102 教祖誕生 1

ソラは先程のまとめに続いて、言う。
「俺にはカルマそのものがどういうものなのかは分からないが、カルマ云々という難しい言葉を使わなくても別に言い方はある。おそらくは生まれてきて色々な経験を得るうちに自分がどういう属性になるのかを人それぞれ選択してきているんだろう。だから魂が選んだ結果だと言える。例えばキミカは今まで友達が居なk」
「だからその話をだすなァァ!!」
俺は地団駄を踏んだ。
「悪い悪い。コーネリアの場合で言おうか。コーネリアは今まで友達も程よく居たとして、その中で常識を重んじて仲間意識も持っていた。その結果、赤い目の能力が使えるわけだが、何故目が青いのか、それはドロイドバスターになる時、どこかしらで自分は1人ぼっちだという認識があったんだろう。今はこうやって友達に囲まれているから、いずれカルマの転向が起きるかもしれないな」
と、ここまでソラが説明したところで、メイリンが、
「しかし、キミカ友達がいるのに、未だに赤の目、転向しない」
ってまた俺の話かよ!!
しかもマコトが興奮して言う。
「そんなァ!!!キミカちゃん、ボクの事を友達と思ってないとか…うぅぅ…(涙)一緒に一つ屋根の下で暮らしてるのに!」
それに追い打ちをかけるようにソラが、
「そりゃ上っ面だけ友達のフリしてじつはいつもぼっちな人っているしな、この前だってスタバで1人でニヤニヤしながらMBAを弄ってたし、昔っから友達が居ないと逆に誰かが側にいるのが落ち着かn」
「がるるるるるるる…」
白目を剥いてソラに向かって怒る俺にマコトが言う。
「キミカちゃん!(俺の両肩を掴んで)ボクの愛が足りないんだね…そうだ!今日から毎日(小声で)セックスをしたらきっとキミカちゃんの目の色は可愛らしいピンク色に変わると思うよ!!」
「え…ピンク色とか嫌だし…」
「じゃあ赤と青のオッドアイで!」
「なんか中2病臭くて嫌なんだよね…」
「ガーン!!」
なんていうやり取りを俺達がしている間にも、キサラとコーネリアの話は進んでいた。
「幽霊ナドヲ信ジレバ転向デキルノデスカ…」
とコーネリアが言っている。
キサラは言う。
「信じれば、っていうのは心の底からって事ね!上っ面だけで信じたんじゃダメよ?今のコーネリアちゃんを築きあげてるモノ…そういう自分の信念のと反する事を信じるっていうのは超難しいわ。例えばキリスト教徒が明日からイスラム教徒になるようなものね。仮にそれが出来たとしてもじゃあキリスト教に対しての信念なんて無かったんじゃないの、って話になるわね。信じるには信じるだけの根拠がいるのよ」
「デハ…今日ニデモ、レンタリビデオショップニ寄ッテ『本当ニアッタ呪イノビデオ』最新刊ヲ借リテキマスゥ…」
キサラは変身を解きながら、
「ん〜、もうちょっとインパクトがあるほうがいいわねー。それに本当にあった呪いのビデオって時々ヤラセが入るからなぁ」
と言う。
「デハ、肝試シハドウデスカァ?」
「いいわね!」
しかしソラが間に割って入る。
「いやいや…それは肝を試すだけだろ…。そもそも霊感がなければ幽霊なんてそう簡単には見れないぞ。もっと確実に幽霊と身近な存在にあるようなのがいいな、例えば…霊媒師とか」
霊媒師!いいわね!あたし一人知ってるわよ!超優秀な人よ!」
「へぇ〜…」
そう言ってキサラの話を結構適当に流したソラに向かって彼女は、
「な、なによ?会社の事でお父様が色々と相談してた人なのよ?これだけの大企業を動かす立場の人が相談するぐらいだから、結構凄い霊媒師だと思わない?」
会社?お父様?
そういえばキサラって『柏田希沙良』って名前だったような…。どっかで聞いたことあるし、なーにか引っかかってたんだけど、もしかして柏田重工の社長令嬢なのか?
「なんで大企業のトップが会社の命運を胡散臭い霊媒師なんかに託すんだ。それに占い師ならわかるが、霊媒師だぞ?そりゃ会社の都合でクビを切った社員が自殺でもして祟られでもしたからじゃないか?」
「なッ?!失礼な事を言わないでよ?!」
二人の会話は弾んでいるが、俺は間に入って質問した。
「もしかしてキサラって柏田重工のご令嬢なの?」
「あら?最初に言わなかったっけ?」
マジかよ!!
ご令嬢何してんだよこんなところで?!
「こんなところで何してんですか…」
「何って、非常勤講師で、」
「いやいやいや、日本でトップの兵器メーカーである柏田重工の代表取締役社長の娘がなんで非常勤講師やってなきゃいけないんだよ!」
「あたしは自由が好きなのよ!フリーーーダム!!産まれてきたからには自由に人生を謳歌するのよ?それが産んでくれた人に対するせめてもの償いでしょ?」
償いっていうかむしろ罪を重ねてる感じ。
「『お父様』はキサラがどこで何をしてるのか把握してるの?」
「あぁ?(変顔で)お父様なんてどーでもいいのよ!あの人は娘の事なんてこれっぽっちも思ってない人なんだから!」
「えっと…え?…え〜…」
なんとなくは事情はわかった。…ような気がする。
キサラはこういう性格だから家から飛び出してきたんだろうか。そんな俺を察したのかソラは俺を見てから肩を竦めて(まぁ、こんな感じの奴なんだよ)的な顔をした。