91 ガード・ユア・アヌス 5

4名のドロイドバスターは長い廊下を背中をぴったりと壁にくっつけた状態で移動していた。何故なら、ケツの穴を…いや、男としてのプライドを守りたいからだ。
俺の作戦はこうだ。
周囲が広いからにぃぁは自由に移動できる。
弾丸並のスピードで。
もしこれが例えばトイレのような個室だとしよう。そこではにぃぁは自由には移動できないし、無理にでも押し入って来ようなら戦闘になるし、にぃぁも変身後のドロイドバスター相手には簡単に採取(ウンコを)出来ないだろう。
しかしトイレのような個室ならにぃぁと1on1の戦いになってしまうし、暴れたらいずれにせよトイレをぶっ壊して外に出てしまう。
ある程度の広さが必要で俺達が互いに協力しあって、この危機をやり過ごすことが出来る場所…。もしバレンタインデーを過ぎたらにぃぁはチョコを採取する事はしなくなるだろう。だからそれまでの間守り切ればいい。そういう意味で都合のいい場所は、あそこだ。
俺は体育倉庫を選んだ。
俺達は体育倉庫へと移動し、誰にも見られていない中でドロイドバスターへと変身。そこでにぃぁが入ってこれないように防衛する。
なかなかナイスアイデアじゃないか。
…ん?
「Hey…サッキカラ、何カ見エマセンカァ?」
ちらちらと周囲を警戒するコーネリア。
確かに…高速に動く何かが俺達の周りを移動している、ような気がする。以前にもこんな経験をしたことがあるし、実際、ここで高感度カメラで撮影したのなら弾丸並のスピードで動く猫耳が生えた少女が映っている事だろう。間違いなくにぃぁだ。
「絶対に壁から背中を放さないでね。死ぬから」
「(生唾を飲み込む音)」
メイリンはハァハァと息を乱しながら、
「キミカ、どういう感覚か?お尻の穴に…フヒヒ」
「どういう感覚って言われても…」
などと話をしているとマコトが突然、
「許せないよ!絶対に許せない!」
とか言い出す。
「どうしたんだよ、いきなり」
「キミカちゃんの後ろの処女を奪うなんて!!」
おいおいおい、なんですかその、後ろの処女を奪うのは俺なんだ!って感じの拳の握り方は。あわよくば前の処女を奪いたいとかそんな気合をちらつかせてませんか、おーい。
まぁ、そういうわけで俺達はマヌケにもそのまま背中をぴったりと壁に沿いながら、なんとか体育倉庫の手前のテニスコート付近へとやってきた。しかし、しかしだ。ここで俺はこの計画には大きな穴がある事を知ってしまった。
大きな穴っていうのは別にお尻の穴の事じゃない。
俺達の前には体育倉庫に向かうための体育館の壁があった。
そこで背中を合わせたまま、また移動すればいいのだが…その体育館の壁に向かうまでの間、10メートル程度、壁が無いのである。
「ヘェェェェーーーィイ…」
コーネリアが情けない声を出している。
「どうする?」
少し期待の色を目の中に持たせたメイリンが顔を赤らめながら俺に聞いてくる。お前はお尻の穴を掘られないのか、掘られたくないのかどっちなんだ?掘られたいのか、あぁ、そう…。
「キミカちゃん…ボクが…ボクが掘られている間に!!」
と勇気を振り絞ってマコトが前に出ようとする…また自分を犠牲にしようとして!!ダメだよ!俺はその袖を掴んで引き止めた。
「待って、今、名案が閃いた」
「ほ、ほんと?」
「え〜…っと…」
とりあえず引き止めたものの、どうやってやれば…。
「え〜…っと…」
「?」
「え〜…っと…」
「まさか、キミカちゃん、ボクを引き止めるために…!!大丈夫だよ…ボクのことなら大丈夫。心配しないで。ボク、掘られても、キミカちゃんの記憶の中ではずっと生きているから…」
その死ぬみたいな展開やめてよ、まぁある意味死ぬけど。
「え〜………っと…あ、そうか」
「?」
「壁が無いのなら壁を作ればいいんだよ」
と俺が言うが、みんな、具体的にはどういう事をするのかわからずに頭の上に「?」マークが出ている状態。
「では、せっかくなので格好をつけまして…」
と俺は手で印を結んで、
「口寄せの術!」
ふふふ、練習したかいがあった。俺はタチコマを地中に召喚(テレポート)させたのだ。地面が盛り上がって砂と泥を撒き散らしながら格好良くタチコマの巨体が俺達の前に現れて、マコトやコーネリアが半場パニックになってその状況を見ている。
「何ナンデスカァァァ?!」
とコーネリアがオーバーアクションでびっくりする。
「この学校、テニスコートに、戦車埋まってる」
と勘違いするメイリン
「す…凄い…ボクの死体を運んだ時の応用?」
「まぁ、そんな感じ」
そんななか、アニメ声で叫ぶのはタチコマ本人だ。
「うわ、ちょっ、なんてところに召喚するんだよォォ!!」
タチコマの第一声はそれだった。
「な、なんだよ…」
「なんだよじゃないよ!!綺麗なボディが泥と砂だらけじゃないかァァ!!!またクリーニングしなきゃいけないよォォ!」
いやいや、戦車が泥とか砂を気にするなよ…。
タチコマ、壁になって」
「か、壁ェ?!」
タチコマを召喚しただけで軽く10メートルの壁は出来た。
そのまま座らせて、俺達はタチコマの足を壁にして移動した。
「え、えっと、何をすれば」
「OK、壁は終了」
「えぇぇぇぇぇ?!壁だけェ?!」
「では、待機!」
俺は驚いているタチコマをそのままキミカの部屋(異次元空間)へと吸い込んだ。そんな様子を見ていたメイリンとコーネリア、俺にそのまま疑問をぶつけてくる。
「ヘェェーイィ…キミカ、アノ戦車、ドコヘ消エタノデスカァ?」
とコーネリア。
「どこって、キミカの異次元空間…かな」
「What…The…」
メイリンは、
「異次元空間とは?もう一つ世界があるのか?」
「宇宙があるのさ…」
「宇宙!」
「そうそう」
「そこに住んでもいいのか?」
そういえばドロイドバスターは吸い込んでも大丈夫なんだっけ…でも、宇宙だから何もないんだよね。あんまり意味がないじゃん。
「住める環境じゃ…ないかも…」
残念そうに俯くメイリン
なんだかんだ言いながらも俺達は体育倉庫へと到着したのだった。