102 教祖誕生 5

山口から島根に飛んで飛んで、出雲大社上空。
「凄いね!あの神社がその霊能者さんのいるところ?うわぁ!観光客でいっぱいだ!!やっぱり霊能力があるからみんなお祓いに来てるのかな?!うわぁぁぁっ!!!凄い!出雲ソバの店もあるね!」
「そっちは出雲大社だよ、そっちじゃなくてこっちのほう」
と俺は出雲大社を過ぎて海岸沿いのほうへと進む。
するとどの文化圏の宗教に属しているのかぱっと見ても判断がつけ辛い建物が眼下に広がっている。
「うわぁぁぁ…なんだか破防法が適用されそうな悪の宗教団体の本拠地みたいな建物があるね…」
「よし、到着…っと」
「えぇぇえ?!」
「さて、ついたよぉ」
「えええええええッツ?!」
破防法が適用されそうな悪の宗教団体の本拠地、のような建物が並んでいる敷地内に着陸。そして俺達は変身を解いた。
メイリンはスーッと息を吸い込んで、
「金の匂いがプンプンする」
と一言。
最初は気付かなかったが、この敷地内には様々な文化圏で手に入れたであろう骨董品が並んでいたのだった。つまり、これらは何らかの目的の為に作られたとか手に入れたとかそういうものではなく、貯まりに貯まりまくった金の使い道として選んだ末の結果だったのだ。
確かにメイリンの言うとおりだ。金の匂いがする。
長い長い境内を歩き、そして入り口。
向こうから宗教団体の信者らしき奴がテコテコとやってきて俺達に軽くおじぎをすると「申し訳ございません、高倉様はご療養の為、お会いになれません」などと言うのだ。
「Heeeey…アポイントメントハトッテアリマーッス!」
「あぁ、コーネリア様でしたか」と、元気なくコーネリアに返事を返すと、その怪しげな宗教団体の信者のような人はテコテコと屋敷の奥の方へと歩いていった。
あのオバちゃん、良い物食べ過ぎて風邪でも引いたのかな?
「キミカ!コレは持って帰っていいか?!」
興奮した顔で様々な骨董品を見ているメイリン
「神聖なものだから持って帰ったら呪われると思うよ」
「持って帰ってもすぐに売るから大丈夫!」
売るんかい。
マコトも骨董品の列を見て回り、
「なんだか貧乏人が金を突然手に入れてそれを自慢するためにとにかく高いものを買って買って買いまくったみたいな、品の無さがでてる気がする…ボクの住んでた台湾にも華僑の金持ちが居たけど、すっごい下品な趣味だったよ。統一感もないしさ」
「貧乏人がお金を持つと下品になるっていうしね」
なんて言いながらも俺とマコトとメイリンは屋敷の奥へと続く廊下に並べられた統一感のない骨董品の列を見て回っていた。
するとトタトタと奥から先ほどの信者(多分)がやってきて、
「高倉様はお会いになるそうです」
と言った。
そして俺達は高倉のオバちゃんへの謁見が許された。
信者っぽい人に連れられて高倉のオバちゃんが休んでいるというプライベート・ルームへと通される。あの下品な装飾がさらに下品に散らかっているような部屋で豪華なベッドの上に寝ている。
そして薄いカーテンを退かせやつれた顔を覗かせる高倉。
「よくきたわね…」
かすれた声で言う。
「風邪でも引いたの?」
と俺が聞くと、
「もう何がなんだか…昨日の夜からこうなのよ」
「風邪じゃん、熱もあるみたいだし」
「(首を横に振って)違うわ、違うのよ。昨日の夜、変な夢をみたのよ。顔のやつれた女が枕元に現れてね、私の顔を見下ろしてるのよ」
俺はベッドの周辺を見てみるが、俺達以外には誰もいない。
「今じゃないわ、昨日の夜の話よ」
マコトはそれを聞いて俺と同じくカタカタと小さく震えて、
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、幽霊だよ!!うわぁぁぁぁ!!」
と俺の腕をガシっと掴んで言った。
「またまたご冗談を(震」
と俺も震える声で冗談だと信じてツッコむ。
「じょ、冗談なんかじゃないわ!!ゆ、夢だとは思うけど、気味悪い夢だったわ…本当に恐ろしい!!」
コーネリアはニヤニヤしながら、
「Ghost?ソンナノ居ルワケアリマセーン!!」
と言っている。
「わ、私もそう思ってたのよ!!昨日の夜の夢では髪が黒くて長い女が私の枕元に立って見下ろしてるのよ、それでね、朝起きたら…」
震える手で高倉のオバハンが差し出したのは長い黒い髪。
「「うわぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
俺とマコトは叫んで後方3メートルへ飛び退いた。
「HaHaHaHa〜!!!(呼吸停止)…HaHa!!Haーーーー!!」
大笑いするコーネリア。
「私だって最初はそんなものは信じなかったわよ、でもこの屋敷で髪が黒くて長い女は居ないのよ?!」
確かに、俺もマコトも変身前は髪が茶色(栗毛)だし、コーネリアは金髪でしかも変身前はショートヘアー。そして唯一のロングヘアー・黒髪のメイリンは今日初めてここへやってくるからありえない。
「い、今もなんだかこの部屋にあの女がいそうな気がするのよ…」
確かに、落ちてた髪の毛とほぼ同じ長さの黒髪ロングのメイリンがプライベート・ルーム内の骨董品を物色しているな。
「Hey!コンナ感ジノ女デスカァ?!」
やると思ったよ。
コーネリアはメイリンを掴んで高倉の前に連れてくると、寝ている高倉の上にメイリンの顔を近づけさせたのだ。
「ぎゃあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
高倉は目を白黒させて体中を驚きのあまり痙攣させたのだ。
「人の顔を見るだけで、叫び声あげる、失礼だ」
そうクールにキメて、ウザそうにコーネリアの手を振りほどいて、メイリンはまた部屋の中の骨董品を物色し始めた。
「よ、よくみたら違うわね、あんな感じじゃなかったわ、もっとこう、顔がやつれてて、そうね…年齢は30か40か、それぐらいだったわ」
「幽霊ナンテイナイトオモイマーッス…ソレハキット、記憶ノ混濁デスネー。脳ガ記憶ヲ整理スルトキニ、眠リガ浅イト、整理中ノ様子ヲ見テシマウノデーッス。脳ガ創リダシタ幻影ニ過ギマセンンン…」
「そ、そうね。幽霊なんているわけないわよね。そうよ、そうだわ、まったく私ったらちょっと風邪引いて寝込んだからって変な夢見てしまって…。あぁ、そうだわ。コーネリアだったかしら?」
「Yes?」
「弟子にお願いがあるんだけどね、私の代わりをやってくれないかしら?新興宗教の教祖をしてるんだけどね、有り難そうな事を信者の前で言ってくれればいいから。台本ならそこの机の上に置いてあるから」
だ、台本通りに読むだけでいいのかよ…。
本当にとんでもないなぁ、それでお布施とか言って信者達から金を取るんだろぅ?フザけた連中もこの世にはいたもんだよ、ったく。
って、何メイリンやる気になってるんだよ!!
「おい、その役、私がやる」
とか言い出すし。
メイリンは弟子じゃないじゃん」
「お布施を貰える、違うか?」
「まぁ、お布施は貰えると思、ちょっ、えええ?!」
そんなやりとりを見ていた高倉はまったく異論を唱えず、
「だれでもいいわもう、じゃ、メイリンさんお願いね」
とか言い出すし。