102 教祖誕生 6

今日は高倉のオバちゃんの身体の調子が悪いようで、その代わりとして教祖様を演じる事になった。
安っぽい台本が既に用意されており信者の前でそれを読むだけで1人当たり参加費用3000円で50人居るから15万円…え?マジで?台本通りに読めば15万円も貰えるの?
知ってか知らずかメイリンはさっさと教祖コスチュームに着替えていた。俺達は教祖様の使いのコスチューム。教祖もその手下(俺達)も神社やらで巫女さんが着ているものよりもちょっとばっかりお洒落な感じの巫女服である。綺羅びやかな金属質の装飾品がチリンチリンと音を立てて高級感を漂わせている。
「き、き、キミカちゃん、か、可愛いよ…」
と俺を見て言うマコト。しかしマコトもマコトでボーイッシュな女の子が綺羅びやかな衣装を無理に着てる感じがしてとてもエロい。
「マコトも可愛いよっ」
と俺は人差し指でマコトの胸の乳首の当たりをツンと触る。
「はぁぁっん!や、やったなぁ〜!」
今度はマコトが俺のおっぱいの谷間にスポっと人差し指を差し込む。
「やーん!」
などとフザけていたら、
「そろそろお時間です」
と先ほどの信者らしき人がやってきて俺達を屋敷の中央にある玉座の間(って俺は呼んでいる)に連れ出す。
先頭にメイリン、隣にコーネリア、そして後を俺とマコトが続く。
しばらく歩くと例の中央にある玉座の間から(ドスン、ドスン)と音が聞こえるのだ。誰だ?無礼な奴は?だいの大人が騒がしい。
しかし、その玉座の間に入った俺達が目の当たりにしたのは、一般人ならドン引きするような宗教の臭いが濃い光景であった。
ある者はあぐらをかいてそのままケツの筋肉だけでピョンピョンとジャンプしている。それをやってると空を飛べるようになるんだろうか、そのじつはケツの筋肉が鍛えられるだけでホモにウケがいいだけだろうに本人は信じ切ってるんだから恐ろしい。そして時々、リキみすぎたのか(ぷりゅ)とか(ブホッ)と屁をこいている。
ある者は頭に電線が沢山ついている精神病院に置いてあるような脳波を計る奴?を被って必死に拝んでいるの。脳波を測ってもらっているのか?それとも脳に電流を送ってショートさせようとしているのか?いや、時々白目を剥いて倒れてピクピクと痙攣させているから後者のほうだ。脳に電流を流しているらしい。それが身体にいいんだと信じ切ってるんだ、末恐ろしいよ。
ある者は頭に日本国旗の鉢巻を巻いてお腹には我国を想うと刺青がしてある。背中には我国を憂うと刺青だ。そのマジキチ男は筋肉モリモリで「フンヌッ!フンヌッ!」と鼻息を荒く木刀を振り回している。
ある者はゴロゴロと寝転がって「にゃー!!!にぃぇぁーーーー!!!」と猫?の真似のような事をしている。それの親らしきのが隣にいて「そぅ?お腹減ったの?もうちょっと我慢しましょうねー」ってマジキチ親子だ!!ヤバイぞ!近寄るとアレが伝染る!!逃げろォォォォォ!!!
「き、キミカちゃん、ヤバイよ!危険だ!ボクの後ろに隠れてて!!この人達絶対にヤバイ人達だ!!」
うん、俺もそう思う。
メイリンはそんなのはまったく気にならないのだろうか、それともあのイカレタ連中はただの金づるに思えるのか悠々を玉座に腰を掛けた。
一方でコーネリアはマジでドン引きだ。
さっきの動物霊に取り憑かれたんじゃねーのコイツ、って思えた女がゴロゴロと床を転がってコーネリアに近づいてきた時は引き攣った顔で攻撃を交わしていたからな。
「皆様、お静かに、お静かにぃぃ!」
俺達をこの玉座の間に案内した信者の1人が叫ぶが、獣小屋みたいな場所で連中はまったく遠慮をしない。なんなんだ?来る場所を間違ってないか?檻がついてる病院に黄色の救急車で運ばれたほうがいいような連中ばかりが屯してるぞおいおい…。
すると突然、身長の2倍はあるかという矛(メイリンのメイン武器)を引っ張りだした教祖様(仮)はパシュッパシュッとカメラのフラッシュのような強い光と音を立たせる。つまりはレーザーを出して信者を攻撃したのだ。信者たちの足元には黒い後が残る…これはレーザー痕ですね、わかります。
一気に静まる会場。
動物霊に取り憑かれた女は「フーッ!」と荒い息をたててメイリンを睨む。あぐらのままジャンプをしていた男達は目の前に黒い痕が残ったのを見て動きを止める。頭に変な脳波測定器みたいなのを付けていた連中はそれを取り外してメイリンを見ている。
「静まれ愚かな人間どもよ!」
メイリンが吠える。
「キミカ、浮かせてくれ」
え?う、浮かせる?浮かせればいいの?
俺はグラビティコントロールメイリンを浮かせた。するとメイリンは変身時にはよくやってるエナジーフィールドらしきものを周囲に放ち、髪の毛をふわふわと漂わせた。会場はメイリンの宙に浮かんだ身体と、背後から輝く神々しい光(エナジーフィールドによる光)にただただ驚いて息を飲んだ。
これはなかなか面白い。
俺は今度はマコトにもグラビティコントロールを働かせて浮かし、俺も浮いた。そしてマコトと俺の2人はあぐらを掻いたまま宙に浮かんで会場を飛び回ったのだ。案の定、コーネリアもグラビティコントロールで空中散歩をして連中を驚かせる。
それを見て、さっきから真剣にあぐらジャンプをして屁までこいてた信者の1人は「教祖様!私も、修行を重ねれば空を飛べるでしょうか?!」とメイリンに問う。
メイリンは、
「修行よりもお布施大事。一回1500円で浮かせてやる」
とか言い出す。おい、俺が浮かせてるんだけど…。
マコトが俺をフォローして、
メイリン!キミカちゃんが浮かせてあげてるんだから、キミカちゃんにもちゃんとお金を払うべきだと思うよ?」
と言ってくれt、…いやいやそうじゃなくてさ…。
「ならキミカには一回500円払う」
「おーい…」
空気を呼んだ信者(あぐらジャンパー)は俺のほうを見てから、
「キミカ様!この私めを神力により浮かせてください!」
と言う。
そんなに浮きたいのか。
俺はグラビティコントロールを若干強く勢いをつけてそのあぐらジャンパー男に働かせて一気に空へと押し上げ、天井に頭を突っ込ませた。
ぐったりと天井から垂れ下がる身体。
「他に浮きたい人は?」
と俺が聞くと、他のあぐらジャンパー達は顔の前で手を振って「No」のサイン。しかし、勇気あるあぐらジャンパーの1人が震えながら俺に向かって、「お願いします」と言ったのだ。俺はその「お願いします」の「お」のところでグラビティコントロールを働かせて男の身体を天井へと突き刺した。2体目のハングドマン完成である。