97 便利屋・栗原 2

『スカーレットとは言わなかったが、どうやらそれらしき繋がりの証拠が見受けられるのでな、貴様が探していたから一報を入れようと思って今日は話かけてみたのだ。決して暇だったわけじゃない』
暇だったのか。
『それでスカーレットとの繋がりって?』
『私に仕事を依頼してきた連中はヤクザだが、スカーレットからの仕事の依頼を頻繁に受けているようだ。左翼団体からの金が動いている形跡が見受けられた』
『ほうほう…そいつらをシメあげれば…』
『仕事を受けてみる気はないか?』
『へ?』
『スカーレットが依頼した仕事だ。その仕事の内容を知ればその「スカーレット」と名乗る女が何を正義として行動しているのかがわかる。次にアクションを取りやすくなるだろうしな』
『正義って言ってもね』
『人は誰でも自分の中にある正義に従って動いているものだ。それは相対的でもある。ある者から見れば悪にもなり、ある者から見れば同じ正義にもなる。その正義を知れば、次の行動パターンも読める』
『ふむふむ…戦争は正義と正義のぶつかり合いって奴?』
『それは若干は違う…アニメか小説の中での話だろう。大抵の人類における戦争は「偽物の正義」と「偽物の正義」のぶつかり合いだ。それをすることで富を得ているものが双方に居る。金を右から左へと動かせば資本主義だ。その資本主義の体のいい言い訳であったりもする』
『奥が深い…』
『だから私は人間が好きなのだ。で、どうする?』
『もちろん請けるよ!で、どこへ行けばいいの?』
それからチナツさんは俺宛にヤクザの事務所がどこにあるのかっていうデータを送ってくれた。今週のお休みに行くことで調整が完了。仕事の内容はチナツさんも知らないらしい、が、今までの経緯からすればどう考えても平和な活動ではないとの事だ。
さて、早速だけど週末のお休み。
「キミカちゃん、どこいくの?またスタバ?」
というマコトに、
「ちょっと軽く運動してくる」
と言い残し、俺はドロイドバスターへ変身した後、飛び立った。
一応チナツさんへの面目としては俺は「仕事を請けに」北九州の小倉のソープ街脇にあるヤーさん(ヤクザさん)の事務所へと向かっているわけだが、最近どうも運動をあまりしてないので筋肉が硬直してしまっているのだ。よって今日は軽く運動をしようと思った。
小一時間程度で小倉上空へ到着した俺は用意していた私服に空中で着替えた。さすがにこんな空高くにいる時に全裸になっても誰も見えないだろう。空に全裸の女の子が居たとして、それを誰かに話しても精神科を紹介されるだけだ。よって俺は何不自由なく私服に着替えて、
「オラァァ!!」
ヤーさん(ヤクザさん)の事務所へと着弾。
俺の着弾衝撃波で周囲の窓ガラスは綺麗に吹っ飛んでたまたま風俗に遊びに来ていたキモ男がぎゃー!とか言いながら吹き飛んでカウンターにめり込んでいた。彼が乗ってきたであろう路上駐車中の車は衝撃波により大破。アスファルトはバラバラになり、標識は吹き飛んで交差点に止まっていた車に突き刺さった。
「ちゎーッッス!三河屋でーっすッ!」
と言いながら入り口に待っていたスーツ姿の男に軽くジャブを食らわした。変身後の俺のジャブは既に人間でも特殊カメラでも見ることは出来ない超高速。パンッ!という乾いた音の後、その男の歯は吹き飛んで、口から血を垂らすも痛いとかそういう感覚を感じる前に意識不明の状態になりぐったりと地面に寝そべるのだ。
外の騒ぎを聞いてからか玄関に次から次へとヤクザがやってくる。
俺の胸ぐらをつかもうとしてきたヤクザは軽くジャブを腕に(パンッ!パンッ!)という感じで放ち、へし折ってあげた。
パンチを食らわそうとしてきたヤクザの顔に蹴りを食らわせて、もちろん手加減はしているが、それでも吹っ飛んで壁の中にめり込んだ。
覚悟をキメたヤクザの1人は俺に向かってドスを構え、そのまま体ごとぶつかってくるものだから俺はドスにグラビティコントロールを働かせて手から離させ、天井へと吹き飛ばした。天井に刺さるドスを見て、「あ、あれぇ?」とか間抜けな声を出すそのヤクザに体当たり。そのヤクザ及び後ろにいた他のヤクザ3人をトイレのドアまで吹き飛ばした。
「こんにちはぁ…?あれぇ?誰も居ないのかな?」
と俺はすっとぼけながらそのヤクザビルの2階まで上がっていく。
「どこのもんじゃコラァ!!」
2階のフロアに上がった時だった。
そう叫びながらヤクザがハンドガンを俺に構えて、
(パンッ!パンッ!)
と放った。
グラビティブレードで弾き飛ばす俺。
そのまま(チュン!チュン!)と小気味良い音を出しながら、ブレードで男の持っていたハンドガンを解体した後、ハンドガンを掴んでいた手の小指の部分だけを切り落とした。
「うわぁぁぁぁぁ!!俺の指がァァ!!」
「ボスはどこ?」
「言うかコラァ!!」
コラが好きだな。
俺はグラビティコントロールで男の身体を持ち上げて天井に貼りつけた。そのままグイグイと押し込んでいく。もちろん、人間がそんなのに耐えれるわけもない。ミシミシという音と共に(ポキッポキッ…)という骨がへし折れる音が聞こえて男の口から血が垂れる。
さすがに観念したのか男は震える指で廊下の隅の扉を指さした。
その扉の前まで向う。
そして光学スキャンで中の状態を確認。
いるいる。
ヤクザ全員が扉の前でいつ俺が入ってくるのかドキドキしながら銃を向けているじゃん!!それぐらいじゃないとやる気がでないね!
俺は目の前の扉に回転蹴りを食らわせた。もちろん、グラビティコントロールのオマケ付きで。扉は外れて吹き飛んで、部屋の中に居たヤクザの身体ごと2階の外へと押し出した。
「うわぁぁぁぁぁ!!」という声の後、ドスンッという何か車の上に落下するような音が聞こえた。
「こんにちわ、お仕事しに来ました〜」
俺はドヤ顔で銃を構えたヤクザどもに言った。