93 僕は友達がいない 7

(ドンガラガッシャーン!)
糞ボロイ朝鮮焼肉食堂の扉をブチ破ってソンヒが転がり外へと出る。バランスを崩して倒れたわけじゃない。あくまで俺のブレード攻撃から逃れるためにジャンプしたのだ。
「姉御!」
ソンヒの部下がそれを追う。
『おいおいおい!!』
相変わらず金髪くんは俺達の闘いに間抜けな声で反応する。あんまり心配すると金髪が白髪になるぞ?
「今日こそブッ殺してやるニダ!糞日本人!!」
「そりゃこっちのセリフだよ!糞朝鮮人!!」
闘いは既に国家間戦争の一部となっていたのだ。
そんな中、ソンヒの腰巾着の一人が俺を見ながら言うのだ。
「てめぇも何をそんなにムキになってんだよ!たかが食事の邪魔されたぐれーで!」と。
…たかが…?
「たかが…食事…?」
「そ、そうだよ…」
「『た・か・が』…食事…だって…?!」
「なんだよ!たかが食事だろうが!犬じゃあるまいし!飯食うの邪魔されたぐらいで怒り狂ってんじゃねーよ!!」
たかが。食事…。
俺は一度にぃぁが食事をしているのを故意に邪魔した事がある。あの時、にぃぁは酷く怒って危うく全ての尻尾が解放されて完全体に変わってしまうところだった。でも、俺はにぃぁの気持ちが今は判る。食事を邪魔されるという気持ちが。
『食事を邪魔される』…食事とは生存に不可欠な行為だ。その食事を邪魔するというのは、すなわち、生存行為を邪魔すると言う事になるのだ。他者に対して生存の権利を認めないという意味なのだ。
それは許されざる行為だ。
俺は静かに、そして確実に一言一言を並べた。
「…モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで…」
少なくとも、この自然界において…そうなのだ。
しかしこのバカは俺の話は全くもって数多には受け付けないらしい。
「ハァ?…何いってんだオメェ?(人差し指で自らの頭を指さしてから)ココ、オカシイぃんじゃねーの?」
…。
「…ぁ…ぃしばれ…」
「あぁ?」
「…ぁ、くぃし…れ…」
「はぁ?」
「歯ァ食いしばれっつってんだァコラァ!!」
その男が歯を食いしばったかどうか、そんな事はどうでもいい。俺は「今から貴方を殴りますよ」と忠告してあげたのだ。もう遠慮はいらない。不意打ちでも何でもない。
俺の超高速フックが目の前のターゲット(不良)の頬に思いっきりめり込む。その瞬間、グラビティコントロールによる衝撃波が男の髪を千切って弾き飛ばして一瞬でハゲにする、それどころか服も全部吹き飛ばして、焼肉屋の看板も吹き飛ばし、ターゲット(不良)の前歯と犬歯が地面に突き刺さる。そして無様な全裸でハゲの身体は空中を一回転して商店街にゴロゴロと転がって転がって転がって転がって100メートルほど進んだ横断歩道手前まで転がり続けた後、止まった。
「う、うわぁぁぁぁぁっ!!!!」
逃げ惑う不良達。
だが、その瞬間、ソンヒのどっから作ったかしらないがチェインガンが「ウィーン」という音を立てたのを準備段階として、「バリバリバリバリバリバリバリバリ」と凄まじい音を立てて銃弾の雨を俺に降らせる。ブレードで弾き飛ばす俺。弾き飛ばした経口が大きな銃弾が商店街の地面から砂埃とコンクリート片を飛び散らせる。これだけ高速な弾だといくら正面からといっても俺にも限界がある。
0.00025秒ぐらいで、煙の中、ドロイドバスターへと変身した俺は高速に発射される銃弾の雨をさらに高速に弾き飛ばしながら、反動で撒き散らされる砂埃の中に突入。向こうには、チェインガン(重いため地面に添え付け)の後ろで待機するソンヒの姿。
ブレードをしまい、心眼道による傾斜角弾き飛ばし体勢で弾丸を流すように弾き飛ばしながらソンヒとの距離を縮め、チェインガンをあらかじめ発射していたキミカインパクトで黙らせる。
(メキメキ…グシャ)
商店街のクレーターは20センチほどクレーター状に凹んでチェインガンはペシャンコになった沈黙した。
さぁ、はぁくぃしばれよォ!!!
「スーパーキミカ超ウルトラビューティフルf」
と俺が超重量級の一撃をソンヒにお見舞いする前に必殺技名(今考えていた)を放とうとしたその瞬間。
「遅いニダァ!」
ソンヒは地面にバンッと手をつけると、どこに埋め込んでいたのか知らないが地面の中から野砲(大戦時に遠距離攻撃を目的に作られていたカノン砲)が姿を表したのだ。
これは…コーネリアが使ってるあの物質変化の技じゃん!
しかし俺はここでゆっくり驚くべきじゃなかった。野砲の砲塔は俺を思いっきり5メートル上空まで持ち上げて(というより俺の目の前に砲塔が構築されたと言っても過言ではない)あっけにとられてた俺に構うことなくソンヒは「発射ッ!」と叫ぶと、商店街の店々の窓ガラスという窓ガラスが衝撃波で粉々に吹き飛んで、超重量級のカノン砲の弾が俺を思いっきり押し上げて上空へと飛ばしていく、どんどん地面が遠くなる、うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
ビルよりも高く上空まで押し上げられた。
やばい。
俺はグラビティディフレクターを正面に全開…。
空高く舞い上がったところでカノン砲弾が炸裂した。
ヘックス状の防壁が俺の正面に展開されたから、多分、グラビティディフレクターのシールドをも貫通してプラズマディフレクターまで到達しt…って、さらに貫通してきやがった!
「ぎゃー!」
飛び散ってくる砲弾の破片をブレードで弾き飛ばし、なんとか俺は防御を終えたがビルの屋上に着地した時は既にドロイドバスターの変身が一時的に解けてしまった…。