120 第1次マカー vs ドザ闘争 7

ケイスケは俺を部屋に案内してくれた。
マコトはパソコンはよくわからないからと、ナツコはケイスケの部屋に入りたくないからと来なかった。
「じゃーん!これですにぃ!」
「こ、これって、ディスプレイとキーボードだよね…」
「ですにぃ!」
えと…画面をコントロールするアレはないのかな。アレだよ、アレ。タッチパネルの液晶がついてるアレ。
「ん?何を探してるんですかぉ?」
「画面をコントロールするアレは?」
「ンなものないですぉ!!」
「え、マジで…ディスプレイとキーボードだけなの?本体は?」
「本体ぃ?」
「えっと、データディスクとかCPUとかMPUの…」
「あぁ、これですにぃ」
俺は机の隅っこにある5センチの正方形の形をした「ドロイドの思考回路に設置してある電磁回路板」みたいなのを見つけた。
「なにこれ…剥き出しになってるじゃん?」
「これでいいんですにぃ…ヒヒヒ」
「え?これ、本当はカバーかかってるんじゃないの?こういう使い方しても大丈夫なの?っていうか…デザイン的に…」
「マカーはすぐにデザインデザイン!デザイン教ですかぉ!!パソコンは外側よりも中身なんですにぃぃぃ!!!発熱するからこうやって完全にオープンにして風を当てたり水冷プールに突っ込んだりするんですぉ!!それにいざって時にいじりやすいじゃないですか…ティヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…」
不敵な笑を浮かべるケイスケ。
「いじりやすいって…なんでいじらなきゃいけないの…」
「ハェァ?」
「店やネットで気に入ったのを買ったり、カスタマイズして買ったりするわけじゃん?どうしてそっからいじらなきゃいけないの?」
「」
その首斬りで死刑になった後に死刑囚が「あれ?俺しんでんの?」って感じで目をひん剥くのやめてほしい。
「何を言ってるんですかォ?」
「何って…」
「いじるのが楽しいからいじるんじゃないですかァァァァ!!!」
「え〜…そっからなの…」
「そっからなの!!パソコンの楽しみは自分で組み立てて超ハイスペックのモデルを自分で創りだすことなんですぉ!その為には余計なクソ処理をするMapとかUindowsとかは要らないんですニャン!」
「あぁ…そう…。ま、あたしはパソコンの中身はわかんないから、組立とかは全部工場の人にやってもらうことにするわ」
「ちなみにこの超ハイスペックVnix搭載モデルはKEISUKE.SPECIAL.OF.THE.HELLですにぃ♪」
「あ〜、はいはい。それで、これってどうやって使うの?」
「フヒヒヒ…Vnixは全てコマンドライン入力方式、そしてスクリプト実行方式ですにゃん」と言ってケイスケが見せるのは真っ黒な画面だ。なんだ?壊れてるのかこれ?
「ケイスケ、これ壊れてるんじゃないの?何も映ってないじゃん」
俺はそういってモニターをペシペシ叩いた。
「映ってるにぃ。ほら、ここに」
「え?」
よく見ると画面の一番上に『Keisuke.The.Mad.Scientist $ 』と表示されていて、カーソルが点滅している。見たところ、ケイスケの名前の後に中二病臭い何かがあって、その後に『$』ドルのマークがある。これは何を意味するんだ?ドル(金)が欲しいってこと?
「な、なにこれ…なんなのこれ…なにこれェェェ?!これだけ?全然綺麗じゃないよ?何なのこの文字列?これで何をしようっての?」
「これから広がる無限の可能性…ククク…」
「いや広がらないよ!!この文字から何を連想すればいいんだよ?!ある意味ここから想像出来るとか凄いよ!どんだけ妄想癖持ってるんだよ!!何をしたらいいのか全然わかんない!」
「これはコマンドラインといって、ここにパソコンに対して行わせたい命令を入力するんですにぃ」
「行わせたいって…こんな真っ黒な画面とちょっと文字が上に表示されてるようなレベルのパソコンにやらせたいことなんてないよ…」
「とりあえずls -w -s -x3s:4pakと入力するにゃん」
「なんなのその暗号!!!」
「暗号じゃなくてちゃんと意味があるにゃん」
「意味があるなら人間様に伝わるような文字列にしといてよ!!」
「ま、とにかく打ってみることですにぃ」
俺は渋々その文字列を入力する。
「おぉぉ…」
よくわからないけどダラダラと文字列が表示された。けど、本当によくわからないんだけど、何が表示されてるのかもわからない。
「ククク…これはこのVnix内にあるメモリ情報を16進数の4バイトダンプ方式で画面にずらずらと並べる命令ですにぃ」
「別にそんなことしたくないよ!!もっとわかりやすいように並べてよ!!だいたい16進数とか4バイトのダンプ方式とかなんなんだよー!!!ジョジョに例えてよ!ジョジョに例えて言ってみてよ!」
「Vnixを使うまえに言っておくッ!おれは今やつのコマンドラインをほんのちょっぴりだが体験した。い…いや…体験したというよりは全く理解を超えていたのだが…あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!『おれはコマンドラインに適当にls -w -s -x3s:4pakと入力したらこのわけのわかんない文字列がダラダラとクソみたいに画面に表示されてきた』な…何を言っているのかわからねーと思うがおれも自分が何をしてるのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ…もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」
「わかってないじゃん!全然わかってないじゃん!!」
「ま、そういう感じですにぃ。使ってみたら意外といいと思いますにゃん。キミカちゃんもこれで今日から立派なVnixマニアですにゃん」
「いやいやいや…」
ケイスケは部屋を出ていく
おそらく1階で食事の続きをするのだろう。
俺はケイスケの部屋に一人残された。