123 庶民感覚 1

ちょっと前に公安と一緒に仕事をしたと思ったら、再び俺はまた公安8課の扉の前をくぐっていた。また仕事の依頼だった。
「というわけだ…」
とハラマキが説明をした。
今回はバトウは別の仕事で不参加、で俺と一緒に活動するのはモトコと8課の人が呼んでいる女性だった。あぁ、モトコって呼んでるのはバトウだけで他の人は何故か少佐って呼んでたっけ?
「それは普通逆じゃないの?」
とハラマキの作戦内容にケチを付けるモトコ。
「確かにキミカ君は戦車一個大隊と勝負しても互角に叩けるほどの戦力を持っているが、だからといっていつ現れるやも知れぬテロリストの足取りを掴むという言わば『情報戦』のおいてはその戦力も暇を持て余してしまうのだ。少佐、最も最適な結末としては、キミカ君の前に敵をおびき出して潰させるのがいいだろう」
簡単に言ってくれるねぇ…。
「わかったわ。それにしても…こんな中学生ぐらいの女の子に総理の護衛を任せるって、総理は総理でそれでいいのかしら。後で公安に何か文句言ってきたりしないわよね?」
ハラマキはため息をついてから、
「文句ならいつも言ってきておる」
とういわけで、俺の今回の仕事は全開に引き続いて公安8課と共同、日本の総理大臣の護衛ということになった。
ちなみに、日本の総理大臣とはどういう立場にある人なのか、俺が聞いたのは50年かそこら前までは日本の国を動かすという意味でのトップの立場についている人であり、他国から見たら日本の代表であったが、今ではただの国のトップであり、日本の国を動かす人は政治家や国民IDを持った国民そのものである。
つまり、『日本国の代表者』という役職を持っているだけの人。
これは完全民主主義政治をしている一部の国と、間接民主主義政治をしている大部分の国とが意思疎通を今まで通り行う手段として、国の代表を決めて他国との話し合いに参加させるという方法の一つだ。
ちなみに小学校の『社会』の科目には『完全民主主義』と『間接民主主義』の定義が簡単に書かれている。
間接民主主義は選挙で選ばれた国民が政治を行い国を動かす。
完全民主主義は国民と認められたものが政治を行い国を動かす。
昔はネットワークが今のように発達していなかったため、国民一人一人の意見を聞くためには膨大な時間と金がかかっていた。必然的に間接民主主義にならざる得なかったらしい。
技術の発展により政治のやり方は大きく変わったらしいけど、今でも昔の習わしは残っていて、総理大臣という国の代表者を決める事以外にも政治家になろうと思えばなれるし、金さえ払えば国会で好き勝手言うこともできる。スカーレットの中の人である蓮宝議員のように。ただ、それが国民に認められるかは別の話。
総理大臣が日本国のお飾りの代表というのは日本国民でちゃんと学校で勉強を受けた人なら誰でも知っている。だからそのお飾りの代表を狙ってくるのは大抵は外国人である。
「ところでキミカ君。今の総理大臣が誰かはもちろん知っているな?」
え?
なんでそんなの聞かれなきゃいけないの?
いや、それ、この人をボディガードしてって言ってくれたらいいじゃん、なんでその人が誰かまで知っておかなきゃいけないの?
「えぇ〜っと…」
「まさかと思うが…知らないわけじゃないだろうな」
「まさかぁ、小学生でも知ってるよ」
と俺が挑発に乗ってそう言ってみると、怪訝な顔で俺を見ているモトコ。なんだよ、総理の名前を知っているか知ってないかがそんなに重要なのかよォォォ…(白目。
なんか「か」で始まった気がするぞ…。
まて、考えろ…いや感じるんだ。
川本?春日?上条?案山子?あーもう!これでは俺が一般常識がわかんない人間認定されてしまうぞ!アイドルだって知っててもわざと間違えるのは解ってるのに!!
「まさか知らないのか?」
「んなわけないじゃん!今ここ(喉の辺りを指さして)まで出かかってるから、後は声にして出すだけだから!!」
くそ…もう一か八かだよ。
「春日茜?」
「柏田(かしわだ)焔(ほむら)だ…」
少佐ことモトコはクスッと笑って、
「それってアダルトゲームのヒロインの名前じゃないの」
と言った。
「『か』しか合っておらんな…」
「…」