96 アンダルシア・コンフィデンシャル 3

女子の持ち物検査が始まる際には男子は廊下で待たされる。
つまり俺とコーネリア、メイリン、マコトは男子と共に自然と廊下へと出ていったのだが「こらこらこら!なんでアンタ達も外にでるのよ!」とユウカに引っ張り込まれた。
ついつい男子と行動を共にしてしまう…。
女子の持ち物検査が始まった。
まずはユウカ曰く、一番怪しい連中…つまり「コーネリア」「メイリン」という外国人コンビを対象にした。
何故か同じ外国人枠であるマコトが対象外になっているのはユウカの外国人選別基準が「日本語がうまいかどうか」になっているというレイシストも真っ青の基準だからだ。
「Heeeey…何モ怪シイモノハ持ッテマセーン」
と怪しげな日本語で言うコーネリア。
「本当にぃ?」
ニヤニヤしながらユウカはコーネリアのバッグの中をゆっくりと机の上にひっくり返す。意外と重いようだ。何かゴトゴトゴトと重たくて黒いものが教壇の上に…っておおおおおおおいいいいい!!!
MP7にP90にAA12にデザート・イーグルに手榴弾クレイモアセムテックスにC4爆薬だとゥゥゥ?!コイツ戦争でも始めるのかよ!!
「なんなのよこれは!怪しいものしか入ってないじゃないの!!」
「HeHeHe…」
「ヘヘヘじゃない!日本では武器の所持は禁止されています。麻薬よりもやばいわこれは!全部、警察に提出します!」
「No!コレハ護身用デス!」
「一体何と戦ってるのよ!」
コーネリアはすっと人差し指で武器たちをなぞった。
するとピカピカと光輝いてあっという間に鉄の棒に変わってしまった…。どうやらドロイドバスターとしての物質変換の能力を使ったらしい。証拠隠滅だなこりゃ。
「あ、あれぇ?」
「タダノ鉄ノ棒デ何ヲ騒イデイルノデスカァ?Hehehe」
ユウカは首を傾げながら「おっかしいなぁ…」と言っている。
とりあえずはコーネリアのお咎めはなし。で、次はメイリンだった。コイツもコイツでなんか怪しげなものを持ってそうだなぁ…と俺はメイリンのバッグを持って教壇までやってきた。
「なんか重い…」
と俺が言うと、ユウカは、
「怪しいわ!」
と叫ぶ。
「何も持ってきてない、家に何もない」
と言い出すメイリン
確かに。貧乏そうに見えるメイリンの家には実際に何もなさそうだ。なにかあったら全部金に変えてしまってそうだ。ということは…このバッグの中の重たい物は何なんだ?
バッグの中から出てきたのは…。
壷だ。
随分と高価そうな壷。
こんなものを常に持ち歩いているのか?もしかしてメイリンってこれ使って露天商でもやってるのか?それとも海外から輸入したモノを日本の金持ちに売る仕事(貿易商)でもしてるのかな?
何かに気付いたのかナノカが言うのだ。
「ねね、これって教壇の隣においてあった壷じゃない?」
と言うのだ。え?教壇の隣においてあった壷?
「あ!ホントだわ!なんか教壇の隣にいつもはあるのに今日は何かないなーって思ってたら壷がないわ!壷がなくなってるわ!」
おいおいおいおい!!
備品盗ってるよこの人!!
泥棒がいるよ!!!
「私は備品を盗んだりはしない!」
メイリンは苦し紛れの言い訳。みんな「壷」「壷」言ってるのに、「備品」って言い出すし。
「だって現に備品がなくなってるじゃんかよー!」
とナノカが言う。
「それが備品だという証拠、見せろ!」
メイリン
盗人猛々しいとはこのことか、と言わんばかりの猛々しさだ。絶対にメイリンが盗ってると思うけど証拠がないからな。
「確か(壷をひっくり返して)裏側に備品シールが…あった!」
「」
備品シールがあった…メイリンのバッグのなかから学校の備品シールが貼ってある壷(高級そうな)が出てきた。
クラスの中から気まずい雰囲気が漂ってくる。
誰かがヒソヒソ声で話している。
「ドロボー…(ボソッ」
誰かが呟いた。
小さな声だ。
最初は小さな声だったが、
「ドロボー…だわ」「泥棒よ」「(ヒソヒソ)」
とクラスメートは口々にメイリンを蔑むような目で見ながら言った。
次第に声が大きくなる。
「ドロボー」「ドロボー…」「ドロボー」
「ドロボー!」「ドロボー!」
「ドロボー!(手拍子)」「ドロボー!(手拍子)」「ドロボー!(手拍子)」「ドロボー!(手拍子)」
「ド(手拍子)・ロ(手拍子)・ボー!(手拍子)」
「ド(手拍子)・ロ(手拍子)・ボー!(手拍子)」
「ド(手拍子)・ロ(手拍子)・ボー!(手拍子)」
メイリンは涙をポロポロと零しながら、
「家が、家が貧しいから、つい手癖が悪くて…」
とかまるで戦争孤児が差別を受けて悔しさのあまり泣いてるような感じで、それでいて疲れきった顔をしている。
確かにメイリンは中国からやってきてこちらに親族もいるわけでもなさそうだし貧しい環境にあるような気がする。クラスメートたちも誰一人としてメイリンが金持ちだとは思っていない。だからか貧乏なメイリンが手癖が悪くて備品を盗んだ事実には寛大らしい。「ドロボーコール」はメイリンの涙の前でゆっくりと収束し消えていった。
さて…何故か順番的には次はマコト、そしてその次が俺か…。