100 スーパーアルティミットハイパーエターナルウルトラファンタスティックミラクル非常勤講師 1

春の全校朝礼の時間は恐ろしいほどの眠気を誘う。
登校時はまだ肌寒いせいでまだ冬服から春服に着替えるわけにもいかず、そのまま全校朝礼へと突入すれば気温は午後に向けて次第に暖かくなるわけで必然的に身体はポカポカとしてくる。ひょっとしたらで就寝する時よりも好条件で睡眠がとれるかもしれない。
春うららかなその時間におけるスイマーは、俺に防御させる気力すら奪い、もう眠気に耐えるというよりもどうすれば眠っている事を誰かにバレずに過ごすかという思考回路へと書き換えさせてしまう。
あいもかわらずコーネリアは俺の横ですーすーと気持ちよさそうな寝息を立てていて、そのきとんとした座り姿勢は起きてる時よりも礼儀正しいのじゃないかというほどに素晴らしく、悔しいかな、これだけ気持ちよさそうに寝ている奴がスイマーの攻撃に耐えようとしている俺よりも先生の評価がいいとは、世の中はやはりシビアである。
これだけ気持ちよさそうに寝てるのだから俺が彼女のふとももを枕にして眠っても気付かないだろう。そして俺は彼女のスカートを捲ってピチピチの女子高生の柔らかくて白くてすべすべした太ももを枕にした。
しかし、いつもながらこの体勢は疲れる。
足が問題なのだ、足。
これを置くにはどうすればいいのか?
前回はここでユウカの太ももの上に足を置いたら怒られたからな。しかし今回はちょっと状況が違う。ユウカが風邪で休みの為、席が前に詰められ、俺の隣にはメイリンがいるのだ。
「ちょっと、メイリン、足置かして」
俺はそう言ってメイリンの柔らかい太ももの上に足を置いた。
さて、これで俺は春麗らかなこの講堂で気持よく睡眠をとれる。
それから…。
多分俺は夢を見ているのだろう。
スヤスヤと寝ている俺はベッドの中、足元を見ると誰かがいる。それは男だった。優しく微笑む彼はもぞもぞと俺の太ももに近づいてきて、きっと遠目に見れば仲の良いカップルがベッドでいちゃついてる事になるのだろうが、俺は男なんだよ!!おいおいおいおい!何してんねん!どこ触ってんねん!殴るぞこの、アレ…手が動かない…身体が動かない…あれれれ?!男が太ももとかにキスしたり股間に顔をうずめてスーハースーハーしたりそれからおヘソにキスしたり、どんどん顔があがってくるんですけど、おーい!!夢なら覚めろよオラァァ!!
「はなせぇぇぇオラァァァァ!!」
と俺が目を覚ますと目の前、正確には俺の股間メイリンの顔。奴が俺の股間に顔を埋めてスーハースーハーしてるゥゥ!!!スカートはめくれ上がってパンツは丸見え、奴は肩に俺の太ももを担ぎあげ、頭はコーネリアの太ももの上で暴れるという、とんでもない体位だ。
「何してんだよォォォォ!!!」
「足を犯してって、キミカ言った」
「そんな小学生みたいな言い間違え今時あるかァァァ!!」
と俺は足をジタバタさせてメイリンの攻めから逃げ出そうとした時、
「起立ッ!」
体育教師の号令が響く。
と同時にコーネリアが目を覚まして、温か太もも枕(by コーネリア)が思いっきり立ち上がり、そのせいで俺の頭は講堂の床へと転がり、
(ゴッ)
という鈍い音を周囲に響かせた。
それから教室まで記憶が無い。
どうやら頭を打ち付けた後から記憶を失っていて気がついたら教室へ運ばれていたようだ。
「いつつ…」
頭を押さえる俺。
教壇にはケイスケがいつもよりも数倍ダルそうにしてボソボソと何かを言ってる。そういえばケイスケは昨日の夜は4時ぐらいまで起きてたっけ。あぁ、それなら今日の朝になるじゃん?って話は無しにしてほしい。アニメを見る人間にとっては夜というのは眠って次の日の朝、または昼を迎えるまでの事を言うので、日付変更の0時は関係ないのである。だから0時を24時、1時を25時、4時なら28時と表現する。つまりケイスケは昨日は28時まで起きてて、3時間ぐらいしか寝てない事になるのだ。どおりで生気が抜けたような顔をしてると思った。
「え〜…というわけでェ…さっきも朝礼でありました非常勤講師を紹介するにぃぃ…」と言う。
…え?非常勤講師?そんな話あったっけ?
あ、俺は寝てたんだ。
教室がざわめく。
「先生、どういう事ですか?紹介って…」
「実は非常勤講師さんはこのクラスの副担任になったんですにぃ」
というケイスケの台詞と同時に、教室の扉が(ガンッ)と開き、ツカツカと部屋の中に入ってきた。金髪で白い肌、グラマーな体型、青い瞳…外国人かとも思えるけども顔は2次元から飛び出したような萌え顔で、ちょうど俺のようなドロイドバスターにありがちな…、
って、そこには柏田希沙良(かしわだきさら)が居た。
「え、ちょっ…えぇぇぇぇぇ?!」
思わずひと目があるのに俺は驚いて叫んでしまった。
「何よ!今更叫ばないでよ!全校朝礼の時に叫びなさいよ!何フェイント叫びしてるのよ!!全然面白くないわよ!」
と、いつもの調子で俺に言う。
『講師』と言われながらも見た目は俺と同じぐらいの年齢、どう考えても高校生がスーツでキメてなんちゃって講師やってます的な雰囲気である。そしてそれが副担任だと言われたんだからクラスのみんなはあんぐりと口を開けて見ているしかできない。
相変わらずのドヤ顔で「ほら、はやく、紹介早く」とケイスケに言う。
ケイスケはケイスケでのんびりと、
「キミカちゃんはまた朝礼の時に寝てたんですかォ?」
とか言ってる。それから大あくびをしながら、
「非常勤講師でこのクラスの副担任も努めてくださる、『柏田希沙良』先生ですぉぉ〜…えぇ〜っと…先生の専攻は、」
と言いかけるケイスケ。
その時、廊下のほうから(俺は)聞き慣れたドロイドの動く時のモーター音がする。突然教室の入口に直立タイプのドロイドが現れてズカズカと非常勤講師様である柏田希沙良ことキサラの横に立った。
そしてキサラは、
「柏田希沙良です!専攻は『ドロイド工学』です!」
と眩しいぐらいのドヤ顔で自己紹介すると同時に、直立タイプのドロイドは白板にペンで『柏田希沙良』と記入している。
凄まじい自己紹介だ…。
もう驚くしかできない。