92 突入せよ浅間山ホテル 11

同窓会会場前のドアに張り付いていた警察の突入部隊はドアを蹴り開いて一気になだれ込む。俺もそれに続く。と、同時に俺が見たのは窓から一斉に放り込まれるフラッシュバン。
ちなみにフラッシュバンっていうのは凄まじい音と強い光を発光させる道具。特別な装備がない場合はその音と光で怯んでしまう。
俺は視界を通常のモードから工学センサーモードに切り替えて、フラッシュバンの効果を無効にした。それでも若干強い閃光が走る。
突入部隊が窓から、そしてフロア入り口から一斉に会場に入ってくる。そこでテロリスト達は反射的に銃を向けてくる。
静かにしておけばいいのに人質と同じ格好をしたテロリスト野郎も銃を取り出して構えているじゃないか。
一気に警察官と俺の銃弾が銃を向けてきた連中に降り注ぐ。
マコトも暴れているっぽい。
時折霧のようなものが吹き飛んで人が消えていく。
制圧まで1分も掛からなかった。
「ちょっと、俺は人質だって!」
人質なのに警察に取り押さえられている同窓会参加者達。文句は言うわな。そりゃぁ…。
そんな中、その「人質の格好」をした一人が警察に取り押さえられようとするところを回避し、腰からサブマシンガンを取り出した。そして別の人質を掴んで銃口をその人に向けた。
こいつはテロリストの一人だ。
やばい、俺から距離が離れすぎてる。近かったらブレードで瞬殺できるのに。間に合わないだろうけど俺はプラズマライフルを取り出して狙いを定める…が、その時、何もない空間から手がぬっと現れると男のサブマシンガンを持っている手を握って引っ張った。
男は驚いてその何もない空間を見つめる。
そこには空間から現れるマコトの姿がある。
「氷獄殺!!」
その必殺技名とは異なり、マコトは部分的に男の腕だけを凍らせて銃を撃てないようにした。
…というわけで。俺とマコトの手助けもあって、結局、突入時に人質が殺されてしまう事はなかった。
一通り人質達の身分確認が終わってから、突入部隊は揃って俺とマコトの元へとやってきた。そして一斉に敬礼をして、
「ご協力感謝します!」と言った。
「えぇと…。ドロイドバスターキミカ、それから…」
「彼女はドロイドバスターマコトだよ」
俺はマコトを紹介してあげる。
「いやぁ、なんだかテレるなぁ…」
頬を赤らめて頭をポリポリとかくマコト。
はぁ…。
ところで…。
俺とマコトはまたこの旅行を楽しむ事はできるのかな?
これで家に帰っておしまい?
結局は最後は俺達の休暇はこういうオチになるのかよ…。
警察やらがホテル2階のフロアに押し寄せる中で俺はテーブルの上に残されてた今日の夕食の残りを摘みながらお酒を飲んでいた。
「キミカちゃん、帰らないの?」
とかマコトが言ってくる。
「え〜…」
「え?帰る流れかと思ったけど?」
「結局あたしたちの休暇はこういう形で終わったじゃん?」
「ま、まぁ、しかたないよ…」
俺とマコトはドロイドバスターに変身したままの状態でマスコミや警察関係者が押し寄せる流れに逆行して会場を後にした。
一部マスコミが俺達にカメラ向けようとしたけど、ことごとくブレードで粉砕してあげたよ。肖像権の侵害だし。
…しかし、人質達が保護されているなかで数人が何か文句らしい事を言ってるのが聞こえた。
聞き覚えのある声だからすぐにわかったよ。
学生時代、ケイスケをイジメていたって豪語してた奴だ。
「すごい人間離れした人が居たんですよ!その人達がテロリストをやっつけてくれたらこんな事にはならなかったんだ!俺達はずっと人質のままで怖い思いをして、」
とか聞こえたのだ。
俺達の事じゃん?
なんかムカつくじゃん?
せっかく助けてあげたのにさ。
「おまわりさーん、あの人でーす」
俺は思わず言ってしまったよ。
カメラも一斉に「あの人」つまり、元イジメっ子に向いた。
警察も俺の声に反応して足を止める。
「その人、テロリストの仲間かもしれない…いや、他にもテロリストが人質のフリしてるかもしれないから気をつけて!」
それを聞いて警官達は一斉に人質達を連行していった。