101 アカーシャクロニクル・ライブラリ 4

「AkashaChronicleLibrary?」
コーネリアの頭にはハテナマークが出ている。
アカシック・レコードノ事デスカァ?」
「そうとも言うわね…。人類の、いえ、全ての生命の英知が集結しているものだと言われているわ。『アカーシャクロニクル』の全貌はあたしにもわからないから数ある能力の中の一つって前提で『ライブラリ』と呼んでるの。命名はあたしじゃなくてあたしの師匠だけどね」
そう言ってコーネリアは途中まで作っていたアサルトシップを手で触って元の土の状態へと戻し始めた。
「確かに何かを作るには設計図が必要ね。アカーシャクロニクル・ライブラリにはその設計図が収められていると思えばいいわ。実際は設計図どころか、この世の全ての知識が収められている。それを使えばコーネリアちゃんもあたしと設計図なしに物質変換が出来ると思うの。同じ青い目を持っているから大丈夫よ!」
水をさすようだがそこで俺は、
「目の色と能力とはあまり関係しないって前に言ってたじゃん」
と言った。
「ん〜…わかんないわ、わかんないのが正解。あたしも最初は設計図を見ながらじゃないと造れなかったけど今は何も見なくても造れるようになったのよ。青い目を手に入れてからね」
「コーネリアの青い目の能力は確かグラビティコントロールだったような気がする。アカーシャクロニクルが青い目の能力っていうのは違うんじゃないのかな?」
「それよ!」
「はぇァ?」
「グラビティコントロールが使えるからアカーシャクロニクルの能力が使えないのよ!」
「えぇぇ…」
そんな単純なものなのかな?
「まぁ、確かにそれは一理あるかもな」
って、ソラまで同じ事を言い出す。
俺が疑いの目でソラを見ると、
「今まで俺とコイツ(キサラ)はドロイドバスターとはやりあってきたが、すべての能力に精通したものはいなかったよ。何かが得意なら何かがダメ、人間そんなに都合よくできてはいない。例えばキミカの場合はグラビティコントロールとディビジョンコントロールが使えるじゃないか。じゃあ、同じ青い目の持ち主であるコーネリアはどうなんだ?」
俺はコーネリアを見てから、
「物質変換の能力が使えて…グラビティコントロールが使えて…そういえばコーネリアのグラビティコントロールは制御可能な重さに限度があったよね、確か…」
と、俺の脳裏にはメイリンと一緒に体育倉庫の中で思いっきり荷崩れを起こした荷物に押し潰されて救援を待っていた時の事が過っていた。あの時、俺なら変身後にラクラクと荷崩れの荷物(それどころか体育倉庫ごと)持ち上げられる事が出来るが、コーネリアにはできなかった。
「Ahh!!確カニソウデーッス…。キミカノヨウニ重タイモノハ持テマセーン…モシカシテ…私ハ物質変換ノ能力ヲ使ッテイルカラ、グラビティコントロールモ中途半端ナノカモ知レマセン…OhMy…」
「そうよ!そうに決まってるわ!だからグラビティコントロールを使わなければアカーシャクロニクルを使えるようになるわね!あたしと同じ赤い目の『物質変換』と『アカーシャクロニクル』の素質、その二つを使えばこの世に存在するものならなんでも作り出せるわよォォ!!」
「Yes!!頑張リマーッス!!」
と意気込んだコーネリアだったが、しばらく待ってから、「ドウヤッテ…ソノ素質ヲ手ニ入レレバイイノデスカァ…?」
と首を傾げる。
それにはソラが答えた。
「そりゃ、キサラが青い目を手に入れた時の…アレだよなぁ?」
「アレ?」
「まぁ、なんていうか…カルマって奴ねぇ」
キサラが言う。
カルマ…。
そういえばケイスケも同じ事を言ってた。
ドロイドバスターとしての能力はカルマに左右されると。
確か俺がボッチなのがカルマだって言ってたっけ?でも普段からボッチでいる事がドロイドバスターのグラビティコントロールとかディビジョンコントロールに繋がるのか?理屈がまったくわからないよ。ただ、一つだけわかるのは性格のようなものだってことか。
キサラは俺を見てから、
「例えばキミカはボッチだから、」
「言うと思ったよ!ボッチは関係ないと思うよ!」
クソがァ…。
「あたしのアカーシャクロニクルの能力はねぇ…魂の存在を認めた時に手に入れる事が出来たわ。コーネリアちゃんは魂とか幽霊とかそういうイカサマ臭いものは信じてないでしょ?」
魂の存在?
「Ahh…確カニソウデスネェ…」
「カルマは魂の属性がどの位置にあるか…なんだと思うわ。これはあくまで推測だけどね、アカーシャクロニクルについてはアカーシャクロニクルそのものが霊的なものだから、幽霊を信じてる、いや、信じようとしている事が大切なんだと思う。そういうドロイドバスターに出会ったことがないからあくまであたしの中での認識ね」
「フムフム…」
「物質変換能力…つまり、エレクトロンコントロール・クォンタムコントロールは社会のルールや常識を守るようなタイプの人に多いわ。あと、仲間意識が強いとか友情だとか愛情だとかに重きをおく人が多いわね!コーネリアちゃんもどっちかっていうとそうでしょ?」
「Yes」
「ま、それはあたしもおんなじだからわかるわ」
いやいやいや!!あんたは常識外れな事しかやらないじゃん!本当に言ってる事あってるのかァ?!
「そしてエナジーコントロールとかエントロピーコントロールは(メイリンとマコトを見て)社会の常識とかは無視してやたらと暑苦しい奴に多いわね!!めっちゃ体育会系の、暑ければなんでもいいってタイプ!キレやすくてすぐに周囲の団結を乱す奴ね!」
「ボクはそんな事しないヨォォォ!!!」
マコトが涙目になって言ってる。俺に向かって言ってる。
一方でメイリンは何故かドヤ顔…。
褒められてないから!
それ褒め言葉じゃないから!!
「グラビティコントロールやディビジョンコントロールについてはわからないわ。キミカがボッチだっていうのがヒントね。多分、こころのどっかでこの世界なんてどうなってもいいや的な事を考えてる寂しい奴がそうなんだと思うわ!」
「がるるるるるるる…」
言わせておけば…。ぼっちの何が悪いんだよォォォォ!!!動物で集団行動をしない奴はみんな基本的にぼっちだろうがァァァァ!!
俺のそんな叫び(心の)を知ってか知らずか、ソラがマトメに入る。
「ざっと聞いた限りだと、カルマっていうのはどこに重きを置くかだなぁ。熱血漢で情の厚い赤の目の『エナジーコントロールエントロピーコントロール』、同じ赤の目の周囲との調和とかルールを作る、守る系が『クォンタムコントロールエレクトロンコントロール』で、魂だとか霊だとか存在しないものに重きを置いてるの青い目の『アカーシャクロニクル』、そして宇宙なんてなくなってしまえ、我が道を往く…『グラビティコントロール・ディビジョンコントロール』」
おい、最後、絶対俺に喧嘩売ってるだろ。