98 第3次池袋カラーギャング抗争 3

カラーギャングはギャングだから抗争してるのもわからなくもない。しかし、ヤクザにしてもギャングにしても争うには何かしらの発端だとか理由があるはずだ。
死人はパワードスーツの犠牲者だったとして、死人が出るまで相手を憎み殺しあうような理由があるのだろうか?さっき街で出会ったカラーギャング達も女の子を見つけてナンパしてくるような連中だ。一方で人を殺してるような感じには見えない。
「なんでカラーギャング同士で抗争とかしてるのかな?」
「あぁ〜、それはその時代、そのカラーギャングで色々理由は違いますねぇ…基本的にカラーギャングっていうのは抗争じゃなくて、ただ若い連中が一緒の時間を一緒の場所で過ごすっていうのがベースになってるんですよぉ…ただね、そこに若気の至りっていうか、若いからこその理由が渦巻いているんですよぉぉ!例えば…女とか!」
「お、女ぁ?」
「彼等はヤクザみたいにシマだとかそういうものには縛られてないんですよね、だからか、『大きな顔される』っていうのがどうもお互いに気に入らないらしくて、ほら、さっきキミが受けたみたいな『ナンパ』。もし街を歩いてて自分が知ってる女の子にナンパしてる男がいたらどうですかねぇ、ね、ヤクザの人!(ジロウを指して)」
「そりゃぁ…少しは腹を立てるんじゃないですかね」
とジロウが答えると、
「そ!腹を立てる!街を歩いててどこの誰だかわからない『カラーギャング』っぽい連中が自分の知ってる女の子に『気安く』話を掛けててナンパしようとしてる!もしナンパが成功したらそのままホテルで性交なんちって!(俺とジロウは白ける)『あのカラーギャングの連中、なんだかいけすかねー!そうだ!俺は1人じゃない!他の連中にも手伝ってもらってあいつらをとっちめよう!』」
「なるほど…そういう小競り合いがどんどん発展していくわけかぁ」
と俺は言う。
「でも死人が出るほどに?」
ジロウが俺も思っていた疑問をぶつける。
「基本的には『とっちめる』っていうのはボコる。あぁ『ボコる』っていうのは池袋用語でボコボコにする、リンチにするって意味です。暴力は暴力ですが殺しちゃうまでの事はしませんよォ…殺しちゃったら法的にも、何より人道的にもヤバイじゃないですかァ!」
「そりゃそうだ」
「でも女と男の問題っていうのは『ナンパ』みたいなものから『浮気』まで色々とありますからねぇ…。少なくとも今のカラーギャング『レッドツェッペリン』と『ブルーマンティス』の間ではちょっと簡単には済まされない大事が起きちゃったんですよぉ…」
「ほほぅ」
「なんだかわかります?」
なんだろう…?
まぁトンキン人のやることだからきっと派手なヤツに決まってる。
「きっと相手のカラーギャングの女を集団でさらってお父さんとお母さんが家にいるのに自室に拉致・監禁・レイプして仲間とか友達とか学校のクラスメートを呼んでお金をとってレイプの手伝いをさせて、タバコの火をアソコに押し付けたり乳首切ったりケツの穴に花火を突っ込んでファイヤーダンスさせたりして最後は殺してドラム缶にコンクリート詰めにして東京湾に沈めたんじゃないのかな?で、リーダー格の奴は死刑になったけどお手伝いした連中は今は結婚して何事もなかったかのように平和に暮らしてるっていう、」
「(真顔)」
「?」
「いやいや!さすがにそんな事はしませんよ!!一応ですがカラーギャングも人間ですからねぇ…キミが言ってるのはもう人間の所業じゃないですよ…鬼か悪魔じゃないですかァ(ガクガクと震える)」
「え?じゃあなんなの…?」
「まぁ、キミが言ってる事に近いんですけどねぇ…。相手のカラーギャングの女を誘拐して仲間数人でレイプしたのち、足の、ほら、アキレス腱っていう奴?アレを斬ってすぐに警察呼ばれないようにしてその間に逃げたっていう。残酷なのには変わりないんですけどね」
「じゃあ警察には連絡がいったんでしょ?」
「それが警察が事情を聞こうとしたら既に病院から居なくなってたらしいんですよォ…不思議な話でしょう?」
「へぇ…」
「女性が病院に運び込まれた後、数日してから女性は病院から疾走。なんか怪しいでしょ?女性はどこかに連れ去られて殺されたんじゃないか…って噂されてますぅ!」
「酷い事をする奴がいるもんだなぁ」
「最初は因縁を付けられた云々の話だったんですけどねェ…どんどん話が大きくなって、気がつけば片方のカラーギャングの連れの女の子が連れ去られて以下略でしょう?それから抗争につぐ抗争。連れの女の子が戻ってきたら少しは変わるんでしょうけど」
「殺されたんでしょ?」
「行方不明なんですってば!まぁ、殺されてるのかなぁ」
「それでカラーギャング同士の抗争で…人が死んで」
「なんでも軍の新兵器が使われたとか何とかで…あぁ〜!!怖い!怖いですねぇ!東京は一体どうなってしまうのだろうか!」
「ま、別に東京がどうなろうと知ったこっちゃないけど(ホジ」
「ん?今なんか言いました?」
「いえ、なんにも」
「それでェ!お嬢さんとそこのヤクザ様はカラーギャングになりたい?この話を聞いても?」
まぁ、仕事だからなぁ。
仕事以外だったら俺はやりたくないね。カラーギャングが悪い連中だからどうのこうのっていうアレでもない。さっきこのおしゃべりな井ノ内って情報屋が言ってた事にもあったけども、「カラーギャングは普段は気の合う連中が集まって」云々の話が嫌だったからだ。
人生は長いようで短い。
気の合う連中が集まるのは、まぁ、いいだろう。でもその長い人生の中でただ寂しいからという理由で集まってダラダラと過ごすのは俺の中では許せない。俺の価値観ではありえないのだ。いや、他の奴等がそれをやるのは全然構わないんだけどね。
例えば俺が明日にでもカラーギャングになったとしよう、仕事の話じゃなくて。そして集会が毎日あるからって毎日深夜まで気の合う連中同士で集まる??なんて時間が勿体無いことなんだ!
とんでもねーことだ!
俺は自由が好きなんだよ!!
よってこの男の話をダラダラ聴いてる時間も勿体無い。
「ないりたいなぁ!オレはカラーギャング王になる!っていう感じ?」
カラーギャング王!!いいね!!!」
「で?どうやったらカラーギャングの王になれるの?」
「そうだなぁ…男だったら仲間に入れてくれーって通るとは思うんですけどぉ…女の子だからなぁ…カラーギャングに入ったとしても紅一点として扱われるだけで、トップは狙えないかなぁ。まぁ、やり方ならあるにはあるんですけどぉ…お勧めはできないなぁ…」
とわざとらしく考えてる素振りを見せる井ノ内。
「早く言ってよ!女だからっていうのを無視して!」
実際俺は女の子じゃないしね。
「そうですねぇ…注目されるには、やっぱり喧嘩かな?」
「喧嘩?」
カラーギャングでも強い奴に喧嘩を売れば…もちろんそれで勝てばの話ですけど…でも女の子には無理ですゥ…」
「で?誰が強いの?」
「ブルーマンティスで言えば本田って言うのがボスで、一番強かったかなぁ。190はある巨大な男ですよ!すっごいデブだし!」
「レッドなんとかのほうは?」
「レッドツェッペリンはいまいちよくわからないんですよね。でもパワードスーツを使って人を殺しちゃったのはレッドツェッペリンのほうですねぇ…まぁ、どっちにしてもお嬢さんにも、そこのヤクザの人にも、無理な話ですよ?銃をちらつかせてもダメですよ?カラーギャングは道具じゃなくて喧嘩総合での強さを求めますからね!!」
「よし!ごちそうさま!」
と、俺は井ノ内の肩をぽんと叩いてから、
「いくよ!」と、連れのジロウに言う。
ジロウと一緒にカフェを出た。
さて。
戦争をしましょう。