128 真・初デート 3

市内にあるゲームセンターはメイリンとコーネリアの3人で来た以来だなぁ。まさかこんなカタチで女の子と来ることになるとは。
ちなみに解説しておくとゲームセンターはテレビゲームやらが進化したものやらパチンコや賭博として行われていたブラック・ジャック、ポーカーなどもひっくるめて、ギャンブル性が伴うものは全部が揃っている。さらにそれらは国が管理していて儲けは国が吸収している。
「こっちに私が魔力増強に使っているゲームがある」
そう言ってキリカは俺の手を引いてゲームセンターのクレーンゲームやら太鼓の名人やらアーケードがある薄暗いフロアへと入っていく。
そしてキリカはある1台のゲームの前にやってきて腕を捲った。
『UFOキャッチャー』じゃん。
「このUFOキャッチャーは積み重ねが重要なのだ。あの排出口に自分が好みの人形を集めて、スイッチのほうに別の人形を置くと…排出口に向かってミサイルが発射され、その周囲の人形を穴へと落とせる。今まで私は定期的に排出口の周囲へと人形を集めてきた…。しかし、あの人形を落とせたのは私ではなく、他の者…」
「せっかく集めたのに取るのは他の人っていうのはNTRかよ」
キリカはコインを取り出すと、投入した。
「投ッ入ッ!」
メトロな音が鳴り響いてキリカの操作するクレーンが動き出す。
「はぁぁぁっ!!!その深淵なる闇の領域よりいでし邪悪なる手で贄を引き摺り込め!!ヘルズ・ブリンガー!!!」
やめろ…やめろォォ!!
人が見てるじゃねーか!!
クレーンは熊の人形の首をガッチリ掴むとそのまま周囲の人形をずるりとどけながら空高く引っ張り上げる。絞首刑のような形で熊人形が右へ左へと移動して、UFOキャッチャー排出部付近へ。他のUFOキャッチャーのソレと違って排出部に自動的に放り込むことは出来ないらしく、その近辺に人形を落とす。
「ダァァァーークフレイム・パンツァーファウスト!!!闇の炎に抱かれて死ね!!」
うわぁぁぁぁあ!!
ギャラリーが集まってくるからやめてくれー!!
ミサイルボタンを奇声を発しながら押しまくるキリカ。するとパチンコ玉のようなものがUFOキャッチャー内部の四方から放たれて人形にぽこんと当たる。これで本来なら人形が穴に落ちるわけだ。
しかし無常にも人形の背中に痕を残しただけで弾き飛ばされた。
「クッ…」
派手に叫んだだけあって失敗する時は余計に恥ずかしい…ギャラリーは変な奴がいるぞという目でキリカを見ては失笑した。
「ククク…生者が最期の足掻きを…。私の偉大なる力の前にそれが無意味であること知れ!!地の精霊たちよ、我が名においてその力を解放せん!!シュツルンハイム・アースクエイク!!」
なんだかんだ叫びながら最後は結局UFOキャッチャーを掴んでガタガタと揺らしているキリカ。
やめろやめろ!!
「店員がくるからやめろ!」
「後少しで落ちそう!」
もうそれ魔法でもなんでもないよね?!
「げ!店員が来た!」
「あ!落ちた!」
ピコーンと明かりがついて排出部からゴロゴロと音を立てて人形が落ちてくる。熊の人形だ。それを素早く手に取るキリカ。
そのまま俺はキリカの手をとって、『俺達を笑っている人混み』の中へと入っていった。
後少しで店員に捕まるところだったぞ!!
それから俺達はアーケードゲームのコーナーの中に紛れ込んだのだった。そうしなきゃ店員が探しに来るかもしれないし…まぁ、もし見つかってもキリカの能力でなんとでもなりそうだけど。
「追手は?」
とキリカ。
「まいた…ような気がする」
「ここは魔力により結界を生成したからしばらくは大丈夫…」
「まさか教団の云々もこんな感じで変なことやらかしたから目をつけられてるとかいうオチじゃないだろうな…」
俺はジト目でキリカを睨みながら言う。
「教団のほうはガチ」
「う〜ん…」
と、そこでキリカは目の前のノスタルジックなアーケードに目が止まる。どうやらそれをプレイしたいらしい。
というのも、そのゲーム、魔法少女が出てきたり魔剣使いが出てきてそれらが様々なファンタジックな特殊技で戦いあうというタイプのものだったから、キリカの妄想の中での戦いに酷似してるのだろう。
興味が惹かれるのも無理は無い。
「キミカ、対戦をやろう」
「途中で奇声を発しないでくれよ…」
しかしそれにしても、このアーケードゲームって奴は電脳ユビキタス接続はできないのか。こういうタイプのは俺は苦手なんだよね。ケイスケは得意らしいけれども、どうも俺の場合は腕の動きが脳の動きについてこなくて途中でイライラしてきてしまう。
さて、キリカは途中で奇声を発しはしなかったがアーケードゲームの中のキャラが代わりに奇声を発しはじめた。
『ダークフレイム・ホーミングミサイル!!闇の炎に抱かれて死ね!フハハハハハハハハハハ!!』
『キャァァァァァァ!!』
などと俺がコントロールする男キャラが恥ずかしい必殺技を大声で叫び、対して、キリカがコントロールする女キャラが叫び声を上げる。そんなのが延々繰り返される。
『召喚!サラマンダー!!その黒き炎で全てを焼き尽くせ!』
「召喚!サラマンダー!!その黒き炎で全てを焼き尽くせ!」
おいおい、キャラが台詞を言ってるのにわざわざ口に出して同じこと言わなくてもいいだろうに恥ずかしいよ…。
「げ」
「クックックック…その程度の実力で、闇の者を名乗るなど片腹痛い。闇の炎に抱かれて死ぬがよい
キリカが向かい側席(対戦席)からチラッと覗いてきて俺の顔を見てからそう言って笑った。
気づけば俺が操るキャラのライフはゼロに。
あーもう!女の子に負けてしまった…。
しかし続けているうちに俺はある一つの特徴を見つけた。
このゲーム、画面の端っこに相手を追い詰めて下蹴りを入れると相手はダメージを食らった時に反撃できなくなる。それは暫く(0.5秒)すると回復するが、回復少し前のタイミングでさらに下蹴りを入れると同じ状態になるのだ。
よし、画面の隅にキリカの制御するキャラを追い詰めて…。
「おらおらおらおら!」
「え、ちょっ、キミカぁ!!」
「ハメ技炸裂!!」
「やめてーよー!!」
「ハメてハメてハメまくってやるぜ!」
「ちょっ、嫌ァァァァ!!動けないィィ!!」
『YOU WIN!!』
「ヒャッハー!」
「キミカァァ!!(睨」
ハメ覚醒後の2回戦目。
「オラオラオラオラオラオラオラ!!」
「イヤァァァァァァァァァァァ!!!」
『YOU WIN!!』
「ヒャッハー!」
「キミカァァ!!(睨」
ハメ覚醒後の3回戦目。
「オラオラオラオラオラオラオラ!!」
「」
あれ?反応がないな?
俺は対戦台のほうをチラッと見てみる。
誰もいない!
キリカどこにいったn…
「うわぁぁぁぁあ!!」
「やめろぉぉー!!」
見れば俺の真横に何故かキリカが来ていて俺の台のコントローラーを掴んでくる。
「わ、ちょっ、わかったから!わかったから!」
って、よく見たらキリカは俺の太ももに思いっきり跨って座っており、必然的に、柔らかくて温かい女の子のスカートの奥がぴったりと俺の太ももにくっついてくるのだ。
「え?」
「んん?!」
「「…」」
「ご、ごめん…」
そう言うとキリカは俺から離れる。
「いや、別に…座ってても…いいけどさ」
俺はきっと顔を真っ赤にしながらそんな事を言ったと思う。
キリカも顔を赤らめながら、
「長時間、人肌に接していると魔力が薄れるからダメ…」
と言った。
「あ、あぁ。俺も、女の子の肌にずっと触れないでいたら、将来、魔法使いに…なれそうな気がする…」
などと分けの分からない事を言っていた。