126 中二病でも愛してる 10

美術部の体験入部である。
それにしても『想像したものを描け』というのは中々難しいな。
漫画を描く人はよくもまぁ想像だけで人の身体とか描けるよなぁ。本当にこういうのをパパッと描いてしまう人を尊敬するよ。
「キミカちゃん、何描いてるの?熊?」
「ドロイドバスター・キミカだよ〜」
「え?」
「ドロイドバスター・キミカ」
「その隣にいる黒い藁人形みたいなのは?」
「ドロイドバスター・マコト」
「えっと…じゃぁ、やっぱり上にいる黒い藁人形みたいなのも…」
「ドロイドバスター・メイリン
「そっか…やっぱりこの黄色で描かれているのは…」
「ドロイドバスター・コーネリア」
「き、キミカちゃん、これ、幼稚園生レベルじゃないかァァ!!」
「しょうがないじゃん、絵とか全然なんだから」
「いやいや、せめて顔は肌色で塗ろうよ!!ボクとメイリンは黒のクレヨンで塗ってコーネリアは黄色のクレヨンって、もう髪の色で全身塗っちゃってるじゃん!!」
「クレヨン交換するの面倒臭いんだよォ…」
「うわぁ…(この人に絵を描かせちゃダメだ…)」
「なんか言った?」
「なんでもない」
「そんなに言うのならマコトは凄い絵が描けてr…うわぁぁあああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁ!!!」
おいおいおいおいおいおい!!
なんだよこのうまさは!!漫画家かよ!!
マコトが描いた絵は俺が変身後の姿だ。現実の俺が少しアニメチックになっているけれども、現実と同じように美少女の身体の曲線美というか、大人になりきれない子供というのが全面に出ててエロい絵じゃないのにこれを見てるだけで興奮してきちゃう。
「日本に来る前は漫画家目指してたんだぁ…どうかな?うまい?」
「めちゃくちゃうまいよ!!これ、漫画家になれるよ!今度、漫画描いてよ!!!それでオナニーするから!」
「ボクはそういう系統の漫画は描かない主義なんだ(キリッ)」
な、なにぃ…(睨)
さてと。
ナツコは何を描いてるのかn…
「うわぁぁあああぁぁぁぁぁ!!!」
俺はナツコの絵を見て腰を抜かした。
「もう、びっくりさせないでくださいます?」
「びっくりするよ!!これ精神異常者が描く絵だよ!」
白いキャンバスが黒く塗りつぶされて中心には白い丸…塗りつぶされていいない部分…があり、そこから赤のクレヨンで血が垂れてきてる…という意味不明な絵だ。
「そもそも精神世界を描くのが今の美術部の課題なんですのよ?キミカさんもマコトさんも、漫画を描いてはダメですわ」
いやいやいやいや、アンタはどんな精神してるんだよ!
「これはどうなってるの…鍵穴から部屋を覗いたら血が溢れてきたっていうこと?部屋の向こうは…」
「部屋の向こうは殺された人の血が充満してて、溢れて鍵穴から血が垂れてきてる、っていうシーンですわ」
精神世界じゃねーよ!!もう映画の1シーンそのまんまだよ!
ったく、見て損したよ。
嫌な予感はするけどキリカの絵を見ておくか…。
ふむふむ。
ドロイドバスターキミカの絵だ。
俺が言うのもなんだけどすっごい下手糞で中学生がちょっと漫画を齧って4コマ描いちゃってる系で、遠近法とかも無視で、黒い刀の横には『グラビティ・ブレード』って描いちゃってる。
しかも絵なのに『必殺技』の欄に『キミカ・インパクト』『グラビトン砲』…その説明に、超人キミカはアカーシャクロニクルの力の一つである超小型のマイクロブラックホール
…。
「…いやぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁ!!!」
俺はその絵を取り上げて巻き取って誰にも見えないようにする。
「返して!」
キリカが叫ぶ。
「ダメ!」
「返してよぅ…」
「ダーッンメ!」
「キミカぁ」
「ダメダメダメ!これは痛いよ!痛すぎるよォォ!」
「かっこいいのに」
「元がどんなにかっこよくてもキリカが描いたら痛くなるの!!」
「ハァァァァ!!(構える)キミカ・インパクトォォ!!…ずぎゅぅぅーん、どどどど、ずしゃー!!ずぅぅぅん(白目)」
「やめろォォォォォ!!!!!」
とにかくキリカにこれ以上絵を描かせると失笑される。キリカが失笑さえるのは全然構わないが俺まで失笑されるのが痛い。痛すぎる。
没収。
俺はその絵をキミカ部屋(亜空間)に吸い込んだ。
「亜空間に吸い込まれた…」
「ふっ…また詰まらぬものを吸い込んでしまった…」