104 母と子 4

「それで?あなたの目的は果たせたの?」と、俺とコーネリアに向かってイカサマ霊能者である高倉のオバちゃんは言った。
「Yes!」
そうコーネリアは言った。
確かにあの後、コーネリアは今までと違って「物質変換」の対象の構造を予めすべて把握しなくても創り上げることが出来るようになった。ただし条件として、対象は今まで人間の技術で一度でも創られた事があるもので、なおかつ、コーネリアがそれがどんなものなのか、外観でも名前でも、とにかく紐付けられている事。
知りもしない、聞いたこともない、名前も知らないものを突然創りだす事はできない。それが世界の何処かに存在して、それを知っている者が仮に居たとしてもコーネリアが知っていなければ創りだすことはできない。が、大きな進展だとは思う。構造を知らなくても創りだす事が出来るってまるで小人がつくっているかのようではないか。
小人…が…。
そう、小人が造っているかのように、造りだすスピードがなんだか遅いような気がするんだが…。一度の変換可能な物質の量が少ないって事なのかな?コーネリアは以前は爆弾を作っていたが、構造を知っていても大体大きくても30センチぐらい。一度に沢山の物を作るとそれぞれが小さくなる。キサラは30メートルぐらいのアサルトシップもあっちゅうまに造ってたからな、アレに比べるとまだまだ子供のような。
「そう、よかったじゃないの…」
王座のような椅子に座ったイカサマ霊能者は深い溜息をついた。
「どしたの?」
「なんかねぇ…どうして私のところに来たんだろうって思って」
「幽霊?」
「うん」
「さぁ…?」
首を傾げる俺の代わりにコーネリアがその返事をする。
「同ジ気持チダッタカラデス」
と、言った。
「同じ気持ち?私は子供はいないわよ?」
「No。貴方ハ母親ハモウ側ニ居ナイト思ッテイタ、ソシテ虐待ヲ受ケテイタ子供モ、母親ハモウ側ニ居ナイト思ッタ。誰モ自分ヲ助ケテクレル人ハ居ナインダト…。ダカラ幽霊ハ貴方ヲ選ンダノデス、『ソウジャナイヨ』ト伝エタクテ。貴方ニモ『母親ハズット側ニイル』ト伝エタクテ。貴方ハオ母サンノ事ヲ信ジテナカッタンジャナイデスカ?」
「…」
イカサマ霊能者である高倉のオバちゃんはそれを聞いてから黙り込んでいた。膝に肘を立てて顔を覆って、ため息をついた。
そして言った。
「母は私を残して自殺したわ。それからが私にとっての人生の転落だった。もちろんそれまでもシングルマザーで決して裕福じゃなかったけど唯一の支えだった母が死んで、どん底に落とされ、孤児院から再スタートしなきゃいけなくなったのよ…これでも母親がずっとついていてくれてたと信じれる?一人ぼっちにさせらえれたのよ?」
「信ジル事ハ結果ジャナイ…私ハソレヲ知リマシタ」
「…」
「結果ガアッテ、初メテ信ジテタラ、私ハ一生母ノ事ヲ信ジレナカッタ。母ガズット側ニイテクレテタ事ヲ。デモ今ハワカル。マズ『信ジル』事デス。ソシテ答エテクレタラ、次ハ『感謝』シテクダサイ」
「そうね…。私が今まで生きてこれたのは、きっとどこかで母が見守ってくれてたのね。そうじゃなくても、そういう事にしておくわ」
そう言って高倉のオバちゃんは笑った。
結局、コーネリアのグラビティコントロールは失われる事なく、青の目の能力であるアカーシャクロニクルを手に入れた。返りはドロイドバスターに変身後、2人で空中散歩をしながら帰宅。
翌日学校ではキサラがコーネリアの進化を見たいと言ったのでまたしても俺達は召集されてD部の部室へと集まった。
「それじゃあいくわよ!さぁ!私と同じ物を造ってみて!」
キサラは他人の目など気にもせず(偶然にも生徒は周囲に居なかったからよかった)ドロイドバスターへと変身して地面からアサルトシップを造り出した。相変わらず凄い物質変換の能力である。
「HAAAAAAAA!!!」
気合を入れたコーネリアも同じように造り始める…のだが、遅い。めっちゃ遅い。やっぱり大きなものを造るのは経験がいるのか?
「え、ちょっ、なんでそんなに遅いのよ?」
「ワカリマセーン!!」
「じゃあ、こういうのはできる?」
そう言ってキサラは足でつんと地面を突付く…と、あっちゅうまに地面から鉄の棒がニョキっと生えてた、危ない。
「Yes!」
コーネリアも同じ事が出来るようだ。鉄の棒は同じぐらいのスピードでニョキっと生えて中庭には鉄の棒が2本突き刺さっている状態になる。あぁ、そうか。つまり単純な構造ならキサラと同じぐらいのスピードで造れるって事か。
「ふむふむ、なるほどね…」
「わかったのか?」とソラがキサラに聞く。
「わかったわ。赤の目の能力がいるのね!」
おいおいおいおい、今度は赤の目かよ!!
「つまりキサラと同じ状態にならないと駄目って事か」
そう言ってソラはキサラのオッド・アイを見つめる。
「ソノ目ヲ手ニ入レルニハドウスレバイイノデスカァ!!」
「ん〜…あたしはもともと赤の目から青の目へ転向したからオッド・アイになったわけで…どうやって赤の目になったのかはわからないわ」
「Nooooooooooooooo!!!」
「赤の目に転向した人に聞かないと」
「ドコニイルノデスカァ?!」
「さぁ?」
「ナラバ…最後ノ手段…。ソノ目ヲ奪イ取ル…シカ…ナイヨウデスネ…。ソシテ万華鏡写輪眼ヲ開眼シ、イズレハ輪廻眼ヲモ開眼スルノデス…チャクラノ神秘ヲ解キ明カスノデーッス…」
「この私に勝てるかしらぁ…?全ての忍術をマスターした忍術の開祖、『六道のキサラ』に…!!」
とキサラもコーネリアも異様な構えで対峙する。白人のアニオタがなんちゃって忍者を演じてるようにしか見えない。情けない。
…そろそろ誰か止めてあげてよ。
面倒くさい展開になりそうだしさ…。