100 スーパーアルティミットハイパーエターナルウルトラファンタスティックミラクル非常勤講師 2

『いったいどうなってるの?!』
と電脳通信が入った。相手はマコトだ。
『あたしも全然分かんないや…聞いてないし』
『この人ってこの前ボク達の家にきた人だよね〜…ひょっとして学校の先生だったのかな?』
『いやぁ…。違うと思うよォ…』
後は何か知ってそうな人、ケイスケだな。
『どうなってるの?』
と、俺はケイスケに電脳通信する。
『どうって、こっちが聞きたいですォォ!!』
『ケイスケも知らないの?』
『嫌ぁぁな予感がしてたんですにぃ…。多分、学校のデータベースに侵入して(ごにょごにょ)…という感じで入ったんだと思いますにゃん』
『ケイスケと同じ手口じゃん』
『人をハッカーみたいに言うもんじゃないですにぃ!ボクチンは証拠は残さず前から学校にいたかのように!』
いやハッキングした事には変わりないだろ…。
そんな裏の話を俺達がしている間にもドヤ顔のキサラはさっさと自己紹介をし始める。
「ただの人間には興味ありません!!」
ドヤ顔でそう言うと、教室がざわざわとざわめく。
「この中にエネルギーのドロイドバスター、物質のドロイドバスター、英知のドロイドバスターが居たら私のところに来なさい!」
(シーン)
うわぁぁ…。
少し間を置いてから、
「え?ドロイドバスターって?」「ほら、テレビでやってる奴だよ」「何?ドロイドバスターがいるの?」「あぁ…あのテレビのニュースにたまーに出てくる奴ね」「え?この中にいるの?」
俺とマコトはキサラの事を知ってるし、彼女もまた俺達を知ってる。知らないのはメイリンとコーネリアだ。二人の反応は…。うわぁぁ…めっちゃ目を細めてキサラを睨んでる。睨んでるよォ…。
「仮ニドロイドバスターガ居タトシテ、ドウスルノデスカァ?」
コーネリアが質問する。
「ふっふっふ…楽しいことをします…」
ドヤ顔で言うキサラ。
「た、楽しいこと…」
と、ゴクリと生唾を飲み込んで顔を赤らめているメイリン、っていうか、絶対にメイリンが想像しているような事じゃないと思う。が、構わず彼女はスッと手を上げて質問をする体勢だ。
「はい、メイリンさん!」
指名するキサラ。
「その楽しい事に双頭バイブは出てk」
「出てきません!」
速攻だ。速攻で否定された。
その時、また廊下からツカツカと足音が聞こえる。
ガラーッと教室のドアがあく。
そこにはキサラのボディガード役の男「天月翔(あまつきそら)」が居た。案の定彼はツカツカと教室に入ってくると190はあろうかという高い位置からコツンと彼女の頭を叩く。
「いてッ」
「何やってんだ!早く教頭先生のところに挨拶に行くぞ」
「ちょっとォ!今自己紹介してたのよォ!!」
「なんでドロイドが自己紹介してんだよ」
見ればさっきキサラのフルネームを白板にペンで記述していたドロイドは暇を持て余したのかそれとも事前にプログラムしておいたのか、白板にキサラの自画像をまるで旧式のインクジェットプリンタが印刷するかのようにペンだけで書き込んでいた。
そして、自画像の人はソラに連れられて教室から出ていった。
ケイスケはダルそうに「はい、今日のホームルームはここまでですにぃ。後は自習だにゃ〜ん」と言ってから教室から出ていく。
少し間を置いて。
俺の席にメイリンとコーネリアが来た。
「Heeeeyyy!!キミカ!アレハ何デスカァ?!何デ(小声で)ドロイドバスターノ事ヲ知ッテルンデスカァ!」
「知らないよ!人づてに聞いたんじゃないかな?」
ま、人づての人は俺だけどね。ぽろっと零しちゃった。
メイリンメイリンで、
「キミカ、楽しい事、双頭バイブ以外何か?」
コイツはかなりズレてるな。
そしてマコトが言う。
「…そういえば、あのキサラって人、ドロイドバスターに興味がある風な感じだったよね。学校に入学するとかも言ってたし」
「その『興味』がどういう意味でのかによるね…」
「キミカァァァ!!」とコーネリアは俺の肩を掴んで揺らしながら、「アノキサラトイウ人ニ会ッタコトガアルンデスネー!!ドウシテ黙ッテタンデスカァ!!アイツハ怪シイデーッス!!」
「(コーネリアに肩を揺らされながら)…あたし以外のドロイドバスターにも興味があるんだって言ってた」
「Nooooooooo!!!(更に強く俺の肩を揺らす)」
「何、興奮してるか?」とメイリン
「ドロイドバスターハ企業秘密ナノデスゥ…(白目」
「そうなのか」
企業秘密っていうか、軍事機密って事ね。
それから各授業の時間ごとにキサラは顔を出した。
廊下のほうから窓越しにジーっとクラスを見つめて「ふむふむ…聞いていたとおり、みんな真面目に授業してるわね」とか言ってる。
どうやら俺が以前話した「ドロイドバスターが他にもいて、みんな高校生なので高校に通って授業を普通に受けて平凡に暮らしてる」っていう状態を見に来たのだろう。
キサラと俺は時々チラチラと目があってはすぐに逸らすというのを繰り返した。まるで仲良くなり始めたばかりの恋人同士がたまたま同じ場所に居て無意味にお互いの顔を見ては反応するかのように目が合う都度、キサラのほうは手を振ってニコニコしている…。
一方でマコトについては見られるのが恥ずかしいようで、顔を赤くして俯いたり目が合いそうになると顔を逸らしていた。
俺はもちろんのことだがコーネリアについては見られるのが相当嫌なのか白い目で逆に睨み返して「あんまジロジロ見るんじゃないよ」ビームを発射していた。
一方でメイリンのほうは形式的には見られたくない素振りではいたが、相当感じてるのか顔を真っ赤にして「見るな…私を見るな…」と言いながら服の上から自らのおっぱいを揉んでいた。それを見たキサラは流石に目を逸らして無関係者を装ったようだ。
っていうか、非常勤講師ってどこか他のクラスを受け持っているんじゃないのか?そっちをほっぽり出してここに来てるのか?
俺はコーネリアと同じく白い目でキサラを睨んだ。
まるで俺達の反応を楽しんでいるかのようにニンマリと笑っている。しかし背後から190はあろうかという男が近づいてきて影になり、そしてニンマリと笑う彼女の頭を案の定、後ろから「ごつん」と殴った。思いっきりバチっと教室・廊下側のガラス窓におでこをぶつける。
「いったーい!」
おでこと後ろ頭を摩りながら振り返ってソラに文句を言うキサラ。
「お前は一体ここで何をしてるんだ!授業はどうしたんだ!」
「授業ならこうやって観察してるわよ〜?」
「お前非常勤講師だから!観察する人じゃないから!解ったらさっさと実習室に行こうな。はい、後は署で聞かせて貰おうか」
ぶーぶー言ってるキサラの手をとってソラが補導していく。
やれやれ…。