126 中二病でも愛してる 5

キリカはどうやらアカーシャクロニクル・ライブラリの能力があるためなのか勉強についてはそつなくこなしていた。
俺を含めてまともに全ての科目をこなすドロイドバスターは見たことがなかったのだが…。
ちなみにメイリンは殆どの科目が赤点で毎回毎回居残り勉強などをさせられている。
コーネリアは母国語である英語以外は殆ど赤点。っていうかコーネリアはアカーシャクロニクル・ライブラリ使えるのになんで??こいつはほんまもんのアホじゃないのか?
マコトはメイリンやコーネリアほどじゃないけれどもギリギリラインに立たされているので俺が勉強をお手伝いしてるぐらいだ。
俺はこう見えても前の学校ではかなり上位にランク・インしてたからな。ま、お嬢様学校のアンダルシア学園に入学してからは俺の居た学校がどれほど最下位に位置してたのかわかるぐらいにうちのめされていたから、いうなれば便所の便器の中のカエルがキッチンに出てきて「え?ここ歩いていいの?マジで?汚れちゃうよ?」って思いながら申し訳なさそうにぴょんぴょん飛び跳ねてる状態だ。
ただ、ドロイドバスターになってからはキリカが言っていたとおり、俺の能力にアカーシャクロニクル・デリゲートが備わっているからなのか難しい問題も一度問題を眺めた後、別の問題を解いている間に解を導き出して記入するというやり方でテストは4分の1の時間で終わらせる事ができる。答えが正解しているかは別として。
しかし体育の時間、キリカと俺達の間に致命的に異なる点があるのを発見したのだ。
こいつ、めっちゃ運動神経鈍い。
クラスで仲の良い人同士でグループを作って、グループ同士でバレーをすることになった。
アンダルシア学園の体育の授業は1学期初頭に行われる体力測定以外は殆ど自由時間でバレーやテニス、バスケットにサッカーなどとにかく学校の施設を利用してできるスポーツならなんでも好きなものをやる、って事になってる。
最初の頃は俺はユウカやナノカと同じチームでやってたけど、外国人勢が出てきてからソイツらが必ずあぶれる事になってしまい、結局俺がその枠内に入ることになった…っていうか、既にこの時点でクラスから異端視されていたことになるのか…。
許せない!許せないぞォォ!!
まぁ、それは置いといて。
今回も異端視された俺達は外国人(コーネリア、メイリン、マコト)と新しくクラスに含まれる中二病のキリカを含めた5人でバレーチームを作る。よくよく考えるとクラスから異端視されたチームは全員ドロイドバスターだった。
元から俺達のチームはルールは守れないが攻撃力・防御力ともに優れており、おそらく相手が重火器でも使わない限りは、相手チームが勝利する可能性はゼロに近い。そして余計に異端視されるという…。
「Haaa!!!」
コーネリアの凄まじいブロックがキマる。
きっと何かしらの不思議な力を働かせているに違いない。何故ならコーネリアがブロックした時に限ってボールは勢いをつけて相手チームのコートに入るからだ。
相手チームにとってみればコーネリアやマコトは高校生レベルではかなり強いぐらいだろうか。メイリンや俺ともなると人間のレベルを超えている。何故なら必ずといっていいほどにドロイドバスターの秘技を混ぜながら攻守を行うからだ。
「ハァァァァッ!」
メイリンのスパイクが炸裂する。
毎回毎回エナジーフィールドの小さな奴が発生しててそれに加えて時々バチバチッと火花のような電気のようなものがボールとメイリンの手の間に発せられる。それを受けた後のボールは言うまでもなく凄い速さで相手チームの陣地に着弾する。同じ箇所に何発か着弾すると硬い地面が凹む。それを間近で見た相手チームはマトモにブロックするのを避けるのだ。
相手チームにはバレー全国大会にも出場したこともある巨大な女がいる。その巨大な女の巨大なスパイクがくる時、対峙する俺はまずボールをグラビティコントロールで緩やかにさせて、俺の手に触れた時にこの柔らかい美少女の美しい手をボールのようなもので汚さないように、痛めないように柔らかく柔らかくタッチして、後は再びグラビティコントロールで加速させ、相手チームがブロックをキメた後もさらにグイグイグイグイと押して押してブロッカーごとなぎ倒す。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
華麗なる俺のブロックで弾き飛ばされたボールは強烈な力を帯びて相手チームの巨木のようなブロッカーをなぎ倒すのだ。
「反則よ!反則!」
毎回文句を言ってくるのはユウカだ。
「何?文句あるの?(鼻くそほじりながら)」
「どうしてブロックした時にあんなに柔らかくボールに触れてるだけなのに凄い勢いで跳ね返っていくのよ!しかも跳ね返ったボールをブロックしたのにブロックした人ごと倒されるとか物理的にありえないでしょうが!!」
ま、反則っていうのは既に物理法則について反則してるからねー。今更バレーの中で発生する物理法則に従って俺達が頑張るような云われはないよ。うん。
だがそこで俺達は欠点を曝け出すことになった。
「ひぃぃぁぁぁ…」
この情けない声をあげたのは誰か。
そう、キリカである。
相手チームのスパイクを肩に受けて倒れる。
「いけるわ!!柏木さんを中心的に狙うわよ!」
チィッ…弱点がバレたか。
キリカはめっちゃ運動神経鈍いな。
本当にドロイドバスターかよォ…。
「ひぃぃぃ…肩にバレーボールの跡が、プリントされてるよォ…」
「そりゃそうだよ」
倒れたキリカを俺は起こしながら言う。
「このヘルズゲート・ヴォイドサム・ハートブレイカーの肩に珍妙なあざを残すとは…自分がしたことがどういう意味を持っているのか、知らしめる必要がある…」
「その前にあんたが言っている言葉の意味を教えてよ…」
「というか、キミカ。あなたはどうしてサーブをしない」
「ん?あたしがサーブすると変化球で絶対に勝つから禁止になった」
「どうして連中は自分に都合のいいようにルールを書き換える?!それが貴様ら人の答えなのか?!」
ヘルズゲート・ヴォイドサム・ハートブレイカーは変なポーズを取ると、彼女を倒して調子に乗っているバレー部部員の女子を指さして叫んだ。
おいおいおい、やめてよォ…棘がある言い方するのは。
相手チームはあっかんべーをしている。
ヌゥゥ…確かに反則的な勝ち方をしてきたからな、恨まれてもしょうがないとは思っているが、それでもムカつくものはムカつく。
次の勝負。
「ブッ」
またキリカの悲鳴である。
今度はキリカにとって死角である部分からの攻撃だった。バレーボールがキリカの顔の左側に命中したのだ。
これにはマコトがキレる。
「女の子の顔を狙うなんて!酷いじゃないか!」
君も女の子だけどね。
「スパイクしたらちょうどの位置に顔があるだけよ、狙ってないわ!っていうかそっちだって顔に当てたことあるじゃないのよ!」
相手チームのバレー部女子が巨大な位置から物申す。
ちなみに顔に当てたのは俺だ。
俺の場合は当たったのじゃなくて当てたのだが。
「ふ…ふふ…ふふふ…」
ゆらーっと立ち上がってキリカが笑っている。
どうやら堪忍袋の尾を切断してしまったらしい。
「人の前で魔力を披露してしまうとこの世界に留まる事が難しくなるから抑えていたが、どうやらそちらはよほど強いちからへの憧れがあるらしいな…クックックック…いいだろう、私の力、その目に刻むがよい!!!しかし、刻むのが目だけになるのか、それとも遺伝子そのものに刻まれるのか、それは私の知るところではない!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!喧嘩でもする気なの?!バレーで決着つけなさいよね!」
「わかった…バレーで決着をつける」
するとそのキリカと呼ばれる中二病の美少女は、左目を覆っていた眼帯を取った。