121 愛は盲目 10

バトウが蹴破った扉の前に俺が素早く出る。
テロリストの中国人は今の俺の視界から見える限り10名はいる。それがほぼ一斉に俺に向かって持っていたサブマシンガンやらハンドガンを乱射してくる。
だが残念ながらそんな程度の攻撃では俺のバリア用バッテリーを消費することすら出来ない。一方方向からのみの攻撃はブレードだけで弾き飛ばせるのが、金剛流居合術の剣術だ。
弾を撃ち尽くして次のマガジンなぞ要らないだろうと踏んで、埃と瓦礫だらけの入り口を見たテロリストの中国人達の顔は、一体何が起きているのかわからない、とでも言いたそうな表情になっていた。
あれだけ撃ちまくったのに目の前には無傷の美少女(俺)がブレードを構えて立っているのだ。
テロリストどもの間抜けヅラにバトウのハンドガンの弾の雨が降り注ぐ。ある者は顔を吹き飛ばされてある者は腕を吹き飛ばされ…どうやらバトウのハンドガンはやたらと口径が大きいらしい。まるでドロイドの放つ対戦車ライフルのごとき強さだ。
「うぉ!」
バトウがそう唸ると、腰を落とした何かから屈んだ。
中国語で怒鳴りながら部屋の奥へと下がるテロリストどもが部屋の奥のほうから何かを連れてきたのが見えたのだ。見えた瞬間、さっきの銃弾の嵐が豆鉄砲に思えるほどに凄まじい銃撃が俺に向かって降り注ぐ。さすがにこれにはプラズマディフレクター・シールドのバッテリー消費が100%から98%ぐらいまで減ってしまった。どこか電源付き喫茶店などで充電しなきゃいけない。
しかし、2%のバッテリーを消費した後はブレードで弾丸の雨を弾き飛ばして今度はブレードを使わずに踵落としだけで、さんざん俺に向かって弾丸を放っていた蜘蛛タイプのドロイドを潰した。
そして、そのドロイドが最後の切り札で、それが敗れてしまってもう逃げ場がなくなったテロリストどもを容赦なくブレードで斬って斬って斬りまくる。
その中の一人が何かのスイッチらしきもののボタンを押そうとしていたので、どうせろくでもないものだろうと判断し、スイッチとそれを握っていた腕を切り刻んだ。
「あーあ、全員殺っちまいやがったか」
バトウがそう言う。
「え?そういうことじゃないの?」
「いや、まぁ、そういうことだけどなぁ…」
それに全員じゃないじゃん。
ちゃんと人質の岸田のおばちゃんは生き残ってるし。
ガタガタと震えながらボロボロの机、椅子に座っている岸田のおばちゃんの前にはボロいノートパソコンが1台置いてある。中国語で何か書かれてあるらしいが俺には読めない。
これは証拠として持って帰る事になりそうだ。
「大丈夫かァ?」
バトウが岸田に言う。
「は、はい…あ、ありがとうございます」
「連中があんたを連れ去った目的は何なんだ?」
「わかりません…」
「なんて言っていた?」
「警察に何か話したのか…とか、何か聞かれたのかとか」
さすがにこれだけ凄まじい戦闘を見せつけられた後でふてぶてしい態度を取れるわけもなく、嘘も付けるような状況じゃなかったらしい。岸田はポロポロと涙を流している。
バトウはそれを察したのだろうか、
「リウを知っていたんだろう?手引きしたのはお前だな?」
そう言った。
涙ながらに岸田は頷いて、
「彼が日本に来るというから、私は今度こそ、本当に会心して一緒に生活してくれるのだろうって、そう思って…」
と言った。
「やれやれ」とでも言いたげな表情で俺の顔を見てからバトウは、
「署で詳しい話を聞かせてもらおうか」
と言い、岸田を連行した。
結局、この戦闘でリウは死亡していない。奴は顔を変えれるというからこの中に紛れているのだと思ったけれども、岸田曰く、他のターゲットをまだ探している最中だという事だった。