98 第3次池袋カラーギャング抗争 7

「新生ブルーマンティスでは新しいカラーを纏う!」
俺はそう言った。
「新しいカラー?」
ルーマンティスのメンバーの1人が俺に尋ねる。
「そう、新しいカラー。キミ達若者はこれから日本国民の1人になる。これは法的に決められた事。君達は日本に住まわせて頂いてる身。この国は沢山の人達によって諸外国の糞どもから攻められ、沢山の人達によって防ぎ…死体の上に築きあげられてきた。キミ達が今ここに存在するのは『誰かが』この国を今まで残してくれていたから。もしかしたら中国やアメリカの一部になってしまって日本人は奴隷になっていたかもしれないけど『誰かが』そんな中で奴隷ではなく日本人という地位を築きあげてきたから…それを選択してきたから。キミ達も奴隷という地位を選択せず、日本人として世界に存在したいと…『誰か』と同意したいのなら、キミ達が掲げるべき色はコレです」
と俺は生理中の女の子のナプキンのような白い色の真ん中に真っ赤に輝く赤という2色のナプキン、じゃなかった、日本国旗を見せた。
「こ、国旗かよ…!」
「偉大なる大日本帝国国民の誇らしいカラーです」
「ってか、何年前の暴走族だよ!」
「日本国民じゃないのならこのカラーを纏わなくてもいいよ」
「ま、まぁ、ボスが言うのなら…」
渋々と連中は俺が用意したナプキン、じゃなかった、国旗色のカラーを纏っていく。これは戦闘の準備だった。
これから池袋に戦争をしに行く。
武器は何でもいい。相手にダメージを与えられるものなら鉄パイプだろうが鉄アレイだろうが鉄板だろうがお好み焼き製造機だろうがなんでもいい。それがカラーギャングのスタンスだ。
そんな武器の準備をする中、ジロウは何故か1人座ってケータイか何かの画面を見つめていた。こんな時に彼はヤクザの事務所の連中と連絡を取り合ってるのかな?
なんて思いながら、俺はそっとジロウの背後に近づいてケータイの画面を失礼とは思いながらも見つめてみた。
そこには意外なものが映っていた。
子供の写真だ。
年齢は4、5歳ぐらいだろうか。
その子供を抱えているのはジロウ本人だった。
子供が居たのか。
「ジロウ…それ…」
俺に見られているのを気付いて慌ててケータイの画面を閉じるジロウ。
「す、すいません…」
「ジロウの子供?」
「は、はい…1人息子です」
「そっか…子供がいるのか」
…。
それから数分ぐらいは黙ったままだった。ジロウはそれから一言、
「自分、ヤクザになる前は警察官だったんです」
と言い出したのだ。
警察官が…ヤクザ?
マジかよ…。
すごい転落だな。
「なんでヤクザになったの?」
「自分の子供は重い病気を患ってて、金が必要だったんです。でも警察官の給料はたかが知れてる。だから手術に必要な金を借りることも出来ないんですよ」
「ふむ…」
金が必要だった、だからヤクザになった。でもなんでヤクザなんだろうか。他にも色々とやりかたはあるだろうに。
「警察官だった時はヤクザとは繋がりは太かったですから。繋がりって言ってもヤクザに協力するような事じゃなくて、あくまで警察とヤクザっていう関係での繋がりですがね…。そこでよく知るヤクザに、金が必要なら警察をやめてヤクザにならないかって誘われたんです」
「はぁ…それは、ありうる…話だよね」
「子供の為だからと…」
後は言わなかった。
子供の為だから、色々な連中の反発、反対を押し切ってヤクザの業界へと脚を踏み入れた。という事だろう。
「そういえば、最初に事務所にあたしが踏み込んだ時に、組長の隣に居るジロウは『用心棒』って感じに見えたけど、一度事務所の外に出たら全然一般人と溶けこんでたね。そういう事が理由だったのか」
「自分、身体張るしかありませんから…」
そう言ってジロウは苦笑いをした。
…さて、そろそろ出撃か。
人数にして100人ぐらい。
その100人ぐらいの連中が一斉に日本国旗の鉢巻をすると、壮観だな。まるで右翼団体がこれから街宣活動に出掛けるかのような。きっとネット右翼が中継でこの様子を見たらネット端末の前で嬉ション垂らしながら歓喜の叫びを上げると思うよ。
「キミカの姉御」
そうって俺に近づいてくるのは以前前でブルーマンティスのリーダーだった本田だ。顔には日の丸を模したペイントが施されて如何にも怪しげなデブだ。もしこんなのに田舎の夜道で話しかけられたら俺は迷わず逃げ出す。とにかく記憶の中からコイツの存在の断片を消そうと思って酒を浴びるように飲むだろうよ。
「健吾の弔い…頼みます…」
「わかってるよ」
デブは振り返ってブルーマンティスのメンバーを見ながら言う。
「いいかお前ら!俺達はキミカの姉御に比べたら屁みたいに弱い。弱ちい存在だ!だけどな、俺達は『レッドツェッペリンに健吾を殺られた』って事実を持っている!!それは変えられない記憶だ!!俺達がどこで騒ごうが笑おうが健吾が殺られたって事実はこれからもついてまわる。だから、その記憶に新たに1ページを刻もうや…俺達は今日、健吾の弔いをしたと!!健吾の復讐をやり遂げたと!!いいか!これは俺達の闘いだ!!!キミカの姉御に引けをとるんじゃねぇぞ!」
その掛け声の後、ブルーマンティスのメンバーは全員が用意していたバイクやらトラックやら車に乗り込んでエンジンを蒸かした。