警察と軍が共同で街を防衛しているにも係わらず、その間を狙って夜間に銀行や宝石店などを襲っているのだ。
誰が襲っているかって?
スカーレット(かす)に決まってんじゃん。
奴は必ず現れるというわけでもないからこれまた難しい。どれぐらい難しいかって言うとダンジョンで希少モンスターが現れて、それだけでも珍しいのに殺してもアイテムを出す確率が超低いっていうぐらいに難しい。しかもこのアイテム手に入れてもレベルが上がるとそれよりもさらに強いアイテムがあるわけだから、結局「あぁ、珍しいね」って言われる程度の難しさ。
「キミカちゃんは…ボクが守るから…だから…Zzzz」
寝た。
マコトも相当疲れているみたいだ。
何とかしないといけない。
「それよりさ、街でキミカを見たのよ!!」
え…?
「はぁ?あたしをぉ?」
「いやそうじゃなくて!キミカよ!キミカ!!」
「だからあたしを見かけたって事でしょ?」
「あんたじゃなくて男のキミカよ!」
いきなりなにを言っt…
男のキミカ…。
やべぇ…そういえば前にキリカのアカーシャクロニクル・パラダイムシフトの能力で俺は男の時の姿に戻って、しかもその時にユウカに見つかってしまったのだ。
「そ、ソぅなンだ…」
「あれは絶対にキミカよ!知らない女の子と一緒にいた…」
「き、キのセィじゃナぃ?」
「気のせいなんかじゃないってば!こっちみて少しビックリした顔になったし!」
やべぇ…バレてたァァァぁゎゎゎゎ…。
「そ、ソれはユゥカがカゎぃカっタかラじゃナぃ?」
「あんたさっきからなんで震えてるのよ?どうしたの?熱でもあるんじゃないの?」
それはお前のほうだ!
俺はユウカの肩をぽんと叩いてから声を落ち着かせて、
「キミカは死んだんだよ。お葬式だってしたじゃん?なんで今さら現れてるんだよ(震え声」
震えてそう言った。
「だからさっきからなんで震えてるのよ?」
「怖い話するからさぁ…キミカ死んだのに…世の中には3人ぐらい自分と姿がそっくりな人がいるっていうからそのうちの一人に出会ったんじゃないの?確かそういうドッペルゲンガーに出会ったら死ぬっていうからユウカは死ぬね、ご愁傷さまです」
「あのさぁ…死ぬのは自分と同じ顔を見た本人でしょ」
「そ、そうか…それでキミカは死んだのかもしれない」
「こ、怖いこと言わないでよ!」
そんなことはどうでもいいんだよ!!
話を元に戻そうか…。
スカーレットの特徴はやたらと防御力が高いことだ。撃っても撃ってもバリアで塞がれるし、気が付けばあっちゅうまに逃げ出しているし。RPGで言うところのキングメタルだ。…ちなみに、どうしてそんなに早く逃げるのかは、きっと俺とまともにやりあったら勝負にならないほど弱いからだ。
っていうかなんであんなに防御力が高いんだろ?
俺と同じドロイドバスターだろ?俺のバリアなんて処女膜みたいなものでちょっと運動したらあっという間に破瓜しちゃうよ?
おぉっと…俺としたことが卑猥な言葉を並べてしまった。
きっと疲れてるせいだ。
とにかく大ダメージを与えて一瞬でカタをつけないと逃げられる。
その前にまず出現ポイントが割り出せないとなぁ。
軍の招集が掛かって現場に辿り着いた時には中国人の強盗集団とドロイドがいるぐらいなんだよな。
中国人…。
そういえばメイリンってスカーレットに連れられて日本に来てたな。前に本人に聞いた時は、スカーレットはただの案内役であまり仲が良いわけじゃないって言ってたけど、メイリンならスカーレットの出現ポイントを割り出せるんだじゃ無いのか?
気がつけば俺はメイリンの席に来てて、
メイリン〜…教えてよォ…」
と切実に今の心境を語ってた。
「何教えて欲しい?パンツの色、先ほどコーネリア教えて欲しいと言いに来た。今日は黒」
「今日はパンツ履いてるんだ?」
「おい」
「…Zzzzz」
「寝るな!…何教えて欲しい?」
「スカーレットの次の出現ポイント」
「知らん!」
メイリンしか知ってる人いないじゃんか」
「私、知らない。スカーレットとは仲はあまりよくない」
「でも日本にくるの手引きしたんでしょ?」
「スカーレット、金の為に動く。私達、金を沢山払った」
「…なるほどね」
でも、『私達』って?
母国にいるサポーターかな?
「疲れてるのか?」
「スカーレットのカスが銀行を荒らすから、それを止めに毎晩毎晩、アイツの部下と戦ってるの。アイツもたまにでるけど、それはボーナスステージね」
「アイツ!!金があるのに銀行襲うのか!!」
「う、うん…(っていうか金が無かったら襲っていいのかよ…)」
「許せない。私の金返せ!!」
「そ、そうだよね(そっちかよ…)」
「キミカ、次の出撃は私も連れて行け!」
「え?マジで?」
「マジだ!」
「何するの?」
「ん?」
「銀行襲うのは無しだよ?」
「え?」
「いや、『え?』じゃないよ…襲うのかよ…」
というわけで、次の戦闘はメイリンが参加することになった。っていうことは俺は次は休憩でいいのかな?