92 突入せよ浅間山ホテル 9

毎度の事になるけども、ビール2本の後、熱燗、冷酒、焼酎などなどアルコールを楽しみ料理を楽しんだ俺は途中から記憶がない。
なのでここからはマコトが後で俺に教えてくれた「酔った俺が何をしたか」の記録である。
ただ、マコトもかなり酔っていたので記憶は定かではない。マコトが言ってる事が正しいとはちょっと思えないのだ。まさか俺があんな…。まぁそれは置いといて。
まず酔った俺は一升瓶を片手に同窓会メンバーが座るテーブルへと千鳥足で歩いて行き、
「バチが当たったんだよぉぉぉ〜ばぁぁーか」
と真っ赤な顔で同窓会メンバーに言ったらしい。
誰に言ったか?それはケイスケをイジメていたと自爆しやがったあの男である。そいつの肩をバンバン叩きながら、
「ケイスケをイジメてたバチが当たったんだよぉぉ?」
と言った。
「…そんなの、遠い昔の話じゃないか」
とか言い出すので「聞きましたァ?ねぇ、聞きましたァ?」とかテロリスト野郎に向かって俺が言う。
「いや、まぁ、聞こえたけど」
とか答えるテロリスト。
「この人、昔の事だからイジメは帳消しだとか思ってるらしいよ?そんな人間の屑は死んでもいいよねー。うんうん、ほら、殺しちゃっていいよ、この人」とテロ野郎の持ってる銃口をイジメっ子君に向けるように持ってきて俺が言う。
「やめッ、危ない!危ないって!」
それを止めるイジメっ子及びその他クラスメート、そしてテロリスト野郎。しかもその後俺はアサルトライフルを取り上げて、
「ケイスケ先生の敵だー死ねー!」
とか言って引き金を引いてたらしい。
「うわああああ!!!危ない!危ないからやめろって!!」
「あれぇ…?これ安全装置がかかってるじゃん。外さなきゃ…」
…。
(カチリ…)
そこで俺がアサルトライフルをテーブル席に向けて狙う、イジメっ子野郎に向ける、ケイスケの元クラスメートに向ける、テロリストに向ける、みんなワーッとか言いながら頭を抑えたり胸を抑えたりしたらしいのだ。まぁ一発も撃ってないけどね。
それから何を思ったか俺はテロリスト野郎の覆面を無理に剥ぎ取って、服も剥ぎとり、それらを着た。
元々男用の服だからもちろん身体にはブカブカ。子供が大人の服を無理やり着たような格好になった。
「あたしがテロリストとは何たるか。君達に教えてあげよう」
とか言っていたらしい。
それからテロリストの仲間らしき奴が持っていた拡声器を奪い取って「うへ…うへぇ…」と不気味な笑い声を上げながら、フラフラと千鳥足で窓まで歩いて行くと、警察に銃を向ける俺。一斉にサーチライトが俺のほうを照らす。
天皇陛下ばんざーーーーーい!!」
と拡声器で叫ぶ俺。
「」
会場は無反応。警察もマスコミも無反応。
しばらくしてから警察は拡声器で、
「大人しくしろ!!要求は既に飲んだ!!!お前たちの仲間の釈放手続きはいま実行中だ!!これ以上罪を重ねるな!」
とか言い出す。
「え〜…本日はお日柄もよろしく…」
と俺が言うと、
「」
シーンとしている警察及びマスコミ。
何か盛り上げなければならないな…。
「えー…こんな夜遅くまで、お疲れ様です。警察の皆様と、マスコミの皆様、それから…町内会の皆様。え〜…近年の世界情勢についてはですね、中国の内戦やら、不安定なインドシア情勢や、日本とロシアの関係などですね、まぁ、去年は色々とありましたけども、今年も、頑張っていきまっしょい、という事ですね、まぁその、アレです、皆さんも、健康に気をつけてですね、まだまだ寒さも消えませんからね、風邪などを引かないように、しっかりと睡眠をとってですね、え〜、明日も元気に朝から働いて、美味しいご飯を食べて美味しいお酒を飲みましょう、というわけですね、そろそろこの辺でお開きに、最後は一本締めで…って宴会かよ、宴会のノリかよっていう」
「」
アレ?アレレェ?
そこツッコムところじゃないのォ?
なんでシーンってしちゃうかなぁ?
まぁいいか…。
とでも思っていたのだろうか。
俺は、
「えーっと…皆さんに悲しいお知らせがあります」
ざわざわとする面々。
特にマスコミは一斉にカメラを向けて覆面姿の俺をとらえる。
「人質のなかに…」
ざわざわとする面々。
「イジメっ子がいます」
顔を見合わせるマスコミ一同。
「イジメは許せない行為です。イジメにあった子供はそれから捻くれた大人になってしまうのです」
「」
「石見ケイスケという人は捻くれてロリコンになってしまいました」
同窓会会場のほうからクスクスと笑い声が聞こえる。
俺は怒りで振り返って「笑うな屑ども!!」と吠える。
「この中にイジメにあっている現場を見かけたら、イジメ相談室へ電話してください。必ず何かの助けになってくれるでしょう」
よくわからないけど、少なくともマスコミだけは真剣な顔で俺の演説を聞いている。警察は首を傾げてる連中が多いけど。
俺が演説を終えると、
「要求はそれか?」
と警察から同じく拡声器で応答がある。
「ん?要求っていうか、その、アレだよ、夢とか希望とか」
酔っ払いな俺はそんな適当な事を言っていたらしい。
すると、多分、その時、俺の目にはテントで豚汁を食べてる警察の連中が目に入ったのだろう。テロリストが演説してる時に何たる失礼な奴だ、と俺が憤慨したのだろうか、その警察官が持ってる豚汁に狙いを定めてアサルトライフルを発射。
見事の豚汁をその警察官の前で破裂させた。
現場は張り詰めた空気になる。
「人の話を聞く時に豚汁を食べるとは何事か!!」
と拡声器で怒鳴る俺。
警察は一斉にシールドで防御して銃弾から自分達を守ろうとしている。そこに俺は拡声器で、
「その豚汁を持ってこい!」
などと言う。
それから「その豚汁を持ってきたら入っている豚肉の数の分だけ、人質を釈放する」などと言った断面で俺はテロリスト達に取り押さえられて自分が座っていたテーブルまで引き摺られていった。
…らしい。