117 コミュニケーション障害 6

俺はキャプテンことアキラの浴衣の袖をツンツンと引っ張って、
「キャプテン…ハンカチ持ってる?」
と尋ねる。
「う、うん、あるぞ?」
「貸して。絶対に洗って返すから!」
お願いのポーズをとる。
「ん?いいぞ?どした?」
「ちょっと大洪水に」
「大洪水?!」
トイレまで行こうかと思ったけど無理だ。この位置から足を動かしたら愛液がビチョビチョと浴衣を濡らしてしまう。仕方がない『拭くは一瞬の恥、拭かぬは一生の恥』の精神である。
「ええぇぇぇぇぇぇえええっ?!」
これはキャプテンの驚きの声。
俺が浴衣の裾をひっぱり上げてパンツをずり下ろした光景を見ての男子水泳部キャプテン、アキラの驚きの声である。
「よいしょ…ごしごし」
「ええぇぇぇぇぇぇえええーーーーーーーーー?!」
「うへへ…大洪水…」
「大洪水ってそこの事なのかァァァァァァアァ?!」
「うん」
「…そ、その…」
「?」
「なんていうか、その…俺も…拭いてやろうか?」
「え?」
「えっと、嫌ならいいんだ!嫌なら!」
「え?え?え?」
俺はゆっくりとベンチに腰を下ろさざるえないシチュエーションになってしまい、硬直。ゆっくりとアキラは俺の太ももを…「あんよ」を手でベンチに押し上げてM字開脚姿勢になった…。
「ごしごし…」
「…」
「ごしごし…こ、こういう感じか?」
「…」
って、何やってんねん!
何やってんねん俺は!!
何やってんねん!キャプテン!!
いつから恋人同士になったんだよ?!
誰が青姦するって言い出したんだよ?!
「なんだか、拭いても拭いても湿ってくるような…」
「…」
「藤崎?」
「ん…んん…」
「き、気持いいか?」
男が股間を触ってくるのは男としてキモい事このうえないのだが、何故か身体の反応のほうが…先に行っているというか理性のそのまた先の方へ身体の反応が進んでいるので俺の思考回路をどんどん鈍らせる。
しかも周囲では青姦カップルがセックス始めてるわけであって、俺にすればアダルトビデオを見ながら股間にピンクローターを押し付けているのとなんら変わりないわけであって…。
しかもそのローターは今回のは不規則な動きをするのである…。
「もうハンカチとか、そういうの、」
と俺ははぁはぁと吐息を漏らしながら、愛液も漏らしながら、涎を垂らしながら、キャプテンの手を退けた。
糸がハンカチと俺の股間の間に見える。
「凄い…濡れてる…」
とアキラがいう。
その指先は俺の股間の割れ目の部分を撫でる。そのたびに身体に電気でも走るかのようなHな感覚が流れていく。
ちらっとキャプテンの凄いイチモツの外観だけが見えた気がする。うわぁ…すっごい勃起してる…鬼のようにそそり立ってるのが浴衣の上からでも見える。これが入ったら痛いだろうなぁ…この身体は処女だし。
「な、舐めて、そこ…」
って何いってんねん俺は!!
駄目だ、頭の思考がエッチな方向にしか向いていない。これは男のサガなのか、それとも女のサガなのか?
「い、いいのか…?」
「うん」
そう言って俺は自ら「くぱぁ」をしてしまった。
V字開閉である。
またの間に温かい空気がかかる。
そこに男の顔が近づいていて興奮し息を吹きかけているのがわかる。
「ひゃっ!」
突然の刺激に背中から電気が走る感覚。
舌がねちょっと股の間にあるおまんこ的なものにべっとりと当たるような感覚…。男から女へと変化してる俺からこの感覚を男バージョンで表現するのなら金玉を舐められているような、ってそんな想像はしたくない!!それに快感を感じたのなら完全なホモだ!
でも、そういう罪悪感的なものが逆にどんどん快感を刺激する。
「あっ…あっ…あん…あ、はぁ…」
自分で聴いていても興奮するような甘いアニメ声が響く。
それと共に「ちゅ、ちゅぽ、ちゅちゅちゅ、ちゅぽ」という股間を吸うような舐めるような音が聞こえる。
アキラ、顔を真っ赤にして俺の股間を舐めてる。
舌の感覚は膣穴の外側から中側まで色々…アダルトビデオのシーンでは男性が女性のあそこを舐める時は感覚が鋭いところを重点的に舐めるのだが、そういう知識がアキラにはないのだろうか、もうそこらじゅうを舐めている。お尻の穴とかも全部。
いかん…こりゃぁ気持ちえぇ…。
家でオナニーするよりか10倍ぐらいは気持ちえぇ…。
しばらくしてからアキラは俺の股間から顔を離した。
糸を引いている。愛液の糸が…。
「うわぁ…凄い汚しちゃ、」
と言いかけた時、
「ふ、藤崎!!」
ガシッとアキラの両手が俺の背後に回った。
椅子に座っていたが軽々しくも俺の身体は持ち上げられて、アキラが座った状態の駅弁?みたいな姿勢になっている。
手が腰に回ってお尻も「むんず」と鷲掴みして、既に全身が性感帯になりつつあった俺を刺激しまくる。
はだけた浴衣から見えているおまんこ的なものはアキラの完全に勃起したアレに押し当てられて布の感触がする。愛液が思いっきり服を汚してしまうなどと考えていると、
「ふ、藤崎!!お、お、俺は、お前の事が、す、す、好きだ!」
え、ちょっ、このシチュエーションで告白?!
そのまま唇が俺の唇を塞いだ。
もう愛液でビショビショになっているアキラの唇が…俺の唇にって、おいおいおい!何してんねん!男同士でキスとかあり得ないぞおい!
「ん!んー!!んんー!!!」
「ん…んん…」
「ん!んーーーーー!!」
「ん…(ちゅぽ」
高揚した顔で俺を見つめるアキラ。唇と唇は唾液なのか愛液なのかもう色々混ざり合ってわからない体液で糸を引いている。
そしてその浴衣の上からは鬼のようにそそり立っているアレが…。
「はぁ…はぁ…」
と吐息を履いている俺。
唇から漏れているアキラと俺の混合唾液が顎を伝ってポタポタとはだけた浴衣の間から胸の谷間へと落ちているのがわかる。
コミュ障な俺はこの次にどうするべきかわからなくなっていた。
エロゲ的展開としては怒るかそれともこのままセックスまで進むのかという分岐点に来ていると思う。
怒る時は思いっきりビンタをするべきなのか?
クソッ、こんな時でもコミュ障かよ。
「ご、ごめん…」
そんな俺の顔を見下ろしているアキラ。
何故無理やり唇を奪っておいてそんな困惑した顔をしてるのか?
俺にいつビンタを食らうだろうか、恐怖しているのか?
でもそんな風にはみえない。
大切なものを傷つけたような、懺悔をするような顔。
アキラの大きな手のひらが俺の頬をそっと撫でる。
そこには温かい愛液や唾液以外のものがあった。
涙?
な、泣いてるのか?
俺が?
え?なんで?
「ごめん、ごめん!」
深々と頭をさげるアキラ。
そんな様子を見下ろしながら俺は浴衣の袖で頬を伝う涙を拭いていた。あれれれれ?
おかしいな?
俺はファースト・キスじゃないはずなんだけど、なんでこんなに驚いた感じになってるんだ?
相手がごめんいって言ってるんだ、ここは何か返事を返すべきだろうが、何も思いつかない。ごめんからどういたしまして、だっけ?それはありがとうに対する返答じゃないか。
「別にいいよ、ファースト・キスじゃないし」とか「何キスまでしてんだよバカ!」とか「酷い…お嫁にいけないよ…」とかか?どれも場違いな気がする。そもそも俺は今怒っているのか?悲しんでいるのか?嬉しいのか?それもわからないのだ。
はだけた浴衣を無言で元にもどす。
気がつけば他の部員達も「ここにいたのー?」とぞろぞろとやってきてる。でも空気が思いっきり違う。
…俺はこの日、最後の最後まで無言だった。