101 アカーシャクロニクル・ライブラリ 3

そういえばさっきから様子がおかしかったんだ。コーネリアの。
突然だがコーネリアは地面に頭をつけた。そのまま後頭部を床につけて空高くにケツをあげた。当然ながらスカートはめくりあがりパンティが丸見えになった。とても恥ずかしい格好である。俺はこの体位に新体操以外では見覚えがない。
しかし、これはコーネリアの国(アメリカ)に古くから伝わる何かしらの意味がある体位なのかもしれない。これに対して日本人である俺はどういうリアクションでこれを迎えればいいのだろうか…。
「私ヲ弟子ニシテクダサーイ!!」
それお願いだったのかよ!!
土下座だったのかよ!!
「えぇ?!弟子ィ?!」
突然の申し出に困惑するキサラ。
「コーネリアはキサラと同じ『物質変換』の能力を使うんだけど、キサラほどの性能じゃないんだよ。もっとその能力について勉強したいって事じゃないかな?」と、俺がフォローする。
「そうなの?」
「Yes!」
「ま!あたしはこのドロイドバスター部ことD部の顧問だしね!部員に能力を伝授するのも顧問の役目だしね!いいわよ!」
「アリガトウゴザイマーッ!」
コーネリアはその奇妙な姿勢からお礼の言葉を述べた。
それにしても、ドロイドバスターとしての能力って人から教えてもらって使えるようになるものなんだろうか?
俺は今まで色々と使えるようになっていった様々な能力を振り返ってみる…。そういえば最初はケイスケに言われてやり方を教えてもらったような…。って事は人から教えてもらって使えるようになるのか。
グラビティコントロールについては言うまでもなく、自分がイメージした通りに物体を持ち上げたり、自分に引き寄せたり、離したり、これらを微調整する事で超能力で言うところのテレキネシスのような使い方が出来るようになる。それには自分自身の身体も例外ではなく、空を飛べるようにもなる。しかし重量制限があって変身後はそうとう重たいものでも持ち上げられるけど、変身前には車ぐらいの重量が限界だ。
次に、マイクロブラックホール。この奥義は最初はケイスケに言われてやってたんだっけ。お腹の前で手をあわせてそこに何かを産み出す的なイメージをするとマイクロブラックホールが生成されるという。最近は俺もそういう律儀にルールを守らなくても自分の周りならどこでもブラックホールを作り出せるようになったけどね。
そしてキミカインパクト。これが正式名をなんていうのかは俺は知らないけど、重力が最も大きい方向へ垂直に押し潰せる。地球上だと地球に向かって超重力での押し潰し攻撃が出来る。面白い事にこれは時間がある程度してから重力波が地面に降り注ぐ。
そういえばキミカインパクトを使ってるうちに気付いたんだけど、もしかしたらこれらの技はどこかへ申し込んでから発動されるのではないかと思っている。ちょうどネットワーク上で何かのサイトにリクエストを発行して、サイト上で処理を行なって数秒後に結果が返ってくるような。でもサイトってどこだよって話だけどね…。
後はキサラも言ってたディビジョン・コントロール
なんとなくマイクロブラックホールもこのディビジョンコントロールに属する能力な気もする。最初はケイスケに言われて「武器リスト」として使っていたけど、まさかアレは別の場所からテレポーテーションされてたとは。今は「キミカ部屋」っていう俺だけが使える異次元空間からテレポーテーションされる。このキミカ部屋は宇宙空間のようなところで酸素もないしもちろん水も大地もない。だから何かしらのモノを入れておくにはいいけども、人とか動物をここに入れると死んでしまう。
しかし、俺はメイリンが武器を取り出すのを見てるし、それを考えるとこのディビジョン・コントロールっていう能力はメイリンも使えるって事になるのだが…果たしてどうなんだろう。
今度本人に聞いてみるか。
これらの俺の能力をどれをとってみても、キミカインパクトを除いてすべて何かしらの足がかりがあったから出来た。ケイスケが裏で何かをやってるんだと思う。そういう意味ではコーネリアがキサラの指導だけで能力を強化できるとは…ちょっと俺には想像がつかない。
「では外で実習よ!」
キサラ先生の一声で俺達は中庭(旧校舎と新校舎の間の空間)へと出てきた。春のまだ冷たい風が心地いい気持ちの良い空の下、俺達は異形の力の学習をするのだ。神の怒りに触れて不幸にも全員が退学になるという運の悪い結末を迎えなければいいけど…。
「まずは力量テストよ!私と同じものを作ってみて」
そう言ってキサラは地面に手を添えた。
「ふんッヌッ!」
変なかけ声をあげるキサラ。すると土が盛り上がってどんどん変化していく。機械的な何かに凄いスピードで変化していく。…おいおいおい!目立ち過ぎるだろ!もう全長5メートルぐらいの何かになってるぞ!
「おいおいおい!」とソラが止めさせる。
既に全長が10メートルぐらいの、日本軍では一般的に使用されているアサルトシップ(彩月)が80%ぐらいの仕上りで出来上がっていた。反重力コイルを搭載して垂直離着陸が出来るヘリである。兵員の輸送だとか偵察、攻撃の補助、そして装甲車ぐらいの重さなら牽引する事もできる。大戦時の映像集にはドロイドの次ぐらいに登場する兵器だ。
「ったく、人が神経を集中してる時にィ…」
唇を尖らせてキサラが言う。
「学校の中庭に軍のアサルトシップあったらもうそれだけでアウトだろうが!大問題になるぞ!」
「すぐに消すわよ、さ、コーネリアちゃん!同じ物を作ってみて!」
「What?!」
「あれ?これが何かわからないの?あぁ…日本軍で一般的に使用されている柏田重工製のアサルトシップ(強襲艦)『彩月』よ」
それだけの情報で同じものが造れるのかよ?!
コーネリアは地面に手をついてから、
「ウーン…ウーン…」
と唸っている。
やっぱり作れないらしい。
「設計図ガナイト造レマセーン!」
ずっこけるキサラ。
金髪白人美少女のコーネリアと同じく金髪白人美少女のキサラが漫才してるような感じがして違和感でまくりである。
「いや普通、設計図がないとダメだろうが」とソラが指摘。
「はぁ?あたしは設計図無しで造るわよ?」
マジでェ?!
「え?お前設計図無しで造ってたのか?」
「あら?そうよ?」
「最初設計図を見て造ってなかったか?暗記したって事か?」
「ん?あぁ〜。なるほどね…」
「何がなるほどなんだ…」
「そうね!あたしも最初は設計図見てて造ってたわ!」
「暗記してるのか…」
「違う違う。あたしの目の能力よ!」
眼力?
突然キサラは例の「メガネを指で押し上げるような仕草」でそれを合図にドロイドバスターへと変身した。やっぱ今まで普通に教師の格好をしてた人間が突然変身すると周りはびっくりするな。
誰も見てなければいいけど…。
「(指で目を指して)あたしの目、オッドアイになってて片方が青いでしょ?この青の目の能力なのよ!!」
変身後のキサラは本人も言うように左右の目の色が違う。通常ならドロイドバスターは赤または青の目を持っている。両方の目を持っているキサラは異例ではある。
「その青の目の能力はなんなんだ?」
とソラが聞くと、ドヤ顔でキサラは
「『アカーシャクロニクル・ライブラリ』」
アカーシャクロニクル…聞いたことがあるような気がする。