126 中二病でも愛してる 3

「教団に…命を狙われてるゥ?!」
突拍子もない回答に俺は吹き出しそうになるのを我慢しながら、いや、我慢はできずプッとふき出して笑いながら問う。
「別に信じなくても構わない。でもこれは事実。私は両親を…まぁ、両親はこの人間界における仮の身体を産みだした人間だけれど、その両親を殺され、今もまだ逃亡生活を続けている」
などというから俺はキリカの肩をぽんぽんと叩きながら、
「まぁまぁまぁ、肩の力を抜きなよ」
とか言って宥めてみるのだ。
ジト目で俺を睨んでからキリカは言う。
「…偉大なる我が姉妹。あなたが居れば教団なぞ恐るるに足らない。その鎖を解き放ち世界を恐怖と絶望の渦に巻き込もうぞ」
「キリカはじゃあいま、一人暮らしっていうこと?お金は?生活保護を受けてるの?」
「人間界の小銭なぞ古銭収集家以外は興味の欠片もない。そんなものが無くても生きていける…クックック…毒されているな、キミカ。お前はもっと自由だったはずだ」
「た、確かにあたしは自由が好きだけど、お金がないとお店にも入れないでしょうに…」
するとキリカは財布の中からスッと何かの半券を取り出してニンマリと笑った。見るかぎり宝くじか何かの半券のような…?
「これは宝くじの当たり券だ」
「え?マジでェェェェ!?なんで?運が良かったの?」
「クックック…」
「お、教えてよォォォ!!」
ガクガクブルブルとキリカの肩を掴んで揺さぶる俺。
「やめ、…て…目がまわるゥ…」
「あ、ごめん」
「アカーシャクロニクル・フェイト…運命を書き換える偉大なる魔術…」
アカーシャクロニクル・フェイト?!
運命をコントロールできるだとゥ?!
アカーシャクロニクルには他にも能力があるって事?
「あたしも宝くじ買うから!当たり券ください!」
「先生にも美人で可愛くて処女で絶対服従の2次元から飛び出てきたような女の子を奥さんにください!!」
俺とケイスケが前に後ろに双方でキリカの肩を掴んで揺さぶる。揺さぶりまくる。もう震度30ぐらいの揺れっぷりだ。
「や、やめ…t…目がまわるゥゥ!!」
「ご、ごめん」「ごめんですぉ」
キリカはフラフラと身体を揺らしながらも、
「残念ながら…それはダメ」
ときっぱり言い切った。言い切りやがった。
「えー!!なんで?!なんでだよォォォ?!」
「どうしてですぁォ!!何か欲しいなら先生が熱い抱擁をしてあげるから!先生に処女で可愛くて処女の女の子をくださいですォ!」
「駄目駄目ダメダメダメダーンメッ!アカーシャクロニクル・フェイトは運命のバランスに介入する…繰り返せばそれは世界のバランス崩壊にも繋がる…世界とは人間界だけではなく私が還る場所であるアストラル界も含めて全て」
「私もアカーシャクロニクルの能力を使いたいよォォォ!!」
今度はケイスケの身体をグラビティコントロールでガクガクブルブルと揺らした。揺らして揺らして揺らしまくった。もう震度50ぐらいの凄まじい揺れで空中に残像ができるぐらいだ。
その後は完全にケイスケは失神した。
そんな様子を見ながらキリカは、
「クックック…あなたもアカーシャクロニクルの能力は使えている…自らの強すぎる能力に気づかないとは…」
「え?マジで?!宝くじって当たらないと思ってたから全然買ったことが無かったけど実は当たりまくるのかな?!よーし!買っちゃうぞォォ!!もう30枚とか束で買っちゃうぞー!!」
「違う。あなたが扱えるアカーシャクロニクルの能力は私のそれとは異質なもの…アカーシャクロニクル・デリゲート…そしてアカーシャクロニクル・フォーキャスト…」
「デリート?確かにあたしは今までいろんな人間をデリート(抹消)してきたけどまさかそれがドロイドバスターの能ry…」
「違う違う。デ・リ・ゲー・ト。『代理』という意味。普通の人間はシングルタスクでしか物事を考える事ができないけど、キミカは同時に複数のことを考えれる。それはアカーシャクロニクルの中にある計算処理能力によってキミカの意識で代理計算させているから」
「へぇ〜…あんまり実感ないなぁ…」
「例えば電脳ユビキタス接続でゲームをする時に、同時に複数のキャラクタを操れます」
「え…それ普通にやってるよ…」
「それがアカーシャクロニクル・デリゲート」
「え、ちょっ、全然お金にならないよォォォ!!アカーシャクロニクル・フォーキャストは?!フォー!って唱えるとかやめてよ!」
キリカはジト目で俺を睨みながら、
「フォーキャストは様々な物事をアカーシャクロニクルの計算能力を用いて未来予測する能力。例えば僅かな物体の動きから、その物体が他の物体に及ぼす影響を瞬時に理解できる」
「た、例えが…例えになってないよォ…(白目」
「高速に動く物体が次にどの位置にいるのか、それは物体の動きから空気抵抗やコリオリ力などを考慮して計算しなければ通常の人間には予測できない…しかしアカーシャクロニクル・フォーキャストはその計算をアカーシャクロニクル内で行なって、次に物体がどの位置にくるのかを算出する」
そういえば…銃の弾道が見れるような、アレってこの能力だったのか?ドロイドバスターでこの能力を持ってないものは俺のように銃を弾くことはできないって事か?!
「でも、お金には…ならないよね…」
「ふ…汚れている…キミカ、あなたは人間界に長く居すぎた。金は何も与えない。ただの物品引換券に何を求めるの?」
「そりゃ…言ってることは正しいけど(人間界に…の部分を除いて)あたしもフェイトとか使いたいよォォ!!」
「万能は無能。バランスの問題…」
「ヌゥ…」