94 Dの食卓 3

その金髪美少女はわざわざ高貴なる喫茶店「スタバ」で下品にもケータイのバッテリーを充電していやがる。そんなので席を取られたら後から来たMapBookAir勢が苦労するだろうに。彼等はただドヤりたいだけなんだよ、彼等のドヤ席でケータイを弄らないでくれ…
まぁ、それはそれでもMapple社の製品であるけれども。
…というのは、
日本のケータイは特殊で世界的にはガラパゴス島をイメージしてジャパゴス島のジャパゴスケータイ、つまりジャパケーと呼ばれている。じつはネーミングは日本人が思いつきで始めたもの。それがどんどん広がって今では世界中でこんな風に言われている。思いっきりに日本人による日本企業に対する大きな皮肉の意味が含まれているわけでもある。
そのジャパケーを持っている情弱な年寄り、または若者は(金髪美少女の取り出したaiPhoneを指して)あんな風に、周囲の雰囲気を読めずにスタバでケータイの充電をしたりする。
俺はとりあえずはMapBookAirを畳んで、おっぱいの谷間に挟んでいたaiPhoneを取り出してその美しいフォルムを眺めていた。
ケータイのバッテリーはどんなに使っても1週間は最低でも使える。それだけの技術が積まれていながら「なんか充電しといたほうが良さそうだから」とか「とりあえず目の前に電源ジャックが置いてあるから」って理由でスタバの電源ジャックを占領するのはやめてほしい。
それは家でも出来るだろう!!
ふと、aiPhoneのフォルムを眺めている視界の中に金髪美少女の顔が見えた。向こうも充電をしながらのドヤ顔だ。しかし、スタバでそれをしてるのは失笑モノだな。
例えば、貧乏人がスタバにやってきて、
「お!こんなところに電源ジャックが置いてあるでねーか!オラのケータイもここで充電しておくんべ!フヒヒ…これで電気代はケータイ分だけ払わなくてもいいべ、よかんべよかんべ!」
とモノローグが頭の後ろかたりから出てきそうなんだよ。そういうのは悲しくなるからやめてほしい。公園に水道を見つけたからとそこで突然石鹸とシャンプーを取り出してシャワーを浴びたりはしないだろう。時と場所を考えろって事さ。
俺はその金髪美少女のドヤ顔を見ていたのだ。
これが失敗だった。
目が合ってしまった。
やばい…こっちをキッと睨んだその金髪美少女は俺もaiPhoneを持っている事に少し驚いているようだ。確かに、スタバでaiPhoneを持っているのは俺とその美少女だけだったから、「私だけ持ってたはずなんだけど、クソ…あの上にいるあの女、aiPhoneを持っている!!」って思ってるのかもしれない、今のはそんな表情だった。
しばらくすると金髪美少女は飲み物も飲み終えて店を後にした。
やれやれだ。
ああいう情弱さんは困るなぁ…。
最近は店員の質だけじゃなくて店も客の質も落ちてしまったものです(照れ笑い)なんて思いながら俺もしばらくブログを書いたのち、悠々とスタバを後にした。
しかし、話はこれで終わらない。
数日後、俺は再びスタバでドヤろうとしていた。
その時はあの金髪美少女の存在なんて忘れていたのだ。
俺がスタバのカウンター前に立った時、チラッと店内を確認したのだ。それは座る席でいつもの特等席が空いているかの確認の意味を含めて…だったのだが、その俺の特等席の隣に奴が座ってるじゃないか。
あの金髪の美少女が!
ど、ドヤ顔だ…。ドヤってやがるぞ!!
ドヤ顔でaiPadを弄りながら、俺の特等席の隣に腰掛けている。aiPhoneからaiPadへと昇格したからとか、そんなんどうでもいい。クソ…王座(このスタバであの位置は位置的に王座なので俺は王座って呼んでる)に座りやがって…そこには俺も座らないのに!
注文した品はすぐに出来たから俺はトレーを持って王座へと近づいていく。向こうは俺に気付いたらしい。俺はその金髪美少女の事はいっとき忘れていたけども、向こうは俺の顔を見て「あ、きたなコイツ」って顔しやがったから覚えているのだろう…。
来たよ、来たさ。来てあげましたよ!
その調子にのった顔(ドヤ顔)を崩してあげるよ!
俺は王座の隣に座った。特等席である。ここが空いてなかったら俺は平民席(王座の下にあるから平民が座る席だと俺が名前をつけた)に座る事になっていたよ!あぶねー!
そして満面の笑みで取り出したるはaiPad。
金髪の美少女はそれを見て、まったくもって俺が想像していた通りの反応をしてくれたよ。ククク…。お前が持ってるものは俺だって持ってるんだよ!(ドヤ顔)どうだ!ほれほれ!貧乏人がぁ!
って今にも泣きそうな悔し顔をしているな、この金髪美少女。ちょっと俺もドキッとしてしまったよ。美少女は色々と見慣れているから(鏡を見れば美少女である俺が映るし)安心しきってた。だけど、メイリンやコーネリアは美少女だけどアヘ顔やサド顔や笑い顔なんてのはしょっちゅう見せられるけど、こういうウルッってくる顔は見せてはくれないからなぁ、やっぱ日々変化する表情は大切だよね。
その金髪美少女は注文していたカフェをごくごくと一気に飲み干すと、いそいそと持ってきていたaiPadをバッグの中へと片付けて店を出ていってしまった。
勝利。
そして笑止。
俺は普段から王座には座らないけど今はとても王座に座りたい気分だ。その美少女が座っていた場所に俺は腰を下ろして、満面のドヤ顔で店内を見渡す。実に爽快な気分だ。
店内の客はどんどん増えてきて王座の隣の側近席も埋まり、そして平民席も学生達で埋まった。中にはMapBookAirを持ってきているいつもの連中が居たが、俺のほうをみて「あぁ、またこの人来てるな、ふふっ、相変わらずのドヤ顔だね」とでも言いたそうな微笑みを浮かべて席についていた。お互いがお互いの力関係を尊重しあう、そういう素晴らしい時間がゆっくりと店内を流れていった。
この街(県内でもスタバがあるのはこの街を除いてわずか2件)にスタバが来た時は歓喜していたけども、今では俺の家がスタバだったらいいのに、なんて思ってしまう事もあるよ、テヘヘお恥ずかしい。
まぁ、正直、それは傲慢だと思っているよ。