95 赤と青 3

「へぇ〜…これを作ったんだぁ」とマコト。
今、俺とマコト、キサラとケイスケの4人は地下の研究施設の中にいる。ケイスケの理論をもとにして創りあげた機械が目の前にある。
「それにしても凄いじゃない!」とケイスケの肩をパンパンと叩くキサラ。何が凄いかっていうと、やっぱり俺の話題だった。
「時空のドロイドバスターを創りだすなんて!」
「それほどでもないですにぃ…っていうか、これはキミカちゃんのカルマだから僕ちんはなぁ〜んにもしてないですにぃ」
ちょっと前から気になっていた。
時空のドロイドバスター?
「その時空のドロイドバスターっていうのは何なの?そんなに珍しいものなの?あたしは既にジライヤっていう同じ能力を持ってるのに出会ってるから、特に珍しいものとは思えないなぁ」
「何って?!珍しいわよ!ほら変身してごらんなさい!」
「は、はぁ…」
俺はドロイドバスターに変身する。
キサラは俺を背後からガシっと肩を掴んで、俺の目を指さして、
「目が青いでしょ?目が青いのはね、それだけで珍しいのよ!」
「へぇ〜…」
俺が唖然としていると、ケイスケが補足する。
「人には青と赤のどちらかのドロイドバスターになれる素質がありますねぃ。人口比率的には2分の1。ただし、普通の人間なら大抵は赤い目のドロイドバスターにないりますねぃ…これは何故かというと、青の目になれる素質を持つドロイドバスターは同時に、失敗する率が高いですにゃん。だからそういう人はぁ、」
それに続いてキサラが、
「そ、つまり、ドロイドバスターにしちゃダメなの。危ないから。危ないから装置にかけれない、だから偶然にも装置にかけて成功して、今もドロイドバスターで存在しているアンタは凄いの!」
「でも、コーネリアも、ほら、キサラだって目が青いじゃん」
「コーネリアって人がどうなのか知らないけど、微妙なバランスの上にいる人なのよ、きっと。で、あたしの場合は、」
キサラはあのポーズをとってドロイドバスターに変身。
左右の眼の色が違う、オッド・アイのドロイドバスターだ。
「こんな風にね、眼の色が途中で変わるとオッド・アイになるのよ。あたしの場合は最初は赤だったけど片方だけ青になった」
「片方だけ青ってどんな意味があるの?」
再びケイスケが補足。
「カルマが途中で転向するとそうなりますにゃん。両方の能力が使える、って事ですにぃ。まぁどんな意味があるのかはわかりませんが…神様のみぞ知る…」
「の、能力ゥ?何その中二病設定…青の能力と赤の能力っていうのがあるの?例えば…赤の方は物質変化の能力とか」
すると、キサラはドヤ顔になってから俺に説明する。
ちゃんとホワイトボードを使って。
そこには一本の線を縦に引いて、矢印を下方向に向けて書いた。一番上に『青』一番下にも『青』と字を書き、真ん中に『赤』と書いた。そして一番上に『時間と空間』その下に『エネルギー』その下に『物質』最後には『英知』と書く。
「いい?まず創造主は時間と空間を創りだしたわ」
そう言ってキサラは一番上を指さした。
「そして次にエネルギーを創りだした」
2番目を指さした。
「ふむふむ」
「次にエネルギーから物質を創りだして…まぁ、これが今あたしたちが住んでる星も、そうよね?」
3番目を指さす。
「あ〜、うん」
「最後に、それらを英知とリンクさせた」
最後、4番目を指さした。
「英知と時間と空間が『青』っていうのは…」
「いいところに気付いたわね!」
と俺を指さしてドヤ顔をするキサラ。続けて、
「『時間と空間』が無ければエネルギーも物質も存在できない。つまり、時間と空間は無の状態からやってきたの。で、英知…これも無の状態からやってきてるのね。だから『青』。青は無の色、エネルギーが吸い込まれる色、赤は有の色、エネルギーが排出される色」
「ふむふむ」
「ドロイドバスターの能力が宇宙の法則を無視してコントロールするものっていう話は知ってる?」
「うん」
「つまりね、これらの4種類はそれぞれドロイドバスターによってコントロールされるものなの。時間と空間をコントロールする、それがキミカ。あなたね。で、エネルギーをコントロールするドロイドバスター…(マコトがピクッと反応する)…それから、物質をコントロールするドロイドバスター…つまり、あたしの能力ね。で、英知をコントロールするドロイドバスター…。で、時間と空間、それから英知をコントロールするドロイドバスターは存在するかしないかの瀬戸際だから『無』に近い。死に近い。だからなれる人は本当にごく少数に限られてるのよ。キミカ!アンタはきっとボッチだから無に近い…そして死に近い!だから青のドロイドバスターの能力を手に入れたのよ!」
おいおいおい…いま、凄い気分が高揚してきたのに最後の最後で思いっきりガクンと落とされたぞ!なんだよ!ボッチだから青のドロイドバスターになったのかよォォォォ!!!
「そうか…キミカちゃんは並大抵のボッチじゃないと思ってたし、ひょっとしたらキング・オブ・ボッチじゃないかとも思ってみたりしてたけどやっぱりそれなりに理由があったんだね」とマコト、っておいおい!トドメ指すなよおいおいおいおいおい!!
まぁいっか。
それよりも、
「その英知のドロイドバスターっていうのは何なの?」
「う〜ん…あたしも推測が入って説明してるから。今まで出会ってきたドロイドバスターは殆どがエネルギーと物質コントロール系だったから。アンタみたいなタイプも初めてって言ったじゃない?英知のドロイドバスターは憶測よ…まぁ、多分、英知をコントロールできるんだと思う…。あたしの能力である(青い眼の方を指さして)アカーシャクロニクル、っていうのも英知のドロイドバスターの能力ね」
「あ、アカーシャクロニクル…?何その中二病っぽい名前」
「別名アカシックレコード。全ての情報が記述されている別次元へとアクセスできるのよ。フフフフフ…」
やばい…やばいぞこれは…!
俺が隠したエロ本の内容までアクセスできるというのか…!
「それよりさ!ケイスケ!」と突然話を変えたそうな雰囲気でケイスケに振る。ケイスケも戸惑っているが、そんな事に構わず「手続きしてくれた?」と言っている。
「はぇぁ?」
そりゃそうなるわな、そういう反応するわな。
「手続きよ!手続き!ぱぱーっと終わらせてくれたんでしょ?あたしがアンダルシア学園に入学する手続き!!」
「にゅ、入学ゥ?!そんなの出来ないですにぃ!」
「なんでよ!」
「なんとかハッキングかまして入学できたのはキミカちゃんと既に入学手続きは終わってたマコトだけだにぃ!!専門家じゃないからそれ以上の事はできないですニャン!」
そりゃ学校のデータベースをハッキングする専門家はいないわな。
「な、な、な、なんですってー!」
「それにキサラちゃんはもう高校に入学って年齢じゃないd」
(ドスゥ…)
見事なボディブローがケイスケの巨体にキマった。
「私は永遠の高校生よ!」
え?この人高校生じゃないのか?っていうか中学生ってぐらいにも若く見えたりもしたけど、やっぱドロイドバスターとしての能力というか、2次元に住んでる美少女みたいに見えるだけで実際は歳なのかな。
「いま、あたしの事を『実際は結構な年齢なのかな?』って思ったでしょ!お見通しなのよ!!」
「ま、まさか、それがアカシックレコードの能力…」
「今のはただの女のカンよ!」