120 第1次マカー vs ドザ闘争 8

「Vnixねぇ…」
椅子に腰掛けてモニターと対面する。
わけのわからない文字列がダラダラと並んでいる。
が、よくよく見てみると、このわけのわかんない文字列を理解して読んでるケイスケとかって凄いんじゃないのか?
ふむ。
よく考えてみるとそうだな。
わけのわかんないものをわかってる人が凄いね、って話で俺は最初、MapでXCodexを使ってプログラミングをしてたわけだし、ある意味、ケイスケが出力させたこの文字列は俺のそんなチャチな考えは遥かに超越してる事になる。俺ですらわけわかんないから。
ちょっと何かやってみるか。
「とりあえず、ファイルの一覧を表示とかやってみようかな」
MBAで言うところのファインダー機能なのだけど、ん〜…どうやってやればいいのだろうか。ついついファインダーのアイコンとか探しちゃったよ。あるわけないか。にしても、この真っ黒の画面はなんとかならないのかな。無骨で味気なくてまるで宇宙空間に一人取り残されたかのような悲しい気持ちになるじゃないか。宇宙空間だって星々が輝いてるからまだましなほうか。
それから俺はfuckとかshitとかassholeとか入力してみたがまったくもって英語のcommand errorとかが出てるばっかりだ。しかしkillって入力した時にはusage : kill [process name]って出てきたからkill youとか打ってみたけどこれもダメだ。とりあえずkillっていうのは何らかのコマンドだと思われる。
「駄目だ駄目だー!ファイル一覧を表示することすらこんなに難しいなんて!!」と俺はキーボードをピアノをバリバリ引くみたいにガチャガチャと打ってみる。ただ無意味なfsfasdfafdsafujikoみたいな文字がコマンドラインに並ぶだけで終わった。
あ〜、面倒くさい。やめたやめた。
とりあえずシャットダウンだかスリープモードにだかしていくか。
あれ?
「これってどうやってシャットダウンとかスリープモードにするんだっけかな?ケイスケは最初どうやって起動してたっけ?確か…ここのボタンを押したような?」
俺はあの剥き出しのコンピュータの内部みたいな電子ボードの隅にある5ミリぐらいの大きさの突起物を指でグイっと押してみる。しかし反応なし。これは起動スイッチってことか?なら終了スイッチもあるはず…だけど、どこにもないなー。長押しかな?とりあえず俺はその突起物を長押ししてみる。
5秒…10秒…15秒…。
反応なしか。
さすがに30秒待っても反応なしだからこれは意味がないってことだ。ではどうするか?
っていうか人間様がコンピュータごときを前にしてどうしてこんなに迷わなければならないんだよ。だいたいコンピュータなんて電源につながってなけりゃ動かないわけじゃないか。それならそのあたりの仕組みを知っている人間様である俺はコンピュータの動力源である電源を引っこ抜くまでだ!!ハハハ!!頭がいいだろうゥ?
その小さなボードから伸びているケーブルを伝って机の後ろ側に言ってみる。ん…。なんだこれは!!!ジャングルだ!コードのジャングルが広がっているぞ!!キモ過ぎワロタ…ワロタ…。
ここに手を突っ込んでコードを引っこ抜かなきゃいけないのかよ…これ、中に得体の知れない虫とかいそうだよ、しかもそれが埃を食べてウンコを出してまたそのウンコを他の虫が食べたりとかして、独自の生態系を創り出していると思うと、ある意味このコードを引っこ抜くことにしてもその生態系を破壊してしまう可能性があるのだ。人間はなんて罪深い動物なんだろうか…。
「んしょ…。んしょ…」
机の上に身体を乗っけて背後に手を伸ばして、コードを一つ掴む。多分これだ。これを抜けば…。
(スコン)
(ブッ)
よし。
これでOK…あれ?まだディスプレイの電源もついてるぞ?
って、今、俺、何を抜いたの?
あ、これ別のコードじゃん〜。
っていうか俺何してんだよ、グラビティコントロールを使えば手を突っ込まなくてもコード引っこ抜けるじゃんか。
「とりあえず…今抜いたコードを指しておこう…」
俺はグラビティコントロールを使って今しがた抜いたコードを再び抜いたコンセントに向かって差し込もうとした。
その時だ。
(バリバリバリ)
(ボッ)
火がついた。
「ウォォォォォォァァァァァァ!!!」
やばいやばい!!火事になる!火事になっちゃぅゥゥ!!!
「ハァァァァァァ!!」
俺は超マイクロブラックホールを創りだして炎を吸い込んだ。ついでに埃も吸い込んだ。最初っからこれ使えばよかったんだよ、クソ!
今コンセントに差し込んだコードが何かの電子機器のものだったらしく、ファンなどが回る音が聞こえ始めた。どうやらパソコンではない何かの電子機器の電源をぶっこ抜いたらしい。
よし、埃は綺麗にとれたから、あとはこのパソコンから伸びているコードを伝って…これか?これだろ?テイッ!
(スコン)
(プシューン)
あれ?違った?
また何かの電子機器が落ちたぞ?
とりあえず、これは差し込んでおいて。
これだろぅ?フヒヒ…。
(スコン)
(ピーーーッ!)
え?何?なんなの?何の警告音なの?
「はゎゎゎゎゎゎ…」
凄まじい警告音が響き渡る。まるで泥棒に侵入された時に警報を鳴らしてセキュリティを呼ぶ時みたいな凄まじい音だ。今回はセキュリティではなくてケイスケのドタドタという足音が響き渡って来る。
部屋の扉を開けたケイスケが、
「なななななな、なにをしてるんですかぉ〜!!!」
と叫ぶ。
「いや、あの…電源を切ろうと思って…」
「あーあーあー!!とんでもないことになって…!!ひぃぃぃぃぃぃ!!!RASの電源もNASの電源も押してるじゃないですかぉ!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあ!!!」
「えっと…何か手伝える事は…」
「え、なんでここ燃えてるの?なんでこれ焦げてるの?!何をしたらこんなことになるんですかォォォッ!!」
「いや、あの、それはですね」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあ!!!」
「この警報音は何なの?」
「これはUPSの警報音ですォォ!!もうキミカちゃんはボクちんのパソコンに触っちゃダメなのー!!」
「…だってパソコンの電源を切ったりしなきゃと思って」
「これはサーバだから電源を切ったりしなくてもいいの!!」
「あぁ、そうなんだ…ふぅ〜ん…」
それから小一時間、ケイスケは俺が壊した(と思われてる)Vnix周りの環境を再構築していった…。
俺は時々ケイスケの部屋に行って、ドアのほうからチラ見とかしながら確認していた。ケイスケの部屋とリビングの往復だ。
「ふぅ…」
リビングに居る時にケイスケが現れて、
「やっと復旧作業が終わったぉ…」
「わ、悪かったね!電源切ろうとしただけだけど!」
と、俺はプイッと顔を逸らして謝る。
「もう、キミカちゃんはパソコンとか触る資格なんて無いにゃん!直感で色々やってみるとか、動物的な人にはVnix触る資格ないにゃん!ずっとMap触っておけばいいと思います、はい」
「わ、悪かったね!直感的で!はいはい、すいませんでしたー(棒)これで気がすんだでしょ?」
「全然気が済んでないにぃ!土下座でもしてもらわないと全然気が収まらなくてまた一週間ぐらい眠れない日々を過ごして不健康とストレスのせいで体重が減ってしまうにゃん!」
「ゲザ(土下座)ればいいんでしょォ!ゲザればァ!!」
と、俺はグラビティコントロールで自らの身体を持ち上げて2メートル上から土下座をしてやった。
「すいませんでしたァ〜(棒」
「ど、土下座してるのに全然上から目線ですぉ!!っていうかどうして土下座してるのにドヤ顔になってるにゃん?!」
「凄いよキミカちゃん…王者の土下座だね」
「こんなハイレベルな土下座は初めてみましたわ…」
ったく、Vnix信者はいちいち細かいことにうるさいな!!