126 中二病でも愛してる 4

教室に戻った俺は椅子に腰を下ろした。
ユウカやナノカが俺のもとにやってくる。
「キミカ、柏木さんと仲良くしなさいよ?」
などと言ってくるのだ。
「なんでだよ…あの変人は扱いにくいよ?」
「へ、変人って…アンタねぇ、アンタがここに転校して来た時、女子はアンタの『存在そのもの』に『No』を叩きつけたのよ?男子に大人気の女の子がそう簡単に女子に受け入れられると思わないでよ。今でこそ認めてはくれてるけど」
「え、ちょっ、待って、それどういう…」
「だからー!私とナノカがキミカがボッチだと寂しそうだからって話し掛けてあげたの!もぅ、空気読みなさいよ」
え…。
ちょっ…え?
「えぇぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇえええぇえ?!」
俺は驚いて椅子から転げ落ちて、側を歩いていたキミカファンクラブの一人の男子のズボンを掴んで思いっきり引きずり下ろしてしまった。トランクス一丁になった男子は、
「ちょっ、キミカ姫、やめてください…お婿にいけない」
と恥ずかしそうにズボンをもとに戻す。
待ってくれよ?
待って…いやマジで。
それって、どういう、意m…?
「もう、そのオーバーなリアクションやめなさいよ。キミカがボッチなのは変えようがない事実じゃないのよ。大体、あんた自身もボッチでいることに違和感覚えてないでしょ?」
「ま、まぁ、そうだけd…え?えぇ?その、マジで?」
俺のリアクションが面白くてしょうがないのかナノカは肩をピクピクと動かしながら必死に笑いをこらえているが、
俺はそれどころじゃない。
俺が『ボッチ』だと?!
俺はガクガクと震えながらバッグの中からフリスクを取り出して、まるで心臓病末期の患者がストップした心臓を再び動かす為にクスリを慌てて口に放り込むかのように、大量のフリスクを口に放り込むと、そのまま炭酸水を流し込んだ。
「が、がぁぁ…」
そのまま白目を剥いて俺は床に倒れ口からフリスクと炭酸水が産みだした泡を吹き出した。
もうここで笑いを堪えていたナノカが限界点を突破して(ちっさな限界点だなぁおい…)完全に吹き出して大笑いをしている。
「あーっはっはっはっはっは!キミカっち!!面白すぎ!それ、AKIRAに出てくる根津っていう議員の真似だよね?!めっちゃ似てるよ!はははははは!くっくっく…あーーーはっはっはは!!」
俺の吐き出した炭酸とフリスクの残骸をコーネリアはまたいで避けて自分の席につく。そのコーネリアが、
「何ヲシテルノデスカー。キミカハ相変ワラズ、REACTION芸ガサエテマスネ。中々面白イデスヨ」
リアクション『芸』じゃないんだけど。
ユウカは話を続ける。
「コーネリアとかマコトとかメイリンにしてもさ、キミカと同じ変人枠で扱われてるわけよ。だから、」
「だからなに!変人同士仲良くしなさいってこと?!」
俺は口からフリスクと炭酸水をまき散らしながらユウカの肩を掴んでそう叫んだ。血走った目で。
「そうは言ってないわよ…変人のキミカが同じ変人のキリカを『変人』っていうのはおかしいって話よ。自分の立場をわきまえて変人同士仲良くしなさい」
おいおいおいおいおいおい!!
同じ話じゃねーか!!
「ち、ちょっ、ちょっとまってよ!あたしとこのひとたち(コーネリア、メイリン、キリカ)を同じ枠に入れないでよ?!ぜんぜん違うじゃん?あたしは中二病な台詞は言わないしさ!」
「ベクトルは違うけど変人の部類に入ってるわよ」
「ナノカだって変人じゃん!」
「いや、ナノカは『変態』。あなたは『変人』。それと『変態』。ハイブリッドよ」
嬉しくねぇ…。
嬉しくねぇよ…。
「マコト、ちょっと。マコトォ…」
マコトの服の袖を引っ張りながら俺が言う。
「ん?なに?キミカちゃん」
「あたしって変かなぁ?変人かなぁ?」
「ん〜…確かに少し変わってるかも?」
俺は目ん玉が飛び出てマコトの頭を貫通するかのような妄想を思い浮かべてしまう程に驚いてしまった。
「ちょっ、どこが変なの?!どのあたりが?!」
「うーん…全体的なオーラみたいなのが…」
間髪入れずにコーネリアが言う。
「Hehehe…変人ノキミカガ人目ヲ気ニスルトハ、滑稽デスネ」
お前が言うなァァァァ!!
一方でメイリンは汚いものでも避けるような歩き方で俺が撒き散らした炭酸水とフリスクの残骸を避けながら言う。
「なんだこの炭酸水とフリスク。キミカがまたやらかしたのか」
…てぇんめぇ…。
そんな俺達(俺、コーネリア、メイリン、マコト)を指してユウカは「クラス委員長としてお願いよ。柏木さんと仲良くしてね」
おいおいおい!
なんだよその変なものは変なものへ押し付けるような物の言い方は!!俺達は産業廃棄物の最終処分場かァ?!ォァァ?!
渋々俺達(俺、コーネリア、メイリン、マコト)はキリカのほうを向く。俺の隣の席に座っているキリカはいつの間にか俺のほうを向いて座っており、組んだ足を組み直してから言った。
「Welcome to the under-world.」
…ウワァァ…。