126 中二病でも愛してる 2

「んでは、キリカちゃんはキミカちゃんの隣の席に座るにぃ。名前が似てるから近くにいたほうが先生も分別しやすいですにぃ」
俺達はお前のバッグの中のアイテムかよ…。
教室ではクラスメート達はさっきの変な幻覚を見せられたショックで恐怖に顔を歪ませて友達同士でヒソヒソと話をしている。
しかしどういうわけか俺の中にもあったあの恐怖の数秒間の絵はどんどん記憶の彼方に消去されてしまって、夢でも見てたんだろという気持ちにさせられてしまった。
そして最初キリカがここで自己紹介した時のように、中二病設定のキリカが相変わらずのあの態度で俺達の前にいる、という『設定』に変わってしまっていた。
キリカはケイスケの言うとおりに、
「了解」
と言った後、俺の机に向けて歩み出す。
その時、キリカと俺は目があう。
「…ん?」
すると、今まで余裕をぶっこいていたあのキリカが何故か訝しげな顔で俺を見てそう言ったのだ。
「あ、あなたは…」
そう言って俺を指さす。
え?
どこかで会ったっけ?
「…こんなところで闇の眷属と遭遇するとは、この人間界もそれほど広いものではないようだ」
おいおいおいおいおいおい!!
俺をお前サイドに持って行かないでくれよ!!
「え?なに?キミカと幼馴染みとか?」「キミカも中二病じゃないの?」「藤崎さん…(笑)」ってクラスメートも噂してるじゃないかァァァァァァッ!!やめてくれー(涙)
「この世で唯一『グラビティ・ブレード』を操ることを許された漆黒の炎よりいでし、時と空間の化身…」
おいおいおいおいおいおい!!恥ずかしい呼び方やめてくれよ!ってなんでお前グラビティ・ブレードのこととか時と空間のドロイドバスターの事を知ってるんだよ!!
「え、ちょっ、グラビティ・ブレードって?」「恥ずかしい名前の武器…」「なんか中学生が知ってる英単語並べてかっこ良さげだから使ってるって感じだよね」「クスクス…」
やめろォ…。
やめろォォォォ!!!
『ケイスケ!この子にあたしのこと話したの?!』
電脳通信でケイスケに言う。
『し、知らないにゃん!』
マコトが介入してくる。
『キミカちゃん、この子と知り合いなの?』
『知らないよォォォォ!!!』
『なんでこの子、ドロイドバスターの事知ってるんだろ?』
『ファンは多いからその中の一人じゃないのかな…?テレビの前でマイクロブラックホール使って対象を消し去った事もあったし…でも、気になるなぁ…後で尋問してみるかな』
さて。
2分後。
ホームルームが終わってからケイスケに呼び出しを食らっていた。
キリカと、それから俺。
職員室の隣にある説教部屋と呼ばれる、学校や近隣で悪さをした生徒の親を呼び出したり叱ったりすることがこの部屋で行われることから、生徒からは『愛の説教部屋』と呼ばれるようになった。
「私とキミカをここに呼び出すとは…教団関係者か…」
身構えるキリカ。
呆れた顔でケイスケは、
「何を言ってるんですかォ?」
と言った。
俺は間髪入れずに質問する。
「なんでグラビティ・ブレードの事を知ってるの?」
するとキリカはその質問を待っていたかのように、
「クックック…全てはアカーシャクロニクルに記録されている。私はそのデータを目から呼び出すだk…いたたた!!!」
そうドヤ顔で答えるキリカのこめかみを万力で挟むかのように拳と拳でグリグリと挟んで捻る。悲鳴をあげて床をゴロゴロするキリカ。
「痛いよォ、キミカァ…」
「正直に話しなさい!どこで知ったの?」
「だからアカーシャクロニクル・ライブラリの能力…」
「アカーシャクロニクル…ライブラリ?って、どっかで聞いたことがあるような…。あぁ、コーネリアとキサラが使ってるアレ…か…。ん?え…えぇぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇえええぇえ?!」
俺は驚いてテーブルをひっくり返して拍子に踵落としをテーブルに食らわせてしまって真っ二つにかち割ってしまった。
「ど、ドロイドバスターなのですかにぃ…?」
「どろいどばすたぁ?何その中2病臭い名前?」
ってお前が言うな!!
破片をかき分けながらようやく立ち上がった俺は、
「ドロイドバスターっていうのは人がそう呼んでいるだけで、実際はどう呼ばれるものなのかは知らないよ。ここにいるケイスケが産みだした珍獣みたいなもんだよ。あなたもやっぱり変身とか出来るんじゃないの?」
「クッ…なぜそれを知っている…人間界ではその話は一度もしたことが…やはり、キミカ、お前は私と血縁関係にある闇の眷属か!」
と身構えるキリカ。
やっぱり教室でさっき使ってたあの幻覚・幻聴の能力はドロイドバスターの能力の一つだったのか。エネルギーをコントロールする能力、エントロピーをコントロールする能力、物質変換の能力、そして俺の空間を制御する能力…こいつの能力は前にキサラが話してたアカーシャクロニクルそのものの能力という事になるのか。
っていうか、なんで俺の周りにはこうもドロイドバスターと呼ばれる連中が集まってくるんだ?もしかしてジョジ◯の奇妙な冒険にあるようなスタ◯ド使いみたいにそれぞれが惹かれ合う性質があるっていうことなのかな?
「なんでこの学校に転校してきたの?」
俺は素直にそれを聞いてみる。
するとキリカは部屋のカーテンを閉め、ドアの周囲に誰か居ないかをジロリと見て確認してから、机や椅子、棚に至るまで盗聴器らしきものが仕掛けられていないかなどをスパイよろしく確認した上で、俺とケイスケに近づき、ヒソヒソ声で、
「教団に命を狙われている…」
そう言った。